#025「トルネード」【竹美】
#025「トルネード」【竹美】
「換気も済んだし、他に用がないなら帰れ」
永井は立ち上がると窓辺へ数歩進み、窓を閉めて施錠した。
「そうだね。お邪魔虫は退散しよう」
長一はカップに残った冷めたコーヒーを飲み干すと、勢い良く立ち上がった。
「それじゃあ、私も、おいとまを」
竹美は立ち上がろうとしたが、長一にそれを制される。
「君は、まだ居なよ。僕ばっかり喋って、次郎と話せてないだろう」
「勝手に決めるな、兄貴」
「弟なら、兄のいうことに口を挟まず、黙って従いなさい」
睨み合う二人に、竹美が声を掛ける。
「永井先輩も嫌がってますから」
竹美は再び席を立とうとしたが、長一に再度それを制される。
「いいから、いいから。次郎は、これで結構、淋しがり屋なんだ。僕の代わりに、そばに居てあげてよ。それじゃあ、あとは若い二人でお楽しみくださいな。たまには本家に顔を出しなよ、次郎」
長一の発言に、永井は、ぶっきら棒に返事をする。
「気が向いたらな」
「二人で来てくれるなら大歓迎だよ」
「おい」
「さて。鉄拳で、より不細工にされる前に引き揚げよう。またね」
「二度と来るな」
「そっちから来るまで、こっちからご機嫌伺いを続けるよ。何せ僕には、次郎が野垂れ死んでないか確かめる義務があるからね」
「そんな義務は無い。三つ数えるうちに失せろ。一つ」
「くわばら、くわばら。あとは頼んだよ、竹美ちゃん。ごきげんよう」
永井が指を立てて数え始めると、長一は急いで退散した。
「はぁ、どっと疲れた。エネルギーを根こそぎ吸いとられた気分だ」
永井は、長一が家を出たのを確かめると、椅子にどっかと座った。
他人の元気を吸い取る、サイクロン式掃除機みたいな人だったものね。
「台風か竜巻みたいなかたでしたね。あの。私は、ここにいて良いんでしょうか」
「飲み物だけでも、飲んでいけ。喉が乾いたから、もう一度コーヒーを淹れる」
永井はテーブルにある三つのカップを持つと、キッチンへ運んでいった。
「それじゃあ、ご相伴します。飲んだら、すぐ帰りますから」
「急ぎでないなら、ゆっくりしていけ。この際だから、お互いの不満をぶつけ合ってすっきりさせよう。このあいだのことで、俺から謝りたいこともある」
「……はい」
珍しく瞳に色が宿ってる。きっと、お兄さんの影響ね。
それから二人は、再びコーヒーが冷めるまで話し合った。




