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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第三部
225/232

過去編④「思い出」【万里】

過去編④「思い出」【万里】


「かーごめ、かごめ。かーごのなーかの、とりは。いついつ、でやる。よあけの、ばんに。つーるとかーめが、すーべった。うしろのしょうめん」

「だーぁれ」

 万里がベビーベッドの側に立ち、小梅を抱きかかえながら子守唄を歌って寝かしつけていると、そこへ足音を忍ばせて博が背後から近寄り、両手で万里の目を覆う。突然の出来事に一瞬、戸惑いを見せながらも、すぐに口元を緩めて言う。

「聞く人を安心させる優しいテノールボイスと、この柔らかくて大きな手は、間違いなく博さんね」

「フフッ、正解」

 博は両手を万里の顔から退けると、小梅の顔を覗きこみながら言う。

「まだ寝てないようだね。――駄目だぞ、小梅。夜はグッスリ眠らないと、いつまでも身体が小さいままだ」

「言葉で説得したって、理解できないわよ」

「そうかな。言葉で返事をできないだけで、気持ちは伝わってるかもしれないよ。――パパの言うこと、わかるよな。ママが困ってるから、夜は早くおねんねしような、小梅」

 まぁ、立派な親馬鹿だこと。

 博が小梅に向かって話しかけていると、小梅は目を閉じ、寝息をたて始める。

「あら、本当に寝ちゃった」

「ほら、ごらん。こんな小さい子でも、真摯に接すれば、思いが伝わるんだよ」

 紳士違いな気がするけど。

 万里は、そっと小梅をベッドに寝かせると、肩口まで毛布を掛け、ポンポンと軽く胸の上を叩く。そして、博のほうを向いて言う。

「竹美は、もう寝たのかしら」

 博は、小梅から万里に視線を移動させて答える。

「いいや、まだだよ。この本を読み終わったら寝るって言ってたから、少し時間を置いてから、また様子を見に行くよ」

 竹美は、本が好きなのね。でも、ほどほどにさせなくちゃ。

「フゥン。松子も、まだダイニングに居るのかしら」

「あぁ、居るよ。明日の予習をしてたから、身体を冷やさないように、ホットココアを作ってあげた」

 ちゃんとミルクパンで温めて作るのよね、博さんは。

「そう。お勉強は結構だけど、あんまり頑張り過ぎないように、あとで私から言っておくわ」

「そうだね。向学心旺盛なのは感心だけど、無理して風邪を引いたら大変だ」

 そう言うと博は、俯き加減で、ふと寂しげな表情をする。

「今の気持ち、当ててみるわ。うーん。『一人くらいは男の子が欲しかった』かしら」

「正解だよ。欲張ったらキリがないけど、三人とも女の子だとは思わなかった」

 そうね。私も、一人くらいは男の子を産んであげたかったわ。

  *

「ただいま、ママ」

「おかえり、小梅。嬉しそうね。何か良いことがあったの」

「ウフフ。あとでゆっくり話してあげる。先に、荷物だけ置いてくるから」

 そう言うと、小梅はドタドタと音を立てながら勢いよく階段を駆け上っていく。

 雌ばかりの籠の中の鳥は、あと一羽ね。


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