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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第三部
220/232

#209「コネクション」【小梅】

#209「コネクション」【小梅】


 ノードとリンク。どこで誰が誰と繋がってるかは、なかなか、わからないものである。インターネット上だけではなく、現実世界でも。……これだけでは、何が言いたいのかサッパリだろうから、時系列に何が起こったかお伝えしましょう。

 はじまりは、今日の朝。後学のため、と衣装の参考のために、松姉の着付けを見学することにしていた私は、鞄にスケッチ用のメモと鉛筆数本、それから、退屈しのぎ用にオジョタンの一巻を入れて待機した。

 次に、今日の昼前。予想以上の大豪邸に圧倒されながらも、着せ替え人形と化した松姉のスケッチに取り掛かる。数十分後、サラサラッと数枚のラフ画が完成する。ここまでは、おおむね順調。予定通り。

 で、問題は、ここから。松姉の着付けが終わったあと、その担当者である奥さまと二人っきりになったときがあり、そこで、以下のように声を掛けられたのである。

「あなた、ずいぶん素描の手が早いけど、普段、漫画か何か描いてるんじゃなくて」

 太ゴシック体でギクッとでも描きたくなるくらい、衝撃的だったわ。隠しても仕方ないと思って二次創作のことを白状したら、更に斜め上の答えが返ってきたの。

「実は、あんまり大きな声では言えないんだけど。私も、少女マンガを描いてるのよ。『お嬢さまは探偵ですの』ってタイトルなんだけど、知ってるかしら」

 いやぁ、一瞬、耳がおかしくなったかと思ったわ。訊き直しても、同じ答えが返ってくるものだから、ようやく理解した次第。ダイジェストは、ここまで。続きを、どうぞ。

「それじゃあ、フェニックスなな先生に、間違いないんですね」

「そうよ。私は、旧姓を鳳凰堂(ほうおうどう)といったの。驚かせちゃったわね、ごめんなさい。――はい、どうぞ」

 奈々は、サインペンに蓋をしながら、小梅にオジョタンの一巻を手渡す。

「ありがとうございます。大切にします」

 やったぁ。直筆サインだ。家宝にしよう。祭壇に祀ろう。

 小梅は、両手でマンガを受け取り、鞄の中に仕舞う。

「私も、愛読者に直接会えて嬉しいわ。――あっ、そうだ。ねぇ、小梅ちゃん。あなた今、高校生よね」

 奈々が片手を軽く握り、それを反対の手の平にポンと打ちながら、何かを思い出したかのように言うと、小梅は、奈々の出方を窺いながら、おずおずと答える。

「はい、そうです。この春に、一年生になりました」

「あのね。ちょっと虫の良い話で、嫌なら断ってくれても良いんだけど、あなた、アシスタントをしてくれる気はないかしら」

「えっ」

 アシスタントというのは、もちろん、漫画家としてよね。

 突然の申し出に、小梅が言葉を失って口をパクパクさせながら狼狽していると、奈々が微笑みながら言う。

「単行本が出てから、急に忙しくなってきてね。そろそろ、誰かに手伝ってもらわなきゃ敵わないと思ってたところなのよ。お給料としては、そんなにたくさんあげられないけど、お小遣い稼ぎとしては、割りが良い額を出してあげると保証するわ。どうかしら」

「あのっ。私なんかで、良いんでしょうか」

「良くないなら、端から提案しないわ。それじゃあ、良いのね」

 奈々が駄目押しすると、小梅は大きく頷く。それを見た奈々は、満足気にニヤリとしながら言う。

「それじゃあ、式が一段落したら、私についてらっしゃいね。アトリエを見学させてあげるわ」

「はい。ありがとうございます」

 まさか、こんなところでアルバイト先が見付かるとは。


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