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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第三部
216/232

#205「五月雨」【小梅】

#205「五月雨」【小梅】


 休みボケ、とでも言おうか。超大型連休が終わった五月七日、火曜日。教室には、新しい高校生活に対するワクワクとした期待感が薄れ、慣れによるダラケが蔓延っている。中には、学校に来ないクラスメイトも居るようで、日によってポツンポツンと、まるで虫食いのように空席が発生する。そんな五月病を象徴するかのように、今日の空模様は、何ともスッキリしない薄曇り。

「一年生枠は、副会長、会計次長、書記次長の三つで、このうち、副会長は立候補があるんだが、次長二つは、まだ誰も名乗り出ていなくてな。」

 以前、四組のダブりさんを追い駆けてた赤ジャージ先生、通称アントニオは、生徒会の担当教員でもあり、こうして執行部役員に相応しそうな人間を呼び出しては、打診しているのだそう。ちなみに、この先生の担当教科は英語である。プリンス然り、アントニオ然り、日本の英語教育界は、こぞって個性派の教員を採用しているようだ。

 アントニオが二人に期待を込めた視線を送ると、山下と小梅は返事に窮し、互いに顔を見合わせる。

「まぁ、いますぐ、ここで決断してもらわなくても良い。丸一日、とっくり考えて、明日のこの時間に返事を聞かせてくれ。そろそろ立候補期間が終了するから、引き受けてくれると助かるけどな。さて。話は以上だが、何か質問はあるか」

「いいえ。俺は、ありません」

「私も、特には」

「そうか。引き止めて悪かったな。気を付けて帰りなさい」 

 山下と小梅の二人は、揃って「失礼します」とだけ言い、職員室をあとにする。

  *

「断る、という選択肢は無さそうだよな」

「そうよね。言外に、有無を言わせないオーラが出てたものね」

 バスの後部座席に揺られながら、二人は浮かない顔をして話し合っている。窓ガラスには、点々と雨粒が降り注いでいる。

「ちなみに、どっちかと言えば、どっちが良いと思ってるんだ、鶴岡は」

 正直、どちらでも良いんだけど、山下くんのほうが字が綺麗だから。

「うーん。会計次長かな」

 小梅が顎の先に指を当てながら言うと、山下は意外そうな顔をしながら言う。

「あぁ、そう。ふぅん。それじゃあ、俺は書記次長にしようかな」

 まぁ、一年生のうちは大したことを任されないだろうし、いつも仕事がある訳でも無いらしいし、それに。

「えぇ。私も、そのほうが向いてると思うわ」

 小梅が好意的に山下に同意すると、山下は頬を指で引っ掻きながら照れくさそうに言う。

「そうかな。へへっ。これで放課後を鶴岡と過ごす時間が増えると思えば、俺としては悪くないかな」

 まぁ。私と同じことを考えてたんだ。道理で、どこか満更でもない態度をしてると思った。

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