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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第一部
20/232

#019「三人組」【小梅】

#019「腐れ縁」【小梅】


「ゆるくないゆるキャラって、どう思う、小梅ちゃん」

「カテゴリーとしての括りがゆるいから、別に良いんじゃない」

 美術室で原稿用紙にスクリーントーンを張りながら、英里と小梅は他愛もないお喋りに興じていた。

「キャラクター名は、ゆるいと思うわよ、英里ちゃん」

「はつかチュー太郎どぶ助だもんね」

 私たちは、数年前にオープンしたレジャー施設、印旛沼ネズミ王国について話している。侍風のゆるくないゆるキャラがマスコットで、江戸から時空跳躍し、現代の軟派なリア充を切り捨て御免にするという、ブラックユーモアたっぷりの仕上がりになっているのだけど、これが逆に面白いと子供人気から火が付いて、最近ではテレビで引っ張りだこになっている。少し前にブレイクした、喋る梨の妖精と同じような感じ。

「ヒロインの髪って、このトーンだっけ。もう少し明るかったっけ」

 複数のスクリーントーンを並べて見比べる英里に、小梅はヘラで固定する手を止め、そのうちの一枚を指差して示す。

「ヒロインの髪は、こっちのトーンよ」

「あっ、そっちか。ありがとう」

 英里は、小梅が指差したスクリーントーンを原稿に当てると、デザインナイフで切り出しにかかった。

「絶対下校、十分前になりました。校内に残っている生徒は、速やかに下校の準備をしましょう」

 スピーカーから、ノイズ交じりに放送部の下校案内放送が流れてきた。

「もう、そんな時間か」

「窓を閉めて、早く帰らないと」

 二人は作業の手を止め、片付けに取り掛かった。

  *

「絶対下校、三分前になりました。校内に残っている生徒は、速やかに下校しましょう」

 スピーカーからは、ノイズ交じりの放送が続けられていた。

 英里と小梅が正門を出たとき、後ろから吉川が二人に声を掛けた。

「よっ。一緒に帰ろうぜ」

「あっ、吉川くん」

「出たな、カリントウ星人め。黒糖星に帰れ」

 二人のあいだに割り込もうとする吉川と、小梅を引き寄せて吉川を睨む英里。

「そこまで黒くないだろう。そういう大福星人こそ、羽二重星に帰れよ」

 毎日放課後に走り回ってこんがり日焼けした吉川くんと、ジャージやブラウスに日焼け止めの二段構えで色白を守ってる英里ちゃんは、見事なコントラストのツートンカラー。ドットの濃さが違う。

「そうそう、この身体は求肥と粒餡で出来てるのって、そんなわけないじゃない」

 吉川の肩を拳で軽くパンチする英里。

「ナイス、ノリツッコミ」

 薬局コンビによる息の合った掛け合い漫才は、ボケとツッコミがリバーシブル。さすが、保育園からの幼馴染。年季が違うわ。

 そんな仲の良い三人の様子を、少し離れて観察する人物がいるのだが、それについては別の話で。

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