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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第二部
129/232

#122「帰ろうか」【万里】

#122「帰ろうか」【万里】


 家に帰るまでが遠足だとは、よく言ったものだわ。

「すみません。俺の、監督不行届きです」

 万里と観音院に向け、深々と頭を下げる坂口。万里のそばには寿が、観音院のそばには安奈がいる。

 三十人以上もいるのに、常に全員の行動を監視することなんか出来ないわ。まして、全員の体調をリアルタイムで把握することをや。

「頭を上げてください。無傷で見つかったんですから、良かったじゃありませんか」

 万里が坂口に優しく声を掛けると、観音院もそれに加勢する。

「そうですよ。――あっ、目黒。安奈の無事を確認したので、捜索中止してください。どうぞ。……そう、寿くんも一緒だよ。だから、赤城にも伝えるように。以上」

 電話の向こうのお相手は、目黒さんか。今、どの見当を捜してるのかしら。

 観音院は、袂に携帯電話をしまうと、安奈に手を差し出し、一声掛ける。

「もう少ししたら、目黒が到着するよ」 

 安奈は観音院の手を握り、そっぽを向いたまま言う。

「ごめんなさい、お父さん。勝手な行動をして坂口先生にご迷惑を掛けてしまったし、レッスンだって休んでしまったわ」

 観音院は一旦眉根を寄せ、やがて笑顔に戻って言う。

「たしかに、今日の安奈の行動は褒められたものじゃないね。だけど、ちゃんと自分が悪かった反省してるみたいだし、ちゃんと謝ることもできたから、それで帳消しだよ。それより、怖くなかったかい」

 かぶりを振り、観音院のほうを向く安奈。

「寿くんが一緒だったから、平気だった」

「そっか。――ありがとう、寿くん」

 観音院が寿に声を掛けると、寿は恐縮して万里の後ろに隠れてしまう。

 寿くんったら、照れ屋さんなんだから。

「あらあら。褒められて、気恥ずかしいみたいね」

「ふふっ。そのようですね」

 万里と観音院が微笑み合っていると、校内放送が流れる。

「坂口先生、坂口先生。至急、職員室までお戻りください」

「草津先生だ。――それでは、俺は、この辺で失礼します」 

 坂口は会釈をすると、その場から速やかに立ち去った。

「お忙しそうですね、坂口先生」

「いろいろあるんでしょうね。ところで、これから寿くんは、どちらの家に」

「私の家です。今日は、誠もサッちゃんも遅いので。琢くんも、小梅と留守番してます」 

「それなら、一度で済むことですし、お送りしますよ」

「いえ、そんな。観音院さんも安奈ちゃんも、お暇では無いでしょう」

「遠慮なさらずに。――良いよね、安奈」

「もちろんよ。――今日はくたびれちゃったものね、寿くん」

 安奈が万里の後ろを覗き込むと、寿が照れくさそうに答える。

「あぁ、うん。いっぱい歩いたからね」

「それじゃあ、ご好意に甘えて。いつも、すみません」

「お互いさまでしょう。――あっ、あれは目黒の車かな」

 遠くのほうから、黒塗りの乗用車が姿を現す。

 暮れなずむ空と相まって、何だかドラマか映画のワンシーンみたいに見えるわね。とても、これが日常の一コマだとは思えないわ。


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