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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第二部
123/232

#116「愉快な給食」【小梅】

#116「愉快な給食」【小梅】


 お姉ちゃんたちは、たまには給食を食べたいっていうんだけれど、毎日決まって食べさせられる身としては、たまにはお弁当が良いなと思ってしまう。

「教室に戻ってしばらく、制汗スプレーが混ざったニオイが鼻について仕方なかった」

 パンを袋の口から少し出し、一口分を捻り千切って口に運ぶ山下。

「あっ、そっか。いままで、女子が着替えた教室に入る機会が無かったものね」

 箸で木耳と筍を掴み、忌々しげに一睨みしてから、素早く口に入れる英里。

「山下だって、制汗シートやヘアワックスを使ってるくせに」

 袋を両サイドから勢い良く叩いて口を開け、中のパンを取り出して噛り付く吉川。 

 何にでもコッペパンと牛乳を合わせるのは、ミスマッチでは無いかしら。せめてご飯と麦茶にでもすれば良いのに。

「今日の献立は、コッペパン、牛乳、鯖の味噌煮、八宝菜です。みんな残さずに食べましょう」

 教室のスピーカーから、放送部長大橋の声が流れている。毎度お馴染みの給食紹介を聞き流しつつ、小梅、英里、吉川、山下の四人は机を田の字に寄せ合い、歓談している。

「四時間目の体育は、男子も体力測定だったのよね。女子は上体起こしとシャトルランだったんだけど、男子は」

 英里が、向かい側に座っている男子二人に向かって言うと、山下が淡々と答える。

「五十メートル走と、ハンドボール投げと、立ち幅跳び。全部、グラウンドだ」

 あぁ。それで、腕や脚が砂まみれの男子が多かったのね。終わったあと、砂場でふざけてそうだ。

 一口大にほぐした魚を口に運びながら、小梅は一人で納得する。

「五十メートル走と立ち幅跳びは、一、二組でトップだったぜ」

「へぇ。凄いね、吉川くん」

 吉川が自慢げに鼻を鳴らして言い、小梅は素直に称えると、英里と冷静に批判し、山下は英里に補足する。

「腐っても陸上部だもの」

「とても練習熱心だとは言えないけどな。あと、五十メートル走は追い風参考だから」

 そういえば、今日の午前中は風が強かったわね。

「何だよ、二人とも。俺に対して、ひどく向かい風を吹くじゃないか」 

 英里ちゃんがツンケンしてるのは通常運行だけど、山下くんが皮肉屋なのはいつも通りなのかしら。

「あとは、握力と長座体前屈と反復横とびだな」

 紙パックにストローを差す山下。

「握力計を壊すなよ、松本」

 ウズラ卵を箸で追いかけ、苛立たしげに突き刺す吉川。

「そんな馬鹿力からじゃないわよ」

 パンを袋の口から少し出し、親指大に千切る英里。

「そうだっけ。片手で林檎を潰せるとか何とか。あっ、これはゴリラの話だった」

「んぐっ。笑かすな、吉川。気管に入ったら、どうする」

 とぼけた調子で話す吉川の発言が、牛乳を飲んでいた山下の笑いのつぼに入り、堪え切れなかった山下はゼエゼエと息をする。

 天然爆弾炸裂ね。大丈夫かしら、山下くん。


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