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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第二部
120/232

#113「集結」【松子】

#113「集結」【松子】


 玄関先に出ると、お母さんが男の子を連れていた。今度は二人だ。倍率ドーン。

「寿くん、と、その子は」

「甥っ子、パートツー」

 上機嫌でブイサインをする万里に対し、松子は額に手を当て、うんざりといった調子で話す。

「サイコロトークみたいに言わないで。今日は冗談をハイハイと受け流せるほど、機嫌がよくないのよ」

 ……あれ。嘘を吐いてる割には、目線と小鼻に不自然な動きが無いわね。強がりでないとすれば、ますますリアクションに困る。

「ご機嫌斜めは、真っ直ぐに。冗談でした、ウッソピョーンと言いたいところだけど、これは本当よ。ごあいさつ出来るかしら」

「さっき練習した、自己紹介だよ」

 寿が小声で囁いて助け舟を出すと、琢は松子に向かってハキハキと元気良く答える。

「かごめ幼稚園キリン組か、亀山琢です」

 また亀山家の人間か。でも、誰の子かしら。

 玄関先の賑やかさにつられて、松子の後ろから小梅が顔を出す。

「動物の名前ってことは、年中さんね。叔父さんの隠し子ってこと」

「違うのよ、小梅。この子はね」

「再婚相手の連れ子でしょう」

 そう言って小梅の後ろから、リクルートスーツを着た竹美が姿を現す。

「あら、竹美。就活、おつかれさま。でも、帰る家が違うんじゃないかしら」

 話がややこしくなってきたわね。竹美が問題を永井家で解決してくれれば、こうならなかったのに。

「今朝の新聞で分からないニュースがあったから、訊きにきたのよ。――知ってたの、竹美」

 万里に説明したあと、松子は竹美に向かって言った。竹美は、松子に短く返事をし、その場にしゃがんで琢に視線を合わせる。

「半月ほど前に、市役所で会ったのよ。――覚えてないかしら。ほら、ムスッとした背の高いお兄さんも一緒にいたんだけど」

 首を傾げる琢に対し、寿はまたアシストする。

「お父さんとお母さんが戻ってくるのを待ってるあいだ、ジュースをくれただろう」

「あっ、あの姉ちゃんか」

 琢は、曇っていた表情をパッと晴れやかに変えた。 

 フムフム。やっと全体像が見えてきたわ。

「こんちはー。シロイヌミズホの宅配便で-す」

「笑いを取ろうとするな。ほぼほぼ初対面なんだから、普通にしろって」

 万里の背後から、思春期特有の軽薄な声が聞こえてくる。万里が端によると、そこには、まったく同じ容姿の男が二人、図鑑を両手に抱えて立っていた。

 あぁ、そうだ。今日は、木下家の双子も来ることになってたんだった。ものの見事に同じタイミングで集まったものね。

「兄ちゃんは、忍者なのか」

 一平と成二を交互にまじまじと見つめながら、琢は疑問を呈した。

「あらまぁ。琢くんは、実際の双子を見たことが無かったのね」

「ふっふっふ、よくぞ見破ったな。これぞ木下流秘奥義その一、分身の術」

「調子に乗るな、一平」

 成二は、琢の疑問に便乗してふざける一平の後頭部に、手にしている荷物を叩きつけた。

「いってぇな。図鑑で殴るんじゃない、成二。これから渡すんだぞ、それ」

「両手が塞がってたもので。足を踏みつけたほうが良かったか」

 やれやれ。また、厄介なことになったものだわ。


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