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籠の中の鳥は  作者: 若松ユウ
第二部
104/232

#097「角を折る」【小梅】

#097「角を折る」【小梅】


「どこにも居ないと思って降参したら、馬具を入れてあった鞄に隠れてたのよ。いきなりモゾモゾと動き出したから、寿くんと一緒にビックリしちゃって」

「それは盲点だったわね」

 教室の中ほどまで夕日が差し込む放課後の美術室で、小梅と英里は、原稿用紙にペン入れをしながら歓談している。すると、そこへ吉川が数枚のプリント用紙を持って走りこんできた。

「号外、号外。名高きサッカー部エースの学年末考査だよー」

 そう言いながら、吉川は、手にしている用紙をテーブルに並べた。二人は、椅子から立ち上がって覗き込む。

 わぁ、本当に山下くんの答案だ。どれもこれも、ほぼ百点だし、おまけに字も綺麗ときている。天は二物を与えたか。

「やっと追いついたぞ、このテスト泥棒」

 吉川のあとに続いて、息を切らせながら山下が入ってきた。

  *

 山下くんが解答を回収したあと、私たち四人は机を囲み、私の横には英里ちゃん、前には吉川くん、そして斜向かいに山下くんが座る形でトークに花を咲かせている。

「全教科九十点以上なのに、何で落ち込んでたんだよ。てっきり、赤点でも取ったのかと思って、慰める気満々だったのに」

「吉川と違って、俺は満点を取るのが当たり前だとされてるからだ」

「そうよ、吉川くん。社会で一桁を取った誰かさんとは違うのよ」

「数学で平均点の壁を越えられない誰かさんには、言われたくないな」

 英里ちゃんは暗記が得意で、吉川くんは暗算が早い。ちなみに私は、全教科、平均より少し上。可も無く不可も無し。

「喧嘩するほどの仲良しか。夫婦漫才は他でやってくれ」

「誰が夫婦よ」「誰が夫婦だ」

 山下の発言に、英里と吉川は同時にツッコミを入れた。

 息、ピッタリじゃない。さすがは、幼馴染み。

「それにしても。吉川くんは、物覚えが悪そうには見えないんだけど、どうして点数に結びつかないのかしら」

「そうそう。変なことは詳しいくせに、テスト範囲の内容はインプットされてないよな、吉川」

 小梅が山下のほうを向くと、視線を感じだ山下は、目線が合ってすぐに吉川へと逸らした。

「あいにくと、面白話の種にならない情報は、急速にデリートされる仕組みなんでな」

「本当。興味の無いことは、さっぱり覚えられないんだから」

 自慢げな顔で得々と語る吉川と、呆れた表情の英里。

 なるほど。つまらない知識は、長期記憶されないのね。単純なシステムだこと。

「わかりやすくて良いじゃない。ねっ、山下くん」

「ん、あぁ。そうだな、鶴岡。シンプルで良いな」

 小梅から話を振られ、山下は目線を泳がせながら、しどろもどろに答えた。

 どうしたのかしら、山下くん。私、変なことを言っちゃったかな。

 

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