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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ユニーク~SevenS.over~ 塔の中に広がる世界 教会と境界と

作者: 鈴瞳


平和な世界に突如現れた神々の遺産。


人々はこの塔に幾度となく挑み散っていく、そんな塔に7人の才能と力に恵まれた勇者達が挑むスペクタクルダンジョン巨編


どんな相手も魔法でプッコロ系紫煙の魔術師

花のように可憐で儚いでも綺麗な花には刺がある?刻印の幼魔使い

指一本で象も楽々但し象に限る象牙の闘王

腐ってるのは頭だけ?高潔の死術師

その剣士と合間見えれば剣ごと相手を打ち砕く砕剣の騎士

次元の壁も何のその二次元にだって入り浸り無元の冒険者

そして、異世界より召喚された無気力お気楽主人公


彼等が塔で見るものは栄光かそれとも絶望か……


奇跡の瞬間をその目に焼き付けろ!!





 「俺はこれが良い」


 店先に並んだ中で、一番綺麗なオレンジ色の透き通ったフルーツを指差す。すると、横からクレイが黙っていればキャーキャーと女子受けするであろうイケメン面を覗かせ「ケッ」と小さく俺に聞こえるように漏らした。



 「お前は解ってねえな、いいか?綺麗な見た目に騙されるなよ、そのプラタルメスは見た目以上の水分量を内包していてな食うのはもちろんのこと運ぶのにだって細心の注意が必要だ。例えば……」


 俺が指差したフルーツを指差しながらあーだこーだ講釈を垂れる。本当にこのクレイと言う男は黙っているということができないのだろうか?


 塔に入った俺達を待ち受けていたのは賑やかな町並みと行き交う様々な人々だった。


 どうやら、塔自体が観光地化されてるらしく、開拓のされ尽くした1階から249階迄は殆どが商業施設や飲食店、宿泊施設、挙げ句の果てには住居迄構えてしまっているほどの異様な有り様で、あまりのことに俺の顔は凄まじい形相をしていたらしい、顔を覗き込んできたクレイから「シュルブみたいな顔してどうした?」と一流のお笑い芸人が羨むほどの大爆笑をとってしまったぐらいの衝撃を受けてしまった。


 そして、今は塔の中201階にある市場で買い物をしている。聞くところによると、仲間の1人が近くの商業施設にいるらしい、そんなこんなで俺たちは仲間探し兼、食料品の買い出しをしていて今に至る訳なのだが……


 「そんななか俺がお薦めするのはコレだ!!」


 俺の送る冷ややかな眼差しを知ってか知らずか、はたまた全力でヴァッカなのかはさておき、クレイが店先に並んだフルーツの中から端の方に追いやられるようにしてポツンと置かれている茶褐色の干物を指でつまみ上げる。


 「おいおい、カエルの干物はフルーツじゃないぞ第一俺はそんなの食いたくねえからな!?」


 クレイの指先に摘ままれた。真夏のアスファルトの上でダンプに引かれペッタンコになって干からびたガマガエルを指差し全力で首を横に振る。


 「カエルってお前な……いいか、このフルーツは魔力補給用食品でフルエナって言う立派な名前があんだよ。しかも、コレ1個で最近話題の滋養強壮食スレナ約1000個分の……」


 今だにフルエナなる干しガエルを片手に熱弁されてるヴァッカのクレイはほっとくとして、俺は横で一連の様子を静観していたサラツヤことレザーの腕を掴んでさっさと気に入ったフルーツを幾つか見繕って会計をさせる。


 「って、なに勝手に買い物済ませて行こうとしてるんだお前ら!?」


 「兄ちゃん、フルエナ1個250Θね」


 「なっ!?」


 店のおっちゃんに捕まったクレイをそのままに俺とレザーはとっと次の階を目指して歩みを進めることにした。



******************************************************************************


 「しかし、もっとダンジョンっぽい空間かと思ったけど、なんかだだっ広い国立体育館みたいなとこなんだな……」


 塔の中に所狭しと並んだ家屋を見回しながら、先程購入したプラタルメスなる綺麗なフルーツを1つ袋から取り出しかぶり付く……


 「いただきまぁん!ぶふぁ!!」


 「おやおや、プラタルメスを丸かじりなんてお嬢様も豪気でいらっしゃる」


 歯がプニプニとした皮を突き破ると同時に溢れ出る果汁が、お風呂の湯を引っくり返したみたいに襲い掛かってきた。


 こんなテニスボールサイズのフルーツ1つがこんなにも豊富な水分量を内包しているとは……


 しかも、果汁は糖分も含んでいたらしい、お気に入りの服はもちろんのこと身体中がベタベタする。


 「おい、レザー身体中がベタベタで気持ち悪いんだけど」


 「まったくお嬢様も仕方がありませんねえ」


 こうなることがわかっていたかの様に口の端を軽く吊り上げるレザーの顔には苛立ちを覚えるが、まあ俺程度が噛みついたところで顔が形状を少しばかり変形させるだけだろうからやめておく、しかも俺の顔がだ。


 とにもかくにも人混みを掻き分け、レザーの案内で着いた先は綺麗な町並みとは打って変わって一軒の薄汚い……


 「なあ、レザー……」


 「ハイお嬢様なんでしょうか?」


 「ここは教会……だよな?」


 「はい、教会ですね」


 「俺は身体を綺麗にしたいと言ったんであって魂を浄めたいなどとは一言もいってはいないんだが?」


 装飾こそ施されているものの、どう見ても屋根のてっぺんにある十字の飾りが、ここは神に祈るための場だと言わんばかりの風体を醸し出している。


 レザーは俺の言葉を無視しつつ、不意に見せられれば大概の女性は愚か、もしかすると男ですらコロッといってしまうのではないかと思うほどの笑顔で、さあどうぞどうぞと言わんばかりに俺が教会へと入るのを促す。


 お前は騎士を辞めてホストにでもなれば良いんだと思ったが、この世界にそんなシステムがあるのかどうかも疑わしかったので本人には黙っておくことにする。


 「邪魔じゃ、どかんか!」


 不意にしゃがれた爺様ボイスで怒鳴られ、驚きのあまり全身ベトベトの身体でレザーに飛び付こうとするが俺のベトベトハグはお気に召さないのか華麗な身のこなしの前に呆気なく両の手が空を抱き締める形に成ってしまった。


 「コレは御老体、大変な失礼を……さあ、お先にお入りください」


 先程俺にしたのと変わりない動作で道を譲り、更に追撃を仕掛ける俺のベトベトハグから身を逃す。


 「レザーよ……なかなかやってくれるじゃないか」


 両手をニギニギと動かしながらベトベトハグのチャンスを伺う。


 「たく、塔の中にはロクな奴が居りゃせん」


 爺様が悪態をつきながら教会の扉の向こうへ消えていくのを見送りレザーが一礼する。


 その一瞬の隙を逃すことなく俺はレザーに最短動作で飛び付いたが、相も変わらぬ軽快な身のこなしで交わされ、勢い余った俺はベトベトの身体で砂埃を大量に巻きあげながら地面へと突っ伏す形で倒れた。


 「お嬢様、そんなところで遊んでないで早く参りますよ?」


 相変わらずの笑顔で俺に一瞥をくれると手も差し伸べずに教会へと一人入っていくレザーに殺意を覚えつつも、ベトベトの上に更にジャリジャリのコーティングを施され、より不快感をました俺は腹のソコがグツグツと煮え繰り返るのを感じながら後を追って教会の扉を潜った。



******************************************************************************



 「へえ、外はボロっちかったから入るの躊躇したけど、中は案外綺麗なもんだね」


 教会内は予想よりも綺麗にされていて礼拝堂と言うやつだろうか通路の奥には神様っぽいお爺さんの像かが立っていて、その前には説教を垂れるだろうスペースと石造りの腰掛けが放射状に配置されていた。


 良く見ると先程俺達を怒鳴り付けた爺様もその腰掛けに座り何やら祈りを捧げているようだ。


 「お嬢様こちらです」


 いつの間にそんなところに行ったのかレザーが礼拝堂奥にある扉を開け手招きしている。


 俺は先程の爺様の真剣に祈っている姿を気にしながらもレザーに導かれるままに奥へと進んだ。


 扉の奥は雑務室のようになっていてソコには一人の禿げ上がったオッサンが寛いでいた。


 「あん、お宅ら誰よ?ココは部外者立ち入り禁止よ?解ったらとっとと出てった出てった」


 テーブルに足をかけシッシッと追い払うように手を降る。


 するとレザーが笑顔のままオッサンに何かの入った小さな布袋を渡し、オッサンはその中身を確認するやニヤリと笑みを浮かべテーブルから足を下ろした。


 「いやぁ、先程は失礼しました。まさか寄付をくださる信心深い方だったとは、それで今回はどういったご用件で……」


 態度を急変させオッサンが仔犬のようにレザーへとすり寄っていく。


 このオッサンにこそ信心と言うやつが要るのではなかろうか?


 「いや、お嬢様に水編みとそれから服を洗濯したいのでその間に着る服を貸していただければ助かるのですが……」


 「へへ、お安いご用です。ささお嬢さんどうぞこちらへ」


 オッサンに案内され、これまた石造りの大きなプールのような場所へと連れてこられる。


 「お着替えはこちらに置いておきますのでそれでは……」


 出っ張った岩の台の上に白い布切れをおいてオッサンが出ていくのを確認してから服を脱ぎ一糸纏わぬ姿でプールに入り身体の汚れを落とす。


 「お嬢様、ドレスの方は私が洗って置きますのでご安心ください」


 今なんと!?


 振り返ると先程まで服がおいてあった場所には何一つ置いておらずレザーの姿も消えていた。


 「って言うか、女の子がお風呂に入ってるのに無反応って……普通有り得ないぞ?アレか?俺に女性としての魅力が無いと?女の子としては扱えないと?」


 裸を見られた恥ずかしさをイライラで上塗りしてレザーが出ていったであろう方向を睨み付ける。


 「そうだ、そもそもレザーが男色系なんだそうだそうにきまってる!!でないと俺を無視したのが納得できないいいいいいいぃぃぃぃぃ!!」


 プールに浸かり水を撒き散らしながら怒りに悶えに悶える。そしてふと、あることを思い出し顔が爆発しそうなほど熱くなるのを感じた。


 「えっ?ドレスを洗うって全部持っていったよね?」


 そろそろと服をおいてあった場所を見てみるが、ソコにはやはり無い、もしやと思いオッサンが置いていった着替えの中も見てみたがやはりソコにも無かった……


 「俺の下着をレザーが……」


 頭を過った時には身体が先に動いていた。



 身体を軽く拭き、頭を乾かすのもソコソコに着にくい白のダボついたドレスに袖を通し走ってレザーの姿を探す……


 「レザーのばかぁ!!」


 「どうかなさいましたかお嬢様?」


 浴場?の隣、ドアを出てすぐの場所にレザーはいた。


 急にどうかしたのですか?と言うようなキョトンとした表情で俺の顔を除き混んでくる。


 今日だけで一生分はイケメンに覗き込まれただろう俺の顔は多分真っ赤でレザーの目には滑稽に映ったことだろう。それでも言わなければいけないことがある、俺の尊厳と今後の関係の為に……


 「予想よりも早かったですね、もう水編みは終わりましたか? 私も、丁度洗濯が終わったところなので……ってどうしましたかお嬢様?お嬢様?」


 終わった……


 早い終わりだったが今までありがとう楽しかったよ俺の人生……


 ありがとう俺の青春……


 そして、短い間だったけど異世界楽しかったよ、良い思い出とか全然無いけど……


 まったくといっていいほどに……


 絶望に打ちひしがれ、ブツブツ漏らしていると肩を叩かれ声をかけられる。


 「お嬢様、何を絶望してるかは存じ上げませんが、そう悲観なさらずにお茶にでも致しませんか?」


 絶望してるのはレザー、お前のせいだ!!と大いに心の中で思ったがお茶に致すそうなので黙って致すことにした。



******************************************************************************



 「ところでさっきの爺様だけど、なんか引っ掛かるんだよね」


 用意されたお茶とペグネコンタなる赤いフルーツを切った物にフォークを刺してレザーに言う。


 「ほう、先程の御老体が引っ掛かりますか……」


 お茶の入ったカップに口を着けながらレザーが復唱する。


 「ハハハ、あの爺さんなら、ここんとこ毎日来ますぜ? なんでも、250階より上に行った娘が帰ってこないとかで」


 「娘ねぇ……あっこれ美味しい!」


 ペグネコンタのケーキのような食感とハチミツのような甘さに感動してからバンと机を叩き立ち上がる。


 「さあ、リフレッシュも終わったことだし今度は人助けと行きますか!」


 「お嬢様は豪気でらっしゃいますね」


 レザーも俺のあとに続く、しかし、オッサンが立ちはだかり行くてを阻む。


 「悪いことは言わねえからやめときなって、噂によると260階付近の灯蜥蜴の巣に薬になる卵を取りに行ったらしいが、もう居なくなってかれこれ一週間はたつからな、流石に死んじまってるって」


 レザーが俺の視線を感じ取ったのか溜め息を吐いて小さく「260階程度なら楽勝ですね……」と笑顔で答えてくれた。


 「よし、じゃあ行こうレザー」


 あの一言で洗濯の件は許さないけど、それでも、やっと冒険らしい冒険が始まるのだ。


 俺はレザーを引き連れて一路260階を目指し進んでいった。






 そう言えば、何か忘れてるような……


 まあ、忘れる程度の事だし大したことじゃないだろう。







ここまで読んでいただきありがとうございます。


本作は作者のジョーク作品となっております。


タイトルのユニークSevenS.overの頭文字でusoつまり嘘に成ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完全に忘れられてるw
[一言] 前2話も拝見させていただきました。 ジョーク作品。そしてタイトルから、どこかに嘘が紛れているのかなと、考えながら読んでしまいます。 話も面白いですし、是非連載で読みたい作品。プラタルメスの…
2017/08/15 12:02 退会済み
管理
[良い点]  異世界で塔と聞くとダンジョンを想像してしまうのですが、全く違いましたね、でも、実際はそうなりそうだなと納得してしまいました。  キャラが全員好き勝手に動き回っているのも良いです。 [気に…
2017/08/07 21:38 退会済み
管理
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