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6 杉野拓海の場合 決行
6話目です!それでは~
日がすっかり昇った頃、拓海は北にあるアーケードがない方の入口から商店街に入った。
花街商店街は入口が4つある。大きすぎて中心にはもう誰も行けないのでそれぞれの自治体から商店街に行けるようにと、大きくして入口を作ったからだ。田舎町というだけあって土地は有り余るほどある。
拓海は使い勝手のいい紺のリュックサックに財布、携帯、食料、飲み物、眼鏡拭き、ノート、筆箱それにタオルを入れてきた。携帯は電源を切って入れてある。もちろん居場所を探られないためだが、地域の本当の意味での恐ろしさを拓海はまだ知らない。
シャッターが開いて顔見知りのおばさんが顔を出した。
「あらおはよう、拓海君。早いのね。もしかしてデート?」
「そ!そんなんじゃないですよ!それじゃあ失礼します。」
拓海は礼を返して足早にその通りを去った。たったあれだけの会話で「拓海君は彼女に献身的だ」なんて名誉なんだか不名誉なんだかわからない噂が流れてしまっただなんて知らずに。