ランキング戦と暗殺
今日2話目。少しずつ物語を動かしていきたい
あの後、火花を散らす2人をなだめて部屋をあとにした。その時に2人を呼ぶ時は名前だけで、さんやちゃんはやめて欲しいと言われた。勿論、モカに対しては普通の生徒の前では先生をつけるように言われている
話していた時間は短かったようで、未だ喧騒は続いていた
今はハクアが最後にレストランでオムライスを食べたいと言ってきたので、3人で向かっている
「オムライスかぁ。俺が初めてレストランで食べたんだよね。美味しかったなぁ!」
「ん!…それに…3人で食べた…思い出がある」
「ははっ、そうだな」
「卒業したら、また3人で色々食べたいね」
「うん」
懐かしい思い出話をしながらレストランへ向かった。人は普段より多かったが、席が空いていてよかった
お、涼太とマールちゃん発見。2人きりだし、見なかったことにしておこう
和光と直也は……お?女子2人とお見合いみたいになってる!あれが惚れた子かな?……これは、後でからかってやろう
秋人は…いないみたいだ。まぁ、ね。しょうがないね
「じゃあ、モカ先生。席取りお願いします」
「あぁ、行ってこい」
俺とハクアはおばちゃんのもとへ
「「特製オムライス3つ!」」
と、昔のように注文し、2人で笑いあった
元の席へ戻り、3人で食べた
今まで食べてきた中で一番美味しい気がした
◇◆◇◆◇◆
「じゃあ……私は行く」
レストランを出てしばらくして、別れの時間がやってきた。分かっていたことだが、少し寂しい感じだ
「じゃあ、来年までお別れだね。ハクア、何かあれば連絡をくれ。すぐ、駆けつける」
「ん…分かった。私もこの街にいるけど…ね?」
「そ、それはそうだけど!」
「フフッ…大丈夫。ありがとう……もし、拓にぃに何かあれば……何を言われなくても…駆けつけるから…例え迷惑であったとしても…ね」
「迷惑だなんて、思わないさ。ありがとう。また、来年だ」
「うん…また」
最後に握手をした。しっかり、約束を確かめるように
明日からはもっと気合を入れないとな
そう思いつつ手を話そうとした時、腕を軽く引かれ前のめりになってしまった。そして
「私を…忘れないで…ね?」
チュッーーー
頬に、暖かな温もりと柔らかい感触が一瞬触れた
こ、これは…まさかっ!?
「なっ、こ、あっ!」
動揺しすぎて言葉にならない!顔が赤くなるのを感じる
「フフッ…また、ね」
その言葉を残して、ハクアは去っていった
その頬は赤かった、ように見えた
……最後にとんでもない置き土産を残してくれたものだ。忘れたくても忘れられそうにない
いや、忘れたい訳では無いんだけども
「随分、デレデレしているぞ、タクミ?」
後ろから、モカが声をかけてきた。少し拗ねているようだ
でも
「そうかも、しれないですね。やっぱり可愛い女の子からのキスは、男からしたら宝より価値がある」
そう言うと、モカが頬を膨らまして、しかし恐る恐るといった様子で聞いてきた
「そうかそうか。ワタシではなくハクアを選ぶのか。まぁ、それは自由だが?何だ、もし先ほどの接吻がワタシだったら、タクミは嬉しいのか……?」
愚問だな
「当然ですよ。何なら今からでも!ほら!どうです!」
「な、な、な、何を言っているんだ君はぁ!も、もういい!うわぁ近寄ってくるなぁ!」
「あはははは!」
妙なテンションで誤魔化してしまったが、本心ではあるんだ。でも、まだその時ではない。卒業試験。それが終わったあと、モカからしてくれれば、俺は満足です
それまでは、筋トレ稽古勉強!やる事は多い。頑張っていこう!
◇◆◇◆◇◆
卒業式から1週間。俺はモカと稽古をしながら、ある事について話をしていた
「……ランキング戦、ですか」
「うむ。マリーは出るんだったな?」
「当然出ます。去年は、出れなかったので…」
うーん。そういや去年和光達もそんなこと言ってたなぁ。結局止めたみたいだけど。なんか対策が練られるから、今年にしようとか何とか
あいつらでるなら、俺も出よっかなぁ
「で、どうするタクミ。出るなら早めにエントリーしておいた方がいいぞ。ちなみにワタシは出てもいいと思っている。今の君なら、もしかしたら優勝を狙えるかもしれない。というか、ワタシは優勝したから、出来れば勝って……「出ます!」……ほしい、というのが本音ではある。…返答が早いな」
モカが優勝なら、俺も優勝しないと。まず並ばないと超えれない
「では、エントリーとしておく。しかし……君も強くなったなぁ」
この会話の間、俺とモカはずっと打ち合っていた。それは今も続いているし、会話の前。具体的に言うと1時間ほど打ち合い続けている
「いやぁ、まだ本気のモカ先生には勝てませんし。これからじゃないですかね」
ここ数日の俺の伸びは凄い。女神様が祝福してくれているかのようだ。実際そうかもしれないし
それに、未来予測を戦闘に生かせるようになった。これまでは選択肢式だったけど、なんて言えばいいのか、未来視のような感じ、または勘のようなもの (でも絶対に外さない) に切り替えられるようになった
「そ、そうか……それでも今は8割くらい出しているんだけどな(ボソッ)」
ん?そうか、のあとなにか聞こえたような
「何か言いました?」
「い、いや。何でもないぞ。今日はここまでにしようか」
「はい」
俺とモカはストレッチを、マリーは武器の手入れをしてくれている
「マリー。武器の手入れいつもありがとう」
「気にしないで。無理やり混ざったのだもの、これ位はやるわ」
そう言って作業を進める
うーん。なんか今更だけど申し訳ないな…そうだ
「先生、マリー。この後予定は? もし良かったらたまには街へご飯でも食べに行かないか?」
「……街。私は今お金を持っていないのだけれど」
「お金は俺が出すからいいよ。武器の手入れのお礼と、ランキング戦の情報代って事で」
「ワタシは仕事が残ってるのでな。先に失礼する。すまないな」
仕事なら仕方ないね
「分かりました。あ、ご指導ありがとうございました!」
俺の感謝の言葉に後ろ向きで左手を上でひらひらさせることで答えたモカ。さまになるな
「……私はどうしたらいいのかしら」
「とりあえず、武器を片付けようか」
結局、2人で武器をしまった後は街へ出た
◇◆◇◆◇◆
街で、マリーと2人で食事をした。ホントにそれだけ
ランキング戦についても詳しく聞けたので、本気で優勝目指してる
「こう言ってはなんだけど、思ったより美味しかったわね。学園のレストランと比べると、少し味が落ちてしまうけど」
帰り道でマリーがそんな事を言った
「あはは。レストランと比べるのは少し可愛そうだな」
「……それもそうかもしれないわ」
それから学園まで、たわいない会話を続けて別れた
……となれば良かったんだけどなぁ
「あら、あれはモカ先生じゃないかしら」
帰り道。マリーが指を指した方向には、確かにモカがいた
「どうしたんだろう。かなり周囲に警戒しているみたいだけど」
「とりあえず、聞いてみましょう」
マリーがモカに向かって歩いていく
そのマリーを狙って、何かが飛んできた。それはマリーの胸に当たってしまい、大量の血を流して倒れる
という、未来を見た
「危ないっ!」
オレは体を滑り込ませて、木剣で弾く
普通の木剣では折れていたであろう手応えだったけど、女神様から貰った壊れない木剣だ。本当に壊れない
「…助かったわ。一体、どこから……」
「タクミ、こっちに来い」
モカがこちらに気がついたようで、姿を消しつつこちらに指示を出してきた
「マリー。行けるかい?」
「え、ええ。でも、モカ先生はどこに…」
困惑するマリーの手を掴み、俺は走った。急がなければ次が来る
俺はモカが走っていった方向の小屋の中へと走った
どうやらここは結界があるようだ
「こ、ここは一体」
「はぁ……街に行くと言ったから、もしかしたら出会うかと思ったが、本当に出会うとは思わなかったぞ」
モカが魔法を解いて、姿を見せた
「いやぁ、忠告してくれればいいじゃないですか……で、何が起こってるんですか?」
「実はな……」
モカが説明してくれた内容を纏めると
ランキング戦に向けて違法薬物の売買が始まったらしく、取り締まっていたところ、その組織が選手の暗殺依頼も請け負っていたらしく、何人かが怪我を負ったらしい。死者はゼロだ
今はその暗殺者を追っていたところだったが、マリーが狙われていたので、助けに入ったという事だった
「す、すいません。邪魔をしてしまったようで」
「気にするな。それに、まだ見失ってはいない」
謝るマリーを、モカは手で止めさせた
「その件は、学生である俺達は参加しても大丈夫なんですか?」
「……本当は危険なので関わらせないのだが、君とマリーであれば。条件はツーマンセル。2人で一緒に行動すること。また、暗殺者の殺害は避けるように。あくまで捕獲だ」
「了解。マリー、君が嫌なら学園へ引き返す。行動開始は5分後。決めておいてくれ」
「いえ、考えるまでもないわ。ここで帰っては、強くなれないもの」
「では、ワタシは行く。暗殺者は計5名。そのうち2人を捕らえている。ワタシは2人、君達はあと一人を任せる。方角は北。捉えたか?」
「勿論。任せてください」
「頼んだぞ」
そう言うと、モカは屋根へと飛び移っていった
この調子ならすぐに2人は捕まるだろう
「さて、ではそろそろ行こうか」
「ええ」
5分後。俺達も動き出した。敵は遠くへは行かずに街外れの小屋に身を潜めているようだ。恐らく壁を越える手が無いのだろう
待ってろ。絶対捕まえてやるから