魔神の力
短め。これがやる気の差か……っ!
「モカっ!」
俺は屋敷に入り叫ぶ。すると、奥から男が出てきた。マハトだ
「マハトっ!モカを何処へやった!」
「君は…フレイの護衛くんじゃないか。何か雰囲気が変わったようだが、君かこれをやったのは
死罪だ。他国の王子の屋敷に無理矢理押し入り、物を壊す。あまつさえ剣を向けるなんて。外交問題だ」
「黙れ。俺は冒険者なんでな。外交問題にはならない。それに、屋敷ごと何もかも消し飛ばせば、証拠もない」
そんなことは出来ないけどな
「ふん、出来もしないことを。それより、モカだったか。あの生意気な女なら地下で躾をした。もう僕のものさ」
「………そうか」
「残念だったな。ま、このまま帰るなら死罪は勘弁してやるよ」
「モカを穢したわけだ。万死に値するな」
俺は決めた。今、こいつを殺す
その時、俺の意識は何かに乗っ取られそうになった
「グッ…!」
「ん、どうした。早く帰れよ」
マハトの声は届かない
『お前、コイツ殺したいんだろ?』
どこからか声が聞こえる。そうだ、俺はこいつを殺す
『お前の女を穢したコイツが憎いか?』
憎い
『本当は諦めてんじゃねぇか?』
そんなことは無い。モカは大丈夫だ。彼女は強い。まだこいつの物じゃない
『ふーん。人なんて所詮、他人同士。それに薬、魔法、拷問なんか使えば壊れる脆い存在だ。例えそれが最上級冒険者だとしてもな』
……モカは大丈夫
『本心じゃねぇな。不安か?早く姿を見たいなぁ、壊れてるかもしれねぇけど』
俺は想像する。してしまう
モカが薬漬けにされて目を虚ろにして穢される姿
魔法によって洗脳、改造され、俺の事を忘れてマハトの物になった姿
多くの拷問で輝く美しい肌が傷つき、血を流し、泣き叫ぶ姿
『それは、誰のせいだ?』
これは全てマハトの手によるものだ
『殺したいんだろ憎いんだろ。俺に任せろ。より惨たらしく、苦しみ、それが長引くようにやってやるよ』
あぁ、本当は俺がやりたいんだが……俺が考えつかないような殺し方をしてくれるなら、それもいい。その記憶さえあれば、俺は……
俺はそこで、意識を『もう一人』に渡した。もしかしたら戻れないと分かっていながら、それでマハトが苦しむ事を選んだ
◇◆◇◆◇◆
「おい!帰れよ!」
「あぁん?黙れクソガキ」
『俺』はマハトを蹴り飛ばす。壁を一枚打ち抜いて飛んでいく
「ちっ、死んでねぇよな?宿主の最後の望みくれぇ叶えてやんねぇとな」
『俺』はマハトに近づく
「ゴホッゴホッ!クソッ!お前なんか死刑だ!すぐに父上に報こ…むぐっ!」
「うるせぇんだよクソガキが。まさか宿主が女ひとりにここまで怒るとは思わなかったが、テメェのお陰で『俺』が出てこれた。ありがと、よ!」
口を掴んで持ち上げて、右の掌を握り潰す
「ーーーーーーっ!!!!!」
声にならない叫びをあげて、マハトは泣き出す
「おいおい、惨たらしく殺すって約束なんだ。我慢しとけ」
握り潰した掌をグリグリと弄りながら、その手の爪を一枚一枚剥がしていく
手が青くなり、指先からは血が滴る
「つ、ぎ、は。反対の手な」
同じことを反対の手にもやる。握り潰して骨を砕いた時、痛みで失神したが爪を剥がされる痛みで起きる
「んんーーーーーーっ!!!!!」
「ん、何?足も?分かったよ」
両足とも同じことをする。そろそろ次のことをしようか
手を離してマハトを地面に落とす
「ぎゃぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!!!」
「喚くな、煩い」
肺の辺りを踏みつけて、呼吸を一瞬止める
「ゴホッゴホッ!」
「次は、何しよっかな」
皮でも剥ぐかと考えていると、声がかけられる
「タク、ミ?」
モカを背負ったハクアだった
「あー、来ちまったか」
『俺』は皮を剥ごうとしていた手を止めて、ハクア達を見る。モカは服が破られているが穢されてはいない。そう判断できた
「……宿主が正しかったわけだ。いや、間に合ってたってところかな」
「……タクミじゃない。誰!?」
ハクアはモカを下ろして武器を構える
「体はタクミだ。だが『俺』は違う。そうだな、俺はコイツの怨讐の塊みたいなもんだ」
「………どういう事」
「あー、つまり。あいつはこのクソガキにそこの女を穢された事に怒り、コイツを憎み、死ぬほど苦しめて殺したいと、俺に託したんだよ。つまり!この体は俺が貰った」
「まさか……そんな……」
「そういう訳で、死ね」
『俺』は崩れ落ちたハクアを殺そうと、首の辺りを蹴ろうとした。しかし、途中で動作は止まり、動けなくなった
「んだと!?まさかっ無意識でもコイツらを傷つけねぇってか!?」
多分そういう事だろう。『俺』は宿主の精神力に驚きつつ、殺すことは諦めた
「ちっ、時間の無駄だ」
『俺』はマハトを掴んで転移んだ。人がいないところまで
直前、ハクアが「待って!」と手を伸ばすが、遅かった
◇◆◇◆◇◆
「待って!」
私は手を伸ばす。しかしその行為も無駄に終わった
タクミとマハトの姿が消える。気配もなくなってしまった。つまりいなくなった
「タクミ……」
私は伸ばした手を胸で抱えて、泣きそうになる。でも、今はやる事がある
「必ず……追いかける」
今はモカを休ませることが先だ。私はフレイ姫様を寝かせた宿へと向かった




