襲撃:その1
「さて、フレイ姫様。本日はどうなさるおつもりで?」
兵士達がそう聞く
「本日は……気分転換に街の外へ出て狩りを。マハトと交渉材料が思い浮かばないの……本当にどうしましょう……」
と、いうことで。本日は姫様の狩りのお時間となりました
で、数時間後ーー…
「はっ!」
フレイ様が双剣を振るって敵を両断する
これまで戦ったのはワーム、スコル、火鳥だな
スコルは蠍のでかいヤツ
火鳥は文字通りだな!説明終わり
集団できたらフレイ様に一体だけ残しておく。それで一騎打ちだな。ぶっちゃけ、俺達は暇
なんか起きねぇかなぁ
そんな不謹慎なことを思いながら、俺はフレイ様を見守っていた
◇◆◇◆◇◆
「……手伝いってこの雑魚共?」
「雑魚って、お前ウチの中でもまぁまぁできる奴だぜ?」
白の亡霊と王が話している。王の後ろには数十人のゴロツキのような連中がついてきていた
「雑魚だとゴラァ!」「舐めてんのかぁ!?」「最上級冒険者だか知らねぇが、ぶち殺すぞ!?」
雑魚扱いされたゴロツキ共が喚き出すが
「うるせぇテメェら!3人でも亡霊にゃ勝てねぇよ!」
「「「だが、王さんよぉ!」」」
「でももへったくれもねぇよ!せめて俺に勝ってから言えってんだ」
そう言う王。実際王より亡霊の方が強いが、それはゴロツキの預かり知らないところだ
「それより亡霊。オメェ、コイツら使い潰すか?」
「………多分。1番確率が高いと思うし」
「はぁ、そうかよ。ま、生きてたら助けてやってくれ」
「そんな余裕はない」
「あん?」
「護衛の冒険者の男。ギルドであったけど私の気配遮断を見抜いていた。少なくともアイツは私より強い。多分」
「マジかよ……」
「それに周りも中級って言ってたけどほぼ上級。流石に分が悪過ぎる」
「まさかそこまでの戦力だったとはなぁ」
「だから、頑張る」
「は?」
「?……依頼は受けたらこなす。そういう世界」
「はぁ、逃げるなんて選択肢はねぇか」
「それに許さないでしょ」
「ちっ、まぁな。この仕事が終わったらおらぁ闇ギルド辞めんだ。良かったら酒場まで飲みに来な。1杯だけ奢ってやる」
「ん……ありがとう」
「全く、娘ぐらいの年頃にしか見えない女を使うのは気が滅入るぜ」
王がそうため息をつくと背後から男の声が
「はっ、老いたなマスター」
「かもな」
言わずもがな霧である。そして人数が揃ったということは、作戦開始の合図が出されるのもまた、言う必要がないことだ
◇◆◇◆◇◆
「今日はこのくらいで帰りましょう。少しは気分も晴れました」
フレイ様がそう言うと俺達は帰る準備を始めた。最終的にフレイ様は100近くの魔物を狩っていた
俺達は別で狩ってた。素材を集めなきゃいけなかったし。あ、護衛放棄じゃないよ。ちゃんと近場で狩ってたからね
さて何も起こらず帰れるな。てかさ、フレイ様はマハトとの交渉進める気があるのか?
俺には全くないように見える。どうするんだろうか
そんなことを思っていると、近づいてくる気配を感じた
「おうおうおうおう、貴族様の馬車たぁ運がいい。大人しく女と金目のモン置いてきな」
数十名のゴロツキがこちらを取り囲む。なんだコイツら。そんなに強くなさそう。兵士達でも対応できるだろう
それより……
「モカ、あの森の中。3人いる」
「何?ワタシには2人しか……って、マハトの雇いか」
「多分。ゴロツキに乗じて何かしてきそうだ。対応出来そう?」
「ゴロツキは兵士達とハクア達に任せるしかないか」
俺とモカはそこで話を終え、武器に手をかける
「あぁん?抵抗すんのかぁ。なら、やっちまえお前ら!」
ゴロツキの頭らしき人物がそう号令をかけると、一斉に包囲を縮めて、こちらを攻撃してきた
「モカ…タクミ。貴方達は…やる事ある。行って」
「すまん、任せた」
「ハクア、大丈夫だとは思うけど、気をつけて」
そう言い残してオレとモカは森へ走る
早めに倒せればいいんだけどっ!
◇◆◇◆◇◆
「お、おい!こっち来るぞ!?」
俺はそう叫ぶ
「ちっ!やっぱバレてる!」
あの冷静な亡霊が慌てていた
「慌てんな!いいか、亡霊は坊主の方。俺とマスターはモカだ。亡霊、生きてりゃ終わり次第加勢に行くから耐えてな!」
霧がそう叫ぶと、魔法を発動した
「《霧廻》!」
発動と共にこちらに向かう神速刀と坊主を霧 (自然現象の方) が飲み込む
「《廻転》!」
霧がもう一つの魔法を使うと、亡霊と坊主を残して森ではないどこかに転移した
◇◆◇◆◇◆
「モカッ!」
嫌な予感がしてモカに手を伸ばす。モカは気付いてくれたが、触れる前に霧と男2人とともに何処かに消えた
くそっ、どこに跳んだ!?
そんなことを考えていると、前から殺気
「邪魔、すんなっ!」
剣で切りかかる少女。白の亡霊レイナさんに俺はそう叫ぶ。構ってられないんだよこっちは!
力の限り押し返しす。レイナさんは後ろに跳んで衝撃を逃がした
「モカを何処にやりやがった」
「それは霧にしか分からない」
「あっそ」
俺ができる最速で真っ直ぐ切りかかる。レイナさんは早さについてこれていないようで、驚いているだけだった
「っ!」
ギリギリ剣を体との間に挟んで防御された
だが、それがどうした
「増加」
所謂強化魔法。持続型ではなく単発型だが持続型より効力は高い
俺は腕をそのまま振り抜く
ピシッ!
レイナさんの剣にヒビが入る
そのまま、断ち切る!
パリィィィイン!
レイナさんの剣が砕け散って、破片が俺の顔やレイナさんの顔を傷つけながら飛んでいく
押さえられなかった俺の剣はレイナさんの左肩へ
「っぁぁぁあ!!」
跳びのきつつ肩を手で押さえて回復魔法を使う
ちっ、回復できんのか。長引く……なっ!
距離を詰めつつ、木剣を投げつける
レイナさんは右側に避けるがおれはそのまま距離を詰めて、痛めている左の肩を掴み膝蹴り
関節くらい外れたんじゃないか?
「っっっっっ!?」
俺は後ろの木に刺さっている木剣を抜き、構える
「そろそろ降参でいいか?」
「まっ、だまだ!」
どこからともなく剣を取り出し左で構えるレイナさん
一応右肩に回復魔法をかけ続けている。最上級なだけある
「でも、何が出来る?」
俺は手に計100発のAP弾を適当な属性で作る。狙う必要も無い、ばら撒く!
「各属弾!」
「っ!」
射線から逃れるように姿勢を低く、そして障害物の多い森へ
まぁ、森に逃げたところで俺からは逃れられん。むしろ好都合だ。狙撃してやる
俺は手近な木に跳び乗り、探知を開始……しようとしたが、止めた。時間の無駄遣いだ
フレイ様の馬車に戻りゴロツキの掃除、その後全員でモカの捜索だ
そう決めて俺は馬車に向かった
◇◆◇◆◇◆
何なんだ、何なんだアイツは!?
私は森を走る。獣人は暗い森と相性がいい。隠れられるし身体能力故に奇襲しやすい。だが、アイツには通用しないだろう
「どうすればっ!」
追ってきている気配はない。多分仲間の元へ向かいゴロツキの排除。私を無視して霧の捜索か
一応、策はある。だが諸刃の剣だし、通用するかもわからない。多少剣を合わせただけでは底までは測れないのだ
「仕方ない……」
本当はゴロツキごと地盤を落として近くの谷へ繋げて突き落とす筈だった
これが出来るのは、今だけだ
私は踵を返して、馬車に向かった。そう、アイツを倒せなくても取り敢えず姫様を殺せば、後は霧が殺ってくれる
(本当は、今すぐ逃げて妹探しに戻りたい)
そう思ってしまうのも無理はない。それ程までに実力差があった
まぁ、闇ギルドの制約で逃げると死ぬ。今近くに霧がいるし、それでなくても闇ギルド連合が消しに来る。妹を見つけるまで、私は……
その妹が、実は近くにいるのをレイナは知らない
◇◆◇◆◇◆
「ハクアッ!状況!」
俺はすぐ馬車に着き、ハクアに現在の状況を尋ねる
「ゴロツキ…残り10切ってる。そっちは」
「モカが連れてかれた。ここ蹴散らして捜索」
「了解」
「フェン達も分かったな」
「「「「了解」」」」
「よし、全力で消す」
そして駆け出そうとしたその時、危険察知の予測が発動した
(拳で地盤を崩す!?)
見えた未来はレイナさんが何か刻印のようなものを体に纏って地面を殴ると、地面が割れて姫様達が全員落ちていく未来だった
「ちっ!ハクア!フェン!姫様!」
近くにいた3人を引き寄せて、上に飛ぶ。慣れない風魔法で上にぶっ飛んでいく着地は知らん!
ーーーードォォォォン!!!
未来予測通りレイナさんが地面を割る
「くっそ、ルナ!魔法で着地の衝撃に備えろ!お前なら出来る!後で迎えにいくから、生きてろ!」
俺は無茶苦茶なことを叫んだ。でも
「まっかせときな主人!全員軽傷で返してみせるよ!」
とルナが答えてくれた。多少自身なさげだか頼もしい!
俺はルナに微笑み、すぐにその笑みを消した
「さて、やってくれたな、白の亡霊」
「フゥゥゥーーー…」
力の限りを尽くしたのか、レイナさんは動かない
その時、フェンが俺の服を引っ張った
「ん、なんだ?」
「アイツ、殺すのか?」
「……そうだな。ここまで邪魔をしてくるなら敵だろ」
「そうか……じゃあ、オレがやる」
「は?」
俺はフェンが言ったことの意味を理解出来なかった
「フェンが、レイナさんと?」
「あぁ、だが理由は聞くなよ?」
そう言うと、フェンはこれ以上話さないとばかりに前に出る。仕方ない、危なくなったら助けるだけだ
「よぉ、冒険者ギルド以来だな」
「……そうね」
あ、世間話から入るのね
「突然だが、アンタ妹がいるだろ?」
「……いるけど、何でそんなことを」
「いや何、知らん間に売られてたオレと違って姉貴が大陸渡り歩いてたって聞くと、なぁ?」
「何を言って……」
本当に、何の話だろう。俺には分からない
「レイナ=フォース。オレの姉の名前だ。久しぶりだな、姉貴。フォース家固有術式《通天》。そんなもんまで使って、限界が近いんじゃないか?」
「まさか……」
フェンの体にレイナさんのような刻印が浮かんでくる。それに伴い、青い髪は白くなっていく
「元サリナ=フォース。今はフェン。俺は今から主人の敵を殺す。さぁ、立てよ」
レイナさんと同じく《通天》を使ったフェン。話していたことが本当なら、フェンは王ぞ……
「主人、気にするな。今はお前が主人オレはフェン。それ以外の事は捨てた」
俺の思考を遮るように、そう笑うフェンは確かにそれしか考えていないようだった
「サリナ、サリナッ!」
駆け寄るレイナさん。それをフェンが手で制す
「だから、言ってんだろ。オレはフェンだ。さぁ主人達はモカ姐を探しに行ってきな。リル達はオレが見つけといてやる」
俺とハクアは頷くと、未だついていけてないフレイ様を連れ街へ戻って行く
「サ、サリナ……」
「煩い。その名前は捨てたって言ってんだろ?物分りが悪い姉貴だ。主人に敵対した、それが運の尽きってな。さぁ、始めよう。姉妹の殺し合い」
そう言うフェンの目は、感情が抜け落ちたかのように冷たかった




