別れて冒険 〜その1〜
「じゃあ、またいつか。手紙は回すようにしてくれよ?」
「任せろって。あ、これ村氏にも渡しとくわ」
「何これ」
「女神様からの贈り物。俺のとこに全員分あったの忘れてて渡してなかったわ。倉庫w」
「こんな便利なもん忘れんなよ!w」
これあったら今もってるの全部纏められたじゃん!金とかな!
……これリスト表示出来るんだけど。マジ便利すぎないですか?個別で出せるし
俺達は笑いながら先に行く和光達を見送る。行き先はくじ引きをした。馬車での移動は依頼で慣れた。それぞれの馬車に乗って移動していく
この世界は人の大きな街が8つあるらしい。この街とは、地球で言う国だ
放射線状に位置しており、中心には魔族特区と呼ばれる魔族の国があるらしい
勿論その間には村も無数にある。あまり栄えてはいないらしいけど
ダイモンは南西にある街のようだ。俺達が召喚されたところは魔族特区の人族の生活区域だったらしい。モカが言ってた
この世界の街間での移動は円を書くように回らないといけない。魔族特区は入ってはいけないのだそうだ
現在、南西なので、西を通って目的地に向かう組を説明しようか
和光は北東の精霊都市フォース。この街には精霊も住んでいて、契約できるとより強い力を手に入れられるということだ。ここにはいずれ全員訪れるように計画している。割と精霊と契約している人は多いんだよなぁ。小精霊とかはね
秋人は北の積雪都市フロート。ここは龍種が多いそうなので、素材集め兼ランク上げ。素材は全員分欲しいが、ある程度で切り上げてもいいと言ってある
この2人は途中で合流後に東の極東都市ワゴウに向かってもらう事になっている。ワゴウは日本に近い街のようで、まぁ娯楽目的である。それ以外にも、モカの師匠がいるとの事。修行をお願いしに行くのだ。最終的な目的地はここになる
直也と涼太は西の貿易都市トーレドと北西の鍛冶都市イストスへ滞在してもらう
このルートは2グループで冒険者をやりつつ必要になりそうな物や人材を集めて育成。皆に配布する役割を主としてる。ここは手が必要そうなので金を渡して奴隷を買うかしてもらうしかない
店を建ててある程度安定したらワゴウへ来るよう指示
次は南経由の方、っていっても俺とフェンのグループだけなんだけども
南の灼熱都市フラムにフェン達
南東の冒険都市ダンジンに俺達だ
灼熱都市は素材集め。そんなに数はいらないと思うので途中から俺達と合流。ダンジョンに潜って魔道具の確保に向かう
ダイモンには特に有益になりそうなものはないので、スルーだ
いやしかし、ダンジョンに当たったのはかなり運が良かった。一番楽しそうだからネ!これから不運に見舞われる可能性大ですわ……
ダンジョンは人気で、皆から「変われー」とか言われたよ。変わるわけねーだろバーカバーカ!
各自、定期的にギルドを通して手紙のやり取りをする約束をしている。基本的な拠点はその街のギルドということになるかな
◇◆◇◆◇◆
「さて、俺達も行こうか」
最後に残った俺達。みんなを見送り終わったので俺達も出発しなければならない
「うむ。では行こう」
最初の御者はモカだ。俺はその隣で周囲の状況確認
後ろでハクアと杏子が会話しているのが聞こえる
この馬車の後ろにフェン達の馬車がついてきている
予定では2日で中間地点の村に着くらしい。その後3日でフラム。そこでフェンと別れて、また3日で村に着き、その後4日かけてダンジンに到着予定だ
「この辺りは魔物は少ないが、賊が出るらしい」
「へぇ、賊かぁ。そういうのって倒したり捕らえたりしたらいい事あるの?」
「懸賞金がかかっている奴は証拠をギルドに提出すると街から金を貰えるぞ。あとはアジトにある宝の所有権は倒した奴のものというルールがあるぞ」
「へぇ……って、ごめん出るわ、賊」
そういう未来を視た。久しぶりですね未来予測さん
異世界テンプレでちょっとドキドキの俺
その未来は意外と早かった。ていうか会話終わったあとすぐ来たね
◇◆◇◆◇◆
「よう、姉ちゃん達。金目のモン置いてきなぁ」
ありきたりなセリフ。見た目も良くある山賊って感じ。うんうんこうでなきゃ
でもさ、いくら何でも『50人』は多くないかな?
ここに出てきてるのは10人くらいだけど、隠れて囲んでる奴らが40前後。なんだこの山賊
「ふん。貴様らにやるものは無いな」
モカがそう言った。そうだね、何も積んでないしね
「積荷もねぇし、けっハズレかよ。まぁ女だけでも攫っていくか」
む?何か馬鹿にされるとイラつく。殺っちゃうか?
警戒心もなく近づいてくる山賊共に、一言
「なぁ、そこ入ったら切るけどいいか?」
いつの間にか地面に線が出来ていることに驚く山賊共。勿論俺が切った。これくらいはスグできるようになったよ
「ちっ!テメェら、俺らがライダーズって知って反抗すんのかぁ!?」
「ライダーズ?知らん名だな。賞金首でも無さそうだし、アジトまで行くのも手間だ。殺してしまうことをおすすめするぞ、タクミ」
モカがそう言う。じゃあこの邪魔なヤツらどかそうか
「て、わけだ。ハクアと杏子は馬車の警護。その他は各自、敵の殲滅に向かって」
「了解。ワタシだけでもいいんだがな」
「……馬車は…任せるといい」
「待ってるよぉ」
奴隷4人は頷くだけで、すぐに駆け出す。茂みで悲鳴が上がる。早いなぁ、俺も行こうか
「くっ、そぉ!」
これで4人。さて、次は……って、危ない!
ーーーキンッ!
「っ!? 助かります、主人」
ルナの背後からナイフが飛んできたのを俺が打ち落とした。もう少し気がつくのが遅ければ当たっていただろう。刃先に毒塗ってるし……
しかし、自慢ではないが、俺とモカ2人に気付かれずに接近と投げナイフなんて、誰でも出来る事じゃない。となると、この山賊の頭、かな。しかもかなり手練のようだ
「あんたが頭ってことでいいかな?」
「バレてんなら隠れてても意味ねぇか。おう、俺がこのライダーズの頭やってるバルトってもんだ。しかしお前さんわけぇのに大した腕してやがるな」
「お褒めいただきどーも。で、あんたら引く気は無いの?」
「そうだなぁ、今回のこれは俺が始めた訳じゃねぇ。部下の先走りでな。まぁでも、失敗しそうな部下見捨てて逃げるほど、俺は魔に落ちてねぇ。てわけで、ちょっと付き合ってくれ。なぁに、部下が全滅したらそんときゃ引くけどなっ」
その言葉と同時に駆け出した、と思ったら姿を見失った
なにぃ!?スキルか何かか!?
未来予測を発動して、左後ろからの刺突を木剣の腹で受け止める
思った以上の衝撃で、体が少し浮く
そこにバルトの横薙ぎの回し蹴り。腕を重ねてガードには成功。浮いてたから近くの木に叩きつけられた
「いてぇ!」
木の表面の尖っている部分が背中に刺さる。めっちゃ痛い!
追撃とばかりに飛び蹴りをしてくるバルトを地面に転がることで回避しつつ、足めがけて剣を振る
まぁ避けられたけど
とりあえず立ち上がって構える。バルトも体制を立て直したようだ
「あんた、強くない?」
バルトに話しかける
「そりゃ、一応現役の最上位冒険者だしな」
「……は?」
俺は開いた口が塞がらなかった