俺は決断した
あの後、俺は1人で悩んでいた
「旅行者で半魔、ね。御影杏子っていったっけ、あの娘。少なくとも日本では無い、もう一つの世界から来てる」
水色の髪にオッドアイなんて、地球では考えられないからな
「うーん。もう一度話をしたい」
そう思い、俺はモカの元へと向かった
◇◆◇◆◇◆
「何?彼女と話をしたい?」
「えぇ。少しでもいいんですけど、ダメですかね」
「むぅ……」
モカは少し考えたあと、許可をくれた。時間は10分
十分だ
部屋に入ると、こちらを見る目と目が合った
「お?君はコムラくんじゃないかぁ。どうしてここに?」
嬉しそうに笑う御影杏子。しかしその笑みには力がない
俺は防音魔法を使う。周りに音を完全に聞かれないようにできる魔法だ。俺の魔法を解ける人はいない。モカも盗み聞き出来るくらいだ
「や、久しぶり。早速で悪いけど、君は本当に死にたいのか?」
その質問に一瞬驚き、すぐに笑顔に戻る
「そうだねぇ。正直、自分の気持ちがわからないんだぁ。死ぬのが怖いといった感情は無い。けれど、ウチがこのままいなくなるのは嫌だ、なんて考えてたりするんだよぉ」
それは、どういう事だろうか
「ウチは、ウチが正しいと思ってきたことをしてきた。それを罪に問われて、殺されるのは悔しい。ウチは誰一人傷つけて無いのに」
傷つけてない?つまり、冤罪であるということか?
「でも、闇ギルドってのはそういうところだから。世間で言うような悪の組織だったから、しょうがないと諦めるウチもいる。結果、よく分からなくなったんだよねぇ。そして、どうでも良くなった」
「そうやって、逃げたのか」
俺は思ったことを言った。その結果、何かが変わったのかもしれない。でも、それがわかるのは今じゃない
「そう、逃げたんだよウチはぁ。何か出来ることはないか探し回って、色々やってみても、何も変わらなかった」
俺は、彼女が言ってるのは今回だけのことではないと感じた
「……なぁ、君は旅行者だったな。神様から、どんな能力を貰ったんだ?それで、見てきたのはどんな世界だ?」
彼女は、フッと笑うと、無機質な笑顔で告げる
「ウチは『時間跳躍』の能力を貰った。発動条件はウチが死ぬこと。見てきたのはこの街、そしてこの世界だよ。いずれ滅ぶ、美しく綺麗でありながら、醜く醜悪な世界を計5年間。その間に滅びた回数、536回。その全てを、ウチは見てきた。変えようとして変わらなかった未来」
「それは…本当なのか?」
「信じてもらえなくてもいいんだよぉ。でも、ウチは見てきた。そこは曲げない。…あ、そうだぁ。ウチが見てきた世界に、君と、お仲間がいたんだっけぇ?君達は一度も出てこなかった。それと同じで、一度しか見たことのない旅行者もいた。何でだろうねぇ」
何周もしてるのに、一度しか出ない?
それは、女神が送ってきていた人たちではないのか?
俺達と同じように、異世界への片道切符を貰い、こちらに来た彼等が、リセットされた事でこちらの記憶も無くし、地球に帰ったのでは?
旅行者という言葉が出来ている以上、最初は普通に暮らせている人もいたんだろうけど、滅びを見た女神はそれを止めようという考えに変わったのではないかという想像ができた
実際のところは分からない。しかし、いかにもありそうな話だ
「その滅亡。なんで起こる」
「方法?……たった一つだねぇ……滅びる時は必ず、天使が現れるんだぁ。その天使は、人を殺す。全て。赤子や老人も関係無い。全て、だ。数も多く逃げれる人はいない。そして……大地は神が消す。跡形もなく。人の生命力を使って、ねぇ」
人を殺して、それを力にして世界を消す、か。何とも壮大な話になったもんだ……聞いたはいいがスケールがデカすぎる
「そして、その起点はここ。この街の消滅だよぉ」
「なっ!それじゃあ!」
このままでは、また滅びる。俺達も消える
「そう、もう終わってるんだよ、この時代は。ウチが処刑されれば過去へ戻る。そこからずーっと、ウチは世界と共に滅び続けるんだぁ」
そう言った彼女は、微笑みながら泣いていた
頬を涙が伝っていく
「君を死なせる訳にはいかなくなった。俺はまだ、この世界を楽しみたい」
「えっ?」
「君が嫌でも、俺は助ける。待っててくれ」
「あ、うん」
勢いで押し切り、部屋を出る。そうと決まれば時間はない。御影杏子を死なせず、この街へ来る軍を叩き潰す。とりあえずはここまでだ
◇◆◇◆◇◆
「はぁ、行っちゃったぁ」
「どうだ?真っ直ぐな、可愛いやつだろ?」
杏子の元にモカが来て、そんなことを言った
「聞いてたんですかぁ?趣味悪いですねぇ」
「知ってて話したんだろう?」
「まぁ、そうですけどぉ。……彼、カッコイイですね。死なせるわけには行かなくなった!ですってぇ」
きゃあ〜!と照れる杏子にモカが言う
「だが、奴はあまり頭が回らない。多分ゴリ押しで君を攫いに来るだろう。その時、ワタシはどうすればいいと思う?年長者の意見を聞きたい」
「そうですねぇ……とりあえず立ちふさがってみて、見極めて、自分のしたいことをすればいいんじゃないですかねぇ」
「そうか………君は、あと2日で処刑される。まだ、死にたいと言うかな?」
「はは!言いませんとも!彼が助けてくれるそうですからぁ、ウチでも少しは期待してますってぇ」
「少し、か。その辺りはまだ信用しきってないか」
「人間、そう簡単に変われませんよぉ」
「フッそうだな」
モカは部屋をあとにした
「少し、期待しちゃいますねぇ。コムラ君」
◇◆◇◆◇◆
「てわけなんだが」
俺は地球勢4人を集めた
「それ、マジなん?」和光がそう言う
「分からない。でも、この街に軍は来る。それは視えた」
「マジかぁ……戦争とか、無いわー」
涼太が背中から倒れる。まぁ投げ出したくなるのもわかる
「俺は、彼女助ける事にした。お前らは、そっちに捕縛指示が出るかもしれないから、お前らの助けたい人を守ってろ、いいな?」
俺がそう言うと、直也が首を振った
「いや、俺も行くよ。大したことは出来ないけど」
直也がそう言うと、和光も続いた
「俺もやってやるよ、しょうがねぇなぁ」
「俺は、全員纏めて守ってる。俺に出来ることは、それくらいだからな。そっちの方が、頭を使わない」
そう言った秋人
「じゃ、俺もそっち行くか。秋人だけじゃ不安でマールを任せられん!」
と涼太
「お前ら……イイヤツだな!」
「「「「今更だな!」」」」
俺は感動しながら、皆で策を練った
これなら、何とか行けるかもしれない。問題はモカだ。多分、立ちふさがって来るだろう
これは、早めの卒業試験となりそうだ
それに、その後の軍の侵攻阻止。これについては、なるようになるだろう。ならなきゃ死ぬだけだ
な、何とかガキ使までに書き終えた!
文字数は少なくなってますが、今年最後の更新です!
ではでは、良いお年を(2回目)