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  第1話(前編)  『 女湯特攻大作戦 』



 「そういえば、お庭番って何やる人だっけ」


 ……お庭番になることが決まったその日の夜、俺はふと疑問に思った。


 「うーん、お庭番って言うぐらいだからきっとお庭で仕事するのかね。例えば……」


 1.お庭番じゃなくてお庭パンだ。

 2.お庭をバーンって爆発させる。

 3.お庭バンババンだ。


 ……とかね。


 「まあ、明日になればわかるだろ」


 俺は答えを先送りして、ベッドから起き上がった。そして、また寝転がった。更にまた起き上がった……うーん、暇だなぁ。


 「そうだ、お風呂に入ろう!」


 夕食を済ませ、明日まですっかりやることがなかった俺はそう決心して、着替えを準備した。



 「うーん、迷うなぁ」


 ……着替えを準備したものの、浴場の入り口を前にして俺は悩んでいた。


 「俺は女子風呂と男子風呂、どっちに入るべきなんだ」


 【女子風呂に入った場合】

 ・女子の裸が見られる。

 ・女子の着替えが見られる。

 ・女子のおっぱいが見られる。

 ・女子のうなじが見られる。

 ・女子の尻が見られる。

 ・女子の×××が見られる。

 ・何故か幸せな気持ちになれる。

 ・世界が平和になる。

 ・稀に逮捕される。


 【男子風呂に入った場合】

 ・男子の裸が見られる。

 ・男子の着替えが見られる。

 ・男子のおっぱいが見られる。

 ・男子のうなじが見られる。

 ・男子の尻が見られる。

 ・男子のフランクフルトが見られる。

 ・何故かフランクフルトの長さ比べが始まる。

 ・募る敗北感。

 ・でも逮捕されない。


 「……そうだ、女子風呂に入っても逮捕しかされない! 逮捕ぐらいなら寧ろプラス要素の方が多い気がする! 俺はやっぱり天才だ! ノーベルスケベ学賞受賞ものだな!」


 ※)本作品は覗きを推奨する作品ではありません。


 「よしっ、言い訳完了!」


 全ての不安要素を解消した俺は全力疾走で女子風呂に突撃した。



 ……誰もいなかったけどね!

 どこからか聴こえてくるカポーンって音が無駄に広い浴場に虚しく響き渡った。


 「いーいー湯ーだな、あははん♪」


 しかし、たった一人でこの広い浴場を独り占めできる! その事実が俺のテンションを上げた。

 一度テンションが上がるともう止められなかった。上がりすぎて昔、河原でやった水面走りの修行を湯船でやった。

 シュバババババババッ! 水飛沫が舞った。


 「うおぉぉ! 水流がないからすげー簡単にできるぞ、これ!」


調子に乗った俺は湯水を使って、水遁、水龍烈弾の術(口に含んだ水を弾丸のように飛ばす)を水面に連射した。

 ズドドドドドドドドッッッ! 巨大な水柱が立った。


 「うわー、うわー! テンション上がるぞ、これェ!」


 今立った巨大な水柱のように俺のテンションがうなぎ登りであった。

 ……今の俺は最強だった。誰にも負ける気がしなかった。


 「誰かいるのですか?」


 はい、最強タイム終了ーーー!


 「まずいっ! 何で気づかれたんだっ!」


 俺は咄嗟に天井に張り付いて、姿を隠した。

 ――次の瞬間、ガラガラーと扉を開けて、一人の少女が浴場に入ってきた。

 ここからは湯気でよく見えないが、まあ、何て言うかえっちぃシルエットだなぁ。


 「……あれ? 誰かいると思ったのですが」


 どうやら、彼女は何者かが風呂に入っていたことを嗅ぎ付けたようだ。

 しかし、それはおかしい! 俺が気づかれる要素なんて無い筈だ!


 「おかしいですね。確かに水飛沫の音がしたのですけど」


 ……あー、アレね。


 「しかも、更衣室に忍者っぽい服がありましたのに」


 ……あー、アレね。鋭いね、君。


 「勘違いですかね?」

 「勘違いだよ、きっと」」

 「……えっ、誰かいるのですか?」

 「……」


 うわー、俺の馬鹿馬鹿ァ! ついつい返事しちゃったよ! 幸い密室内だから反響して、どこから声がしているかわからないみたいだけど!


 「出てきてください! 通報しますよ!」


 ……通報すると言っている奴の前に出てくる馬鹿はいないだろ。


 「あー、ごほん……ワシはこの湯船で溺死した幽霊じゃ」


 ……取り敢えず嘘を吐いてみた。


 「マジで!」


 信じるのか!


 「なら安心ですねー♪」


 そう笑って少女はシャワーで汗を流した。そして、ふーふふふーん♪ と鼻歌を奏でながら洗髪を始めた。

 すげェ! 幽霊を目の前にして寛いでやがる! 俺は幽霊じゃないけども!


 「ふーふーふーん♪」


 少女は魅惑のボディーを洗浄し、泡を流して、タオルを頭に乗せた。そして、ゆっくりと湯船に浸かった。


 「はふぅ、癒されますぅ」


 ……艶っぽい吐息に何か興奮した。


 「にゃんにゃん♪ にゃにゃにゃん♪ にゃー♪」


 ……どうしよう、凄く可愛いです。


 「……もっと近くで見たいな(ぼそっ)」


 そのときだ! 俺の頭の中に住まう天使しのぶと悪魔しのぶが俺に語り掛けてきた!


 俺天使『覗きましょう!』


 俺悪魔『覗くんだ、しのぶ!』


 俺ホモ『女とか興味無いわ~』


 うわっ、何か出てきた!


 俺マゾ『ハアハア、我慢プレイって知っていますか?』


 ハアハアすんな!


 俺サド『あっ、鞭と低温ロウソク買うの忘れていた』


 ……ロープも買えよ。


 俺妹『お兄ちゃんの馬鹿馬鹿、スケベ!』


 ……お兄ちゃんだって男なんだよ。


 俺詩人『スケベでいいじゃない、人間だもの』


 ……ごめんなさい。色んな意味で。


 俺読者『おい、いつまで女湯覗きしてんだよ。どっちでもいいからさっさとストーリー進めろよ』


 ……それは言うな。


 【集計の結果】

 近づく:3

 動かない:3

 どうでもいい:2


 「あっ、これ忘れていた」


 俺ノンケ『おっぱいは近くで見るに限るよね』


 【集計の結果】

 近づく:4

 動かない:3

 どうでもいい:2


 俺実況『決まったーーー! まさかまさかの変態チームの逆転勝利だーーー!』


 ……そんなわけで俺は決死の接近作戦に出ることになった。


 ――天井に穴を空けて、その穴に鍵爪を掛けた。


 どうやって穴を空けたとか、どこからを鍵爪を出したかとかは突っ込むなよ!

 そして、ロープを腰に巻き付け、少しずつ降下する。


 俺二等兵『隊長! 目標まで残り五フィートです! 周囲確認、異常無し! どうぞ!』


 俺軍曹『全速前進だ! どうぞ!』


 ……距離、残り四フィート!

 ……残り三フィート!

 ……残り二フィート!

 ……残り一フィート!


 「あの、幽霊さん」


 ビクゥッ! ビクビクゥッ! うわー、ビックリしたー! 急に話し掛けられちゃったじゃないか!


 ビックリしすぎて湯船に落ちちゃったよ!


 ――バッシャァァァァァァァン!


 「えっ、誰かいるのですか!」


 水柱の中心に少女が駆け付けてくる。やめて、来ないで! いや! ホント! マ・ジ・で!


 俺二等兵『敵接近! 何か指示を! どうぞ!』


 俺軍曹『……』


 俺二等兵『うわぁぁぁ! 軍曹逃げたーーー!』


 ……落ち着け、俺二等兵。俺には忍術があるだろ!


 「いるなら素直に出てきなさい!」


 迫る! ヤバい! やるしかない! 俺は咄嗟に印を結んだ。


 ――変化の術ッッッ!


 術は発動した! 後はやり過ごすだけだ!


 バシャン、俺は包み隠さず湯船から顔を出した。


 そして、俺の顔を見た少女は唖然とした。


 「……お嬢、様? もう、入浴を済ませたのではないのですか?」


 そう、俺は変化の術で雛崎ほたるに変身したのだ! うん、やっぱり俺は天才だ! 焦って顔しか変身できなかったけどね!

 ちなみに変化の術は一度見たことある人間の姿にしか化けられないので悪しからず。


 「イエス! 何か急に入りたくなってね! だから入っちゃった! ふんす!」


 ……うーん、あの人どんなキャラだっけ? 光の速さで忘れちゃった。


 「あの……差しでがましいですが、声低くありませんか?」


 「風邪です」


 「そうでしたか……あれ? さっきまでいつも通りだったような」

 「さっき風邪引きました、ふんす!」

 「それに何だか体つきが逞しくなっているよう――」


 「これ以上の詮索は許さんぞ、身の程を弁えるのだな」


 「はっ、出過ぎた真似をしてしまい申し訳御座いませんっ」


 「ふむ、大義である」


 ……段々、自分が何を演じているのかわからなくなってきた。まっ、誤魔化せたからいいかな。

 取り敢えず目先の窮地を脱した俺は少しずつではあるが冷静さを取り戻していた。

 ……ふむ、この距離で見るとやはり可愛いな。

 遠くから見ても可愛らしい少女は近くで見ると更に可愛らしかった。

 まるで西洋人形のような整った顔立ちにアップに纏められた頭髪の隙間から覗ける艶やかなうなじ。肌は陶器のように白く滑らかなで、シミ一つ見当たらなかった。すげェ、あまりのエロさに俺の語彙力が少しだけ上がっている!

 そして、何より目を惹き付けるのは豊満すぎる胸の膨らみである。その大きさはお嬢にも匹敵する大きさであった。

 作者が巨乳好きで良かった、本当に良かった!

 俺は心の底からそう思った。


 「……あの、お嬢様」

 「妾に何か用か」

 「先程から、まるで乙女の真っ白な純潔に雄の獣欲をぶつけてようとしている殿方のような視線を感じるのですが」


 ……何か官能小説みたいな表現するな、この人。


 「勘違いです」

 「勘違いですか」


 よしっ、また乗り切ったぜ!


 「では、先に上がらせてもらいます」


 俺の視線に耐えられなかったのか、少女は立ち上がった。

 ……えっ、もう少し見たかったんだけど! 駄目だって、勝手に上がるなよ!


 ――そう思った俺はつい彼女の手を引っ張ってしまった。


 「……えっ?」

 「……あっ?」


 突然手を引っ張られた少女は足を滑らせた。

 ……まずい! 俺は咄嗟に少女を支えて、転倒を阻止した。


 ――ふにゃっ


 ……あっ、今胸に当たった柔らかい膨らみは二〇〇パーセントおっぱいだな。


 「……もっ、申し訳ござ――」


 当然、俺の姿を見た少女は硬直した。何故なら自分を助けた奴が――


 筋骨隆々で、

 顔だけ美少女で、

 フランクフルト丸出し。


 ――だったからな!


 「お嬢様! どこにおっぱい落としたのですか!」


 ……落とすか! てか、ツッコミどこはそこじゃないだろ! いや、確かにあのおっぱいの存在感は凄いけど。

 だが、俺が今すべきことはツッコミでも弁解ではない! 俺が今すべきことは――


 「隙あり」


 ――少女に睡眠薬を盛ることだ!


 ……グサッ、吹き矢が少女の額に突き刺さった。


 「……っ」


 少女は一瞬瞳孔を開き、すぐに意識を失った。


 「……」


 ……よしっ、取り敢えず無かったことにした。


 「後は介抱して、俺も避難したら完璧だな。じゃっ、まずは身体でも拭く――」


 少女の濡れた肢体を拭くためにすごーく柔らかくていい匂いのするタオルを掴んだところ、ことの重大さに気付き硬直した。


 ……おっぱい触っちゃう?


 「うわぁぁぁ! 俺は今、何をしようとしたんだぁぁぁ!」


 俺は恥ずかしさのあまりにタイルに頭を打ち付けた……けど、痛いのですぐやめた。体は大切に。


 「あー、悩むなー、でも、揉むのはよくないよなー、うーん、悩むなー、あー悩むなー」


 ……モミモミ、モミモミ


 まあ、揉んじゃったんですけどね。我慢はよくないので。


 「……すげェ、柔らかい!」


 ――モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ……揉みすぎた。


 「ふぅ、おっぱいも充分揉んだしそろそろ身体でも拭くかー」


 俺は取り敢えず、長い髪から拭き、次に肩、次におっぱい……ヤバい! 興奮してきたぞ! いや、ずっと興奮していたけど!

 ……そこで俺はふと思った。いや、ホント一瞬だけだ。


 ――エッチなことがしたいなぁ……。


 「うわぁぁぁ! それは駄目だって、倫理的にィ!」


 ……まあ、倫理とかどんなかわかんないですけどね。不倫の理由の略かな?

 俺は考える人のポーズをして、考えた。チラッと少女の方を見た。


 ――もはや芸術品レベルの身体がそこにはあった。


 ……こ れ は ヤ バ い !


 興奮の大洪水や。一話目にしてクライマックスやで。


 『おっぱい!』


 うわぁぁぁ! やべェ、何か幻聴が聴こえてきたよ!


 『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』『おっぱい!』


 ……大歓声が、溢れんばかりの大歓声が脳内に反響した。


 「……やめろォ……やめてくれェ」


 しかし、幻聴は消えない。


 「やめろォォォォ!」


 幻聴を振り払うように俺は叫んだ。


 ――轟っ、俺の叫びに呼応するように暴風が吹き荒れた。


 「……はァ、はァ、やっぱ駄目だァ」


 俺はタイルに拳を叩き込んだ。


 「寝込みを襲うような外道にはなれねェ……さっきおっぱい揉んだけど」


 昔ばあちゃんが言っていたっけ、「押し倒して一線越えちゃうのがエロゲ主人公で、押し倒してやらないのがラノベ主人公だ」って、まあ稀に一線越えちゃうラノベもあるけど、読んでないから知らない。

 ……よし、俺は今から仏になったぞ。南無阿弥陀仏だ。

 俺は心を無にして少女の艶やかな肢体を乾かし、着替えさせ、おまけに髪まで乾かして、マッサージ椅子に座らせた。


 「……ふぅ、これなら『お風呂上がりにマッサージ椅子に座っていたら、気持ちよくてついつい寝ちゃった、てへぺろ。あの美少女顔のマッチョは夢だったんだね』と都合よく解釈してくれる筈だ」



 ……俺は急いで着替え、速やかに更衣室から避難した。


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