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  第6話(中編)  『 VS〝十二騎士団〟 』



 ……キャンプ場周辺の森林区域。


 「こちら小日向、ただ今エリアCにいます。佐藤班と合流したいです……どうぞ」


 俺と野原と田中に担がれている(騎馬戦のような感じ)小日向さんはエリアCと標記された看板を前に無線越しに会話した。


 『こちら佐藤です、今エリアEにいます。これから小日向班とエリアDで合流します、どうぞ』


 無線越しから佐藤が応答した。


 「こちら小日向、了承しました。どうぞ」


 そして、俺と野原と田中は小日向を担ぎ、エリアDを目指して駆け出した。

 ……俺たちは現在クラス対抗レクリエーションの真っ最中であった。

 場所はキャンプ場周辺の森林区域で、サバイバル騎馬戦をやっていた。


 ……ルールは六つ。


 ルールその一、テープとカラーコーンによって囲まれた規定区域より外に出てはいけない。出た場合、その班は退場となる。

 ちなみに、規定区域は縦横一〇〇メートルであり、各々騎馬のスタート位置はくじ引きによってランダムで決まる。

 ルールそのニ、騎手は必ず靴裏にボタンを装着した特製の靴を履き、ボタンを押してブザーがなった場合は退場しなければならない。

 ルールその三、武器や凶器の持ち込みは禁止される。

 ルールその四、一クラスからは六チーム出場で騎馬の人数は最大三名であり、場合(怪我や事故)によってはそれ以下になってもよい、が騎手以外は相手選手への妨害及び鉢巻き奪取をしてはならない。また騎手の性別は問わない。

 ルールその五、鉢巻きを奪われた班は速やかに退場する。また、頭の鉢巻きを奪われても奪取した鉢巻き全部を失うわけではない。

 ルールその六、制限時間は十分。その時点の鉢巻き取得数が多いクラスが勝利となる。

 ……以上がサバイバル騎馬戦のルールである。


 〝焔〟「ヒャハッ! 殺しまくるぜェ!」


 ……ルールその七、人は殺してはいけません。


 〝焔〟「……あっ(威圧)」


 ……生まれてきてすみません。

 ちなみに優勝したクラスには何とBBQで最高級の松阪牛が食えるとか、何だとか。


 お嬢「……えっ? 松阪牛って昨日お昼に食べたけど」


 ……張った押したい。


 夜凪「……この肉の脂肪が少しでも胸に行けばいいんだがな(黄昏気味)」


 ……押し倒したい。


 田中「ギョエェェェェ! マッマママママッ、マ・ツ・ザ・カ・ギュ・ウ! グギャグギャギャァーーー!」


 ……落ち着け。


 ――ガサッ!


 「……御影くん、誰かくるわよ」


 何者かが茂みを掻き分ける音に橘が警戒して小声で会話をする。


 「大丈夫だ! 俺がお前を守ってやる! だからお前は鉢巻きを守ってくれ! 大丈夫だ、俺とお前なら――」


 ――首、ゴキッ!


 「……うるさい」

 「……はい」


 ――ガサガサッ! ガサッ!


 「まずい! 近付いてくるぞ!」

 「大丈夫だ、御影!」

 「……田中」


 ……意外に頼りになるなぁ。


 「どんな敵が来ようとも、封印されし一週間洗ってない頭に住み着いたシラミ掻きむしり攻撃で一網打尽だ!」


 ……それは一生封印しとけ。


 「……甘いな、田中」

 「おい藤原、何だその意味深な笑みは」

 「教えてやろう、俺はもう二週間足を洗ってないんだよ」


 ……臭そう(確信)。


 「ちくしょう……! 負けた!」


 ……競うなよ、そんなことで。


 「来るわよ、三人とも!」

 「……っ!」


 橘が声を張り上げ、俺は気を引き締めた。


 ――ザザザザッ! ガサッッッ!


 ……そして、来訪者はその姿を俺たちに見せた!



 ……てなこともあって、俺たちは一回戦を勝利した。


 「色んなことを飛ばした!」


 ……橘、ご立腹。


 「いやー、凄かったよ。まさか向こうは二人掛かりで襲ってきて、それを橘がササッとかわして、鉢巻きを取っちゃったんだからな」

 「全部言葉で説明しちゃった!」


 ……橘、涙目。


 「……さてと、次の対戦相手はどちらだ」

 俺は折り畳み式のホワイトボードに掲示されたトーナメント表へと視線を移した。

 「――十二組……!」


 ……隣にいる田中が次の本戦の相手を見て戦慄した。


 「……オイ、御影。次の対戦相手やべーぞ」

 「何がヤバいんだ?」

 「……それは言えない」


 それを言えよ!


 「……俺、次辞退しようかな」

 「何だよ藤原まで、一体十二組はどんな奴らなんだ!」

 「……それは言えない」


 だからそれを言えよ!


 ……そして、何だかわからない内に俺は準決勝に挑んだ。



 「……どうしてわたしとしのぶさんが同じ組なんですか?」

 「……そりゃ、クジで決まりましたからねぇ」

 ……俺に担がれる小日向さんが不満げに呟いた。

 「……何でわたし、しのぶさんと同じ番号のクジを引いちゃったんだろう」

 「運命ですね」

 「気持ち悪いこと言うのやめてください」


 ……そんなこと言わないでください、死にたくなります。


 「でもいいじゃないですか、気配感知能力のある俺と身体能力の高い小日向さんがコンビなんですよ、これは最強ですよ」

 「でも、しのぶさんって忍者のくせによく背後取られますよね」


 ……演出です、察してください。


 「まっ、まあ、頑張りましょう」

 「そうですね」


 小日向班はギクシャクしながらも前進した。


 「……うぅ……誰かいるのか」


 ……茂みの奥から声が聴こえた。

 俺は周囲を警戒しながらも茂みの奥を覗いた。


 「……佐伯ィ!」


 ……クラスメイトであり、股間のフランクフルトの先端にホクロのある奴だ。

 そんな佐伯を含む四人は地にひれ伏し、力なく項垂れていた。彼らは既に鉢巻きを取られた後だった。


 「誰にやられたんだっ、どうしてお前たちはそんなにボロボロなんだっ」


 俺たち小日向班は倒れている佐伯の下へ駆け寄り、敗北の理由を問い質した。


 「……御影、か」


 佐伯が力なく面を上げた。

 そして――



 「……〝十二騎士団〟には気を付けろ」



 ――と言った。


 〝焔〟「……あ゛あ゛? 俺の出番かァ?」


 何故か、キャンプ場で寝転がっている〝焔〟が反応した……いえ、〝帝国騎士団〟ではなく〝十二騎士団〟です。そして、堂々とサボるなよ、張った押すぞ。


 〝焔〟「……あ゛あ゛?」


 ……生まれてきてすみません。


 「オイっ、佐伯! 〝十二騎士団〟って何だよ!」


 ……と、場所は戻って森林区域。俺は佐伯に問い質した。


 「……それは言えない」


 またかよ!


 「おやおや、また獲物見つけちゃいましたね」


 ――茂みの向こうから声が聴こえた。


 「逃げろ! 小日向さん! 小日向さんだけでも逃げるんだ! 他はどうでもいいけど、小日向さんは逃げるんだ!」


 佐伯が青ざめた顔で叫んだ……おい、俺たちはどうでもいいのか、佐伯よ。


 「お・ま・た・せ」


 そして、俺たちの前に姿を見せたのは……。


 「イケメンだ! 凄いイケメンだ!」


 ……だった。


 「初めまして、〝十二騎士団〟四天王の一人――〝閃光〟の高橋だ」


 イケメンたちを騎馬に登場した高橋は不敵な笑みを浮かべた。まさにイケメンのイケメン盛りである。


 「……十二組は学園最強のイケメンクラスだ」


 小日向班の騎馬の一人である田中が声を震わせて解説を始めた。それ、さっき言えばよかったよね。


 「クラス全員がイケメンで、特にその頂点に立つ四天王は異次元のイケメンなんだ」


 なるほどよくわからん!


 「だから何なんだ、それが騎馬戦に何の影響があるって言うんだよ」

 「……さあ?」


 ……そっか。


 「来るぞっ、御影っ!」


 藤原の声で俺と田中は高橋の方を見た。


 「さあ、魅ろ! これが俺の50パーセントだ!」


 高橋が微笑んだ瞬間――


 「……っ! 眩しい!」


 ――視界一面が真っ白になった。


 「通常の俺はフェロモンを10パーセントに抑えている、何故だかわかるか? 剰りの美しさに発光してしまうからだよ」


 ……それより発光する原理の方が謎だろ。


 しかし、ヤバいな。眩しすぎて目が開けられねェ。どうにかしないと……。


 ――何かが迫る気配を感じた。


 「全員後ろに下がれ!」


 俺の叫びに小日向班は咄嗟に後退した。


 ――ブンッ、目の前から高橋の手が振り抜ける音が聴こえた。


 ……あと、一瞬かわすのが遅かったらヤバかった!


 「よくかわした! なかなかやるじゃないか!」


 高橋は機嫌よく笑い、そして絶望を口にした。


 「ならば俺の100パーセントを魅せてやろう!」


 ……えっ、もう?


 「……解……放」


 ――ドンッッッ! 圧倒的な光が天上を貫いた。


 季瀬「……〝龍殺し〟の覚醒か!」


 ……違います、ただのイケメン光線です。


 黒龍「……何事だ、まさか〝龍殺し〟の覚醒か!」


 ……いや、ホント紛らわしいことしてすみません。


 「これが俺の全力全開だ!」


 ……どうしよう、ただ光度が上がっただけで何が違うかわからない! ……と言いたかったが高橋に気を遣って俺は口を閉口した。


 「……あの、しのぶさん。これさっきと何が違うんですか?」


 ……言っちゃった!


 「フフフッ、違いならあるさ」


 高橋が俺たちを嘲笑う声が聴こえた。


 「……俺に近い騎馬が自身のイケメンキャパシティ以上のイケメン光線に堪えきれず卒倒してしまうんだ」


 ……ん? それってつまり。


 高橋のイケメン光線が止まり、俺は恐る恐る瞼を開いた。


 ――高橋を除く高橋班が立ったまま失神していた。


 「アホだ! ……でも今だ小日向さん!」

 「はいっ!」


 小日向さんが高橋に頭に巻かれた鉢巻きに手を伸ばした。

 そんな小日向さんの攻撃に対して高橋は――


 「さあ、おいで。俺の子猫ちゃん」


 ――両手を広げて受け入れた。


 ……何だ、コイツ?


 よくわからないが高橋は一切の抵抗も見せず、頭の鉢巻きを取らせてくれた。


 「……しまった! いつもの癖で迫り来る女子を受け入れてしまった!」


 ……アホだ(真顔)。


 「……よし、次の鉢巻きを探しに行こう」


 俺たちは〝閃光〟の高橋を無視して、新たなる鉢巻きを求めて動き出した。


 「その必要は無い」


 美声と共に姿を見せたのはまたもイケメンだった。ただのイケメンじゃない、それこそ高橋が可愛く見えるほどのイケメン力を秘めていた……イケメンのインフレパネェな。


 「来たか、大将」

 「初めまして、僕が四天王最強のイケメン――〝漆黒〟の花山だ」


 ……花山が笑った。


 ――ゾクッッッ! 全身に悪寒が走った。


 ……コイツはヤバい! 〝十二騎士団〟最強は伊達じゃねェ!


 「じゃあ、手始めに50パーセント」


 そして、花山が指をパチンッと鳴らした。


 「いくよ」


 ――俺の右足が勝手に前に出た。


 ……それは本当に自然なことであった。

 ……脳が、身体が叫ぶのだ。

 ……前へ進め。


 ――花山の下へ向かえ!


 ……そう叫ぶのだ。


 (……止まれ!)


 左足が前に出る。


 (……止まれっ!)


 右足が前に出る。


 「止まれッッッ!」


 ……止まった。


 「……お前、何をした」


 冷や汗を垂らす俺を、花山は嘲笑った。


 「僕は何もしていないよ、ただ君が僕に魅力されて勝手に近付こうとしただけだ」

 「……っ!」


 ……つまり、俺は花山に魅力されてしまったのか。そして、まるでブラックホールのような引力で引き寄せられたのか。


 「うーん、君の反応は面白いね。そんな君に」


 花山は意地悪な笑みを浮かべた。嗚呼、花山様美しい……やばっ、今洗脳されてた?


 「僕の100パーセント……見せたくなっちゃうじゃないか!」


 もう! お前らは何でそんなに100パーセントを見せたがるんだ!


 「君は花に咲くな、と言うのかい?」


 お前は花じゃないだろ、ダイヤモンドだろ! ……うわぁ、また洗脳されてたーーー!


 「解放……!」


 ――パチンッ


 ……解放しちゃった! どうなっちまうんだ!


 ……小鳥が花山の指に止まった。


 「……ん?」


 ……鳩も、蝶も、リスも花山の下へと集まった。


 「……おっ」


 ……地面が騒がしい――まさか!


 「こんにちわ、微生物たち」


 ……すげェ!


 ――そして、息ができない!


 「おやおや、空気まで僕を気に入っちゃったのかな」


 ……人間やめすぎ。


 「終わりだ、少年」


 花山が身動き一つできない小日向班に歩み寄る。


 「……チクショウ」


 ……前に進むのを止めるので精一杯な俺は逃げることができなかった。


 「さ・よ・な・ら……」


 花山の手が伸びる!


 「そこをどけェ! 御影ェ!」


 ――野生の遠藤が茂みからが飛び出した!


 「……っ!」


 花山班は咄嗟に後退して、遠藤の攻撃をかわした……花山様は運動神経も素晴らし……危ない、危ない。

 騎馬無しで突っ込んだ遠藤であるが、着地しないように頭上の枝を掴み、グルンと一回転して、自身の騎馬に着地した。


 「……コイツ相手に後退は無理だ、攻め続けるぞ」


 ……なるほど、いっそのこと接近すればいいのか。意外に頼りになるな、コイツ。


 「……ヤバいなぁ、〝封刃丸〟が無いと俺は通常の一割しか力を発揮できないんだよなぁ(ぼそっ)」


 頼りねェ!


 「大丈夫であります、隊長。我輩がいますぞ」


 エンドレスチェリーズ幼女担当の工藤が騎馬だった。


 「はあぁぁぁぁぁ! 我輩の内に秘められたロリータエネルギーを送りますぞ」


 ……駄目かもしれない。


 「行くぞ! 御影!」

 「おおっ!」


 小日向班と遠藤班、二班同時に花山の頭上にある鉢巻きを狙った。


 「……君たち、勘違いしていないかい?」


 花山が笑った。


 「 御影くん、遠藤くん、止まれ 」


 花山がその言葉を発した瞬間――俺の身体が硬直した。


 「……なん……だと」

 「僕の能力は引き付けるんじゃない、惹き付けるんだ」


 ……思考とは別に身体が花山の言うことに従えと叫んでいた。


 「残念だけど君たちじゃ僕には――」


 ――遠藤が単騎で飛び掛かった。


 「じゃあ、俺には効かねえェなァ! わりィけど俺は」


 遠藤が不敵に笑う。


 「エンドレスチェリーズなんだよォ!」


 そうか、遠藤には恋愛封印を貫く鋼の意志があるんだ。相手がどんなに魅力的な相手だろうが、遠藤を誘惑することはできない!


 「残念」


 花山はひょいと遠藤の攻撃をかわした。


 「そこに木は無いよ」


 ……まずい! 枝が無ければ方向転換できない! たとえ、足を着けずに着陸してもそんな崩れた体勢じゃ、花山の攻撃はかわせない。


 「我輩がいるでありますぞ! 隊長!」


 ――工藤が単騎で遠藤の着陸地点に割り込んだ!


 「……っ!」


 ……そうか! コイツも幼女以外の誘惑は通用しない!


 「ナイスだ! 工藤!」


 ――合体! ストレートツインチェリーズ!


 ダせェ!


 「これでしまいだァ!」


 遠藤が身を翻して花山の鉢巻きを狙った。


 「それはこっちの台詞だ!」


 花山も遠藤の鉢巻きを狙わんと腕を伸ばした。


 「「オオオォォォォォォォ……!」」


 ……二つの腕が交差した。

 ……漢の魂と魂がぶつかった。

 ……そして、勝敗が決した。


 「俺の」


 ――遠藤が花山の鉢巻きを奪った!


 「勝ちだ」



 ……同時に試合時間終了のブザーが鳴り響いた。


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