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命の重み

「今だ!! かかれ!!」


 聞きなれない声と共に多くのプレイヤーが姿を現す。

 それぞれが武器を構え詠唱を始める。

 援軍か? ……でも、そんな話…………。


「ーーっ!? マズイ!! 気をつけろ!!」


 遠征隊のリーダーであるフライヤさんが叫ぶと同時にあり得ない光景が俺の目に入ってきた。


「へへへっ!! くらえ!!」


 姿を見せたプレイヤー達はあろう事か、俺たちプレイヤーに向かって攻撃を仕掛けえてきた。

 熊型のモンスターにダメージをを与えられ身動きが取れない者、モンスターと交戦している背後から襲いかかわれる者、反撃される可能性の低い者達から攻撃されている。

 まさに今、俺の目の前であり得ない光景が広がっていた。


 いったい何が……何が起きている……?


「奴らはPKプレイヤーだ!! 全員一旦モンスターから離脱して体制を整えてPKプレイヤーに応戦しろ!! このままだと全滅するぞ!!!」


 PKプレイヤー? フライヤさん何言ってるんだ? これはゲームじゃないんだぞ? ここで死んだら本当に死ぬんだぞ? それなのにPKなんて……。

 PK……確かにゲームの世界ではいた。


 同じプレイヤーを殺し、アイテムと経験値を得る。


 でも、この世界は今現実と一緒だ。

 それなのにPKなんてしたらただの人殺し……あり得ない!!


「ひゃははは! 死ね! 俺達の為に死ね!!」


 しかし、俺の思いとは裏腹に目の前では殺戮行為が繰り広げられている。

 弱っているプレイヤーを一方的に嬲り殺す者、PKプレイヤーに追われ熊型モンスターの餌食になる者、まさに俺の目の前は地獄絵図と化した。


 なんなんだこれは……そうだ……ユーリ、ユーリは!?


 目の前の光景に呆然としていた俺は頭によぎるユーリの姿に我に返り、慌ててユーリを休ませていた木の方へを向く。

 するとそこには、ユーリを取り囲む二人の男プレイヤーがいた。

 一人は剣を振りかざし、一人はまさに今槍でユーリを突こうとしている。

 そして俺の目に映る景色はスローモーションになった。


 やめてくれ……なんでそんな事をする? 同じチーム……いや、同じプレイヤーだろ?

 この世界で死んだら現実世界でも死ぬって知ってるじゃないか。そうだ、これはドッキリだろ? どうせどっかでやめてポーションを飲ませるんだろ?


 俺は目の前の光景をスローモーションで見ながら、これが嘘であってほしいと願った。

 無情にも男の槍先がユーリの胸に突き刺さりユーリが驚きの表情を浮かべる。さらに、もう一人の男が振り下ろした剣がユーリの肩ヘとめり込んでいき、ユーリは驚きの表情から苦悶の表情へと変化していく。


 やめろよ……そんな事をしたらユーリが死ぬじゃないか……やめろ、やめろぉぉおおお!!!


「へへっ、余裕だな」

「だな。これだからPKはやめられねぇな」


 男二人は痛みで動けず、HPゲージが減っていくユーリを見下ろしながら人とは思えない言葉を口にする。


「やめろぉぉぉおおおおおおお!!!!!!」


 俺は周りの状況、俺達遠征隊のプレイヤーとPKプレイヤー、そして熊型のモンスターが入り乱れる中、何もかも気にせず一直線にユーリの元へと駆ける。


「なんだ!?」

「いったいこいつは!?」


 ユーリの胸と肩に一撃を食らわせた男たち二人は俺に気づき驚きの声を上げる。

 邪魔だ……お前たちはユーリに何をした!? 何をしたんだ!?


「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」

「くっ、応戦するぞ!」

「あぁ!」


 男二人は俺を敵として認識したようだ。

 ……その方が都合がいい。ユーリの痛み……お前達にも味わわせてやる!

 俺はそのまま男達二人に肉薄し、感情のままに剣を振るう。

 男たちは応戦しようとしていたけど、俺のスピードについて来られなかったのか驚愕の表情を浮かべたまま動けず、俺の攻撃をそのまま首や胸といった急所へと次々に攻撃を受ける。


「そ、そんなバカな……」

「俺たちが……」


 俺の攻撃を続けざまに急所に受け続けた男二人は、一気にHPゲージが無くなり光の粒子となって消えた。

 手にモンスターを斬る時とは違った感触が残る。


 え……俺が……俺が殺したのか……?

 いや……殺すつもりはなかった……俺はただ……そうだ、ユーリ……ユーリは!?


 俺は自分がした事から目を背けるように頭の中をユーリの事で埋め尽くす。

 すぐにユーリのいた場所へと視線を向けるとそこにはHPゲージがレッドゾーンから減少し続けているユーリの姿があった。


「ユーリっ!!」


 俺はユーリの元へと駆け寄る。


「ハヤト……君……」


 ユーリは弱々しい声で答える。ユーリの頭上のHPゲージを確認すると残りあと僅かってところで止まり赤く点滅している。

 良かった……間に合った……。


「ユーリ!! 待ってろ!!」


 そう言って俺はすぐさまアイテムBOXからポーションを取り出そうとコマンドを操作する。


「ゴメ……ンね……ハヤト君……私……迷惑……かけてば……っかだね……」


「ユーリ喋らなくていいから!」


 ポーション、早くポーションを!!

 俺はコマンドを操作するが、すぐ近くでもPKプレイヤーと遠征隊が戦っていたり、熊型モンスターもまだ生きていて暴れたりしていて周囲を警戒しながらでなかなかすぐに出せない。



「ハヤト……君……私……ハヤ……ト君が……来てく……れて嬉し……かった……」

「当たり前だ!! ユーリは俺のペアだ! それにレイクシティでご飯作ってくれるんだろ!! 約束忘れたとは言わせないぞ!!」

「へへ……そう……だった……ね……」


 俺はユーリに声をかけながらコマンド操作をする。

 ……あった!

 俺はすぐにポーションを具現化させて手に持つ。


「ユーリ!! さあ早くポーションを!」


 手にしたポーションをユーリの口に持って行こうとしたとき、横から水魔法が飛んで来てユーリに命中し、無情にもわずかに残っていたHPゲージを削り、ユーリのHPゲージがなくなった。


 え……? 今のユーリしそんな事したらダメだろ? だってほら、まだポーション飲んでないんだから。


 HPゲージが無くなったことでユーリの身体が薄くなってくる。


 そんな……そんな!!

 俺は手にしたポーションもユーリの口に入れようとするが、ポーションはユーリの口に入らずそのまますり抜けて地面へと落ちる。


「私……ダメ……みたい。ハヤト……君、あ……りがと……。私……ハヤ……ト君……の事……」


 ユーリの身体の重さが俺の手から消え、身体が光の粒子となって消えていった。


「ユーリィィィイイイイイ!!!!!!!!」


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