届かない剣
「行くぜ!!」
俺が考える間もなく、クライドは地面を蹴って俺に向かって来る。
くそ! 考えるよりも動くしかない!
俺は目の前に迫るクライドに対応するため、身体に命令を送る。
すると、身体はその命令を受け入れ、思っていた通りに動きクライドの剣を躱す
よし、痛みの方は大丈夫だ。
HPゲージこそ回復する暇はなかったけど、男と話している間に、受けたダメージよる痛みは回復したようだ。
「もっと俺を楽しませろよぉぉぉおおおおお!!」
クライドはさっきまでのように赤黒いオーラを纏いながら一撃二撃三撃と連続で剣を振るう。
俺はそれをギリギリで躱し続けるけど、クライドが振るう剣は空気を切り裂き、風を切る音と共に風を発生させる。
そして、それはその威力を表していた。
くっ……やっぱりクライドは徐々に攻撃の鋭さが増している。
それにあのクライドを纏う赤黒いオーラ……あれも大きなくなってきている。
やはりなんらかのスキルか……?
「ほらほら!! もっとやろうぜ!!」
クライドの容赦ない攻撃により、俺は考える間もない。
くっ、とりあえずはこの状況をなんとかしないと……。
……やるしかない。
「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」
どうするか考えたところで、逃げるにしても倒すにしても動くしかない。
そして、そのどちらをやるにしても動いて攻撃して隙を作るしかない!
俺は出来る限り速く、そして全力で剣を振るう。
「いいぜいいぜ!! そうだ、その目だ!! もっともっと楽しもうぜ!!」
俺が全力で攻撃してくるのを嬉しがるかのように声を荒げる。
そして、俺のエアリアルとクライドの剣が度々交じり合い、金属音が鳴り響く。
「くらえぇぇぇええええ!!」
「くっ」
そして、俺のスピードがクライドを上回り、エアリアルがクライドを捉えダメージを与える。
「調子に乗るんじゃねぇぇぇえええええ!!」
かと思えばクライドが、捨て身で攻撃を仕掛け一撃で俺の与えたダメ―ジ分を取り返すようにダメージを与えてくる。
そう、さっきまでと同じような光景が繰り広げられ、お互いのHPはオレンジゾーンへと入り、残り三分の一程まで削られた。
あのローブの男が何かしてくるかと思ったけど、今のところ動きはなく、ただ俺とクライドの戦闘を見ているようだ。
あの男が参戦してこないのは助かるけど、それはそれで不気味ではある。
でも、あの男まで魔法で参戦してきたら俺に勝ち目はないだろう。
あの男が何を考えているか知らないけど、気の変わらないうちにクライドを倒さないと。
「うぉぉぉおおおおお!!」
ローブの男が参戦してこないうちに何とかしようと、俺はさらに一段ギアを上げる。
「くっ……」
エアリアルが繰り出す斬撃の数がクライドの攻撃を大きく上回り、俺とクライドの周囲を黄緑色の軌跡が覆う。
そして、ジリジリとクライドのゲージを削っていく。
よし、このまま行けば――っ!?
俺は咄嗟に後方へと飛び、距離を取る。
「リーダーっ!?」
クライドは視線をローブの男に向けて叫ぶ。
そう、俺とクライドが剣を合わせているところに、ローブの男が魔法を放ってきたのだ。
「この男は俺が!!」
クライドが戦いを邪魔された事を抗議するように叫ぶが、男はそれを手で制し、俺の方へとゆっくりと歩いて来る。
「おしい……実におしい。本当に仲間にならないか?」
俺はその問いにエアリアルの剣先を男に向け、無言で答えを示す。
「リーダー! そいつは仲間になる気はねぇ! だから、俺が――」
「残念だがクライド、今の君では彼に勝てない」
「いや、そんなはずは!!」
クライドが何かを言おうとしたところで、ローブ人が無言でクライドを見る。
すると、クライドはそれ以上何も言わなくなった。
あのクライドがここまで従順なんて……。
「私たちの仲間にならないなら、ここで死んでもらうが?」
そう言ってローブの男はゆっくりと歩いて来る。
それを見ながら俺は無言で様子を窺う。
そして……
「あいにく俺は死ぬ気も仲間になる気もない!!」
男が俺の間合いに入ったところで、地面を蹴って斬りかかる。
相手は魔法使いタイプだ。
間合いさえつめれば!!
「っ!?」
一気に間合いを詰め、エアリアルを振るったが、それは何も捉えた感触がないまま空を切る。
「残念だ」
すると、俺の横にローブの男が見えた。
そんな、今動きが見えなかったぞ!?
そう思っている間に男は俺に向かって魔法を放つ。
「グハッ」
俺は隙になった横からモロに魔法を受け吹き飛ばされる。
そして、ゲージは一気に減り赤く点滅する。
「君が私たちの敵に回るというなら、ここまでだ」
そう言って男は俺に向けて再度魔法を放とうとゆっくりと動く。
くそ、ここまでか……。
ユーリ、約束守れなくてゴメン……。
そして、ノア、ラウル、すまない……。
俺は死を覚悟して目を閉じた。




