表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

サラの過去とチームとしての規律

 俺はまずサラの事からみんなに説明することにした。

 まず、名前はサラという事、そしてサラには年の離れたカナタという弟がいて、そのカナタは病弱で病室から外に出られないから、このWOFを通じて外を経験させてあげようとしてこんな事態になり、サラはその責任を感じ、どんな事をしてもカナタを守ると決意したという事。

 そして、あの悪夢の日から二人でこのWOFを生きているところに黒いローブの男が現れ、魔剣ティルフィングをやると言われた事、そして、断ったものの、そのティルフィングを置いて立ち去った為、カナタを守る為にその剣を手にした事。

 それから、しばらくしてサラとカナタの前に黒いローブの男とクライドという漆黒の執行者のプレイヤーが現れ、漆黒の執行者に入れと言われ、それを断り二人を倒して逃げようとしたけど、クライドに歯が立たず、負けて気を失い、次に目を覚ました時はカナタが人質に取られ漆黒の執行者に協力する事になった事、そして漆黒の執行者での自分の役割はPKするのではなく、プレイヤーをギリギリまでダメージを与え、漆黒の執行者のメンバーのレベルを上げさせる事、そして何かあった時の保護者的な役割だという事。

 俺はサラに聞いた話を言う必要のないスキルの事以外はすべて話した。


「――という事なんだ」


 俺の話を聞いて太陽の導きのプレイヤーは複雑そうな表情を浮かべる。サラの境遇を不憫と思うのと、いくら直接手を下さなかったとは言え、自分たちの仲間を追い込み他のプレイヤーにトドメをささせ、命を奪われたとのだから許せないという思いがあるのだろう。

 でも、ここでサラを殺したって意味がないってのは心のどこかで分かっているはず。


「だからフライヤさん、俺とサラは今から漆黒の執行者のアジトに行きカナタを助ける。フライヤさん達も協力してくれないか?」

「「「っ!?」」」


 俺の言葉にフライヤさんを含め、サラ以外のプレイヤーが驚きの表情を見せる。

 

「そ、そんなの危険です!!」

「そうだぜハヤト! ノアちゃんの言う通り危険すぎる!!」

「……ノアとラウルの言う事は分かる。確かに危険は伴うかもしれないけど、俺はこの世界で生きているプレイヤー……救える命があるなら救いたい」


 そうだ。

 俺は今まで目の前で救えなかった命がたくさんある。

 その救えなかった命の罪滅ぼしじゃないけど、俺は自分の目の前にある命は可能な限り救いたい。

 このゲームの世界が現実と同じ一回限りの命になり、その命が人質に取られていると聞いたら俺はほっとく事が出来ない。

 俺のさっきの言葉を聞いて、ノアとラウルも感じる事があったのか口を閉じた。


「……フライヤさんダメですか?」


 続いて俺が放った言葉にフライヤさんは腕を組んで顔をしかめながら俯いて悩んでいる。

 そして、しばらく顔を上げると口を開いた。


「……ダメだ。協力は出来ない」

「……そうですか」

「……すまない。まず第一に相手の規模が分からない以上、仲間を危険にさらすことは出来ない。それにその女が言っている事が嘘という可能性もある。それに相手は漆黒の執行者だという、ハヤト君から聞いている事を考えたらリスクが高い」


 やっぱりダメか。

 いくらプレイヤーを救う為とはいえ、チーム全体のリーダーであるフライヤさんが、規模の分からない相手に二つ返事は出来ないだろう。

 それに、サラの宝玉が赤とはいえ、PKギルドである漆黒の執行者に所属していたという事から初対面でいきなり信用はできないと思う。

 でも、俺はサラを剣を交えて……そして言葉を交わしてそれが嘘じゃないと確信している。だから、俺はカナタ君を救いに行く。

それに、フライヤさんの立場を考えると最初からフライヤさんの援軍は無理だと思っていた。


「ほら見ろ、私の事を信用する訳ないじゃないか。やっぱり――」

「じゃあフライヤさん、俺とサラでカナタ君を助けに行きます。そして、漆黒の執行者を捕えてきます。……そしたらサラを信じてくれますか? チームに受け入れてもらえますか?」


「「「っ!?」」」」


 その瞬間、サラを含めたこの場にいる全員が驚きの表情に変わる。

 俺は最初から援軍を出してもらうのは難しいと思っていた。

 でも、この話を聞いたフライヤさんはすぐさまサラをどうこうする事もないだろうと思っていたし、何とかサラの言う事が本当だと証明されれば、フライヤさんや他のプレイヤーもむやみにサラを処罰しないだろうと思った。

 確かにサラのやってた事は許される事ではないかもしれない。でも、自分の大切な人が人質に取られていたとしての行動だとしたら……日本人の感覚として、同情の余地はあるだろうし何よりサラは直接手を下していない。確かに追い込んだのは確かだろうけど。


「……でも、その女は俺たちの仲間を追い込んだ。いくら理由があっても許されるもんじゃない」

「そうだ。死んでいった仲間は帰ってこないんだ」


 太陽の導きのプレイヤーの言葉にサラは苦悶の表情を浮かべる。


「その気持ちは分かる。……でも、死んでいった者が復讐を望んでいるとも限らない。……もちろん復讐を望んでいる者もいるかもしれない。でも、それ以上にこのバカげたゲームを終わらして欲しい、自分のような犠牲者を減らして欲しい! そう思っているプレイヤーもいるはずだ。だから、罪滅ぼしではないけど、サラには俺と一緒に行ってもらって漆黒の執行者……PKギルドを止める」


 俺とサラ、二人でどこまでできるか分からないけどやってやる。

 サラの言うことが本当なら漆黒の執行者にはまだベテランプレイヤーは少ないようだ。

 ならば、俺とサラでPKされる直前までの恐怖を味わせて、PKをやめさせる。


「……分かりました。いいでしょう」

「フライヤさん!?」


太陽の導きのプレイヤーは抗議するようにフライヤさんを見る。


「ただし! 私たちもその女性が信用できるか、二人について行き離れた場所から様子を見ます。そして、何か変な動きがあった場合はすぐにその場を離脱します。当然ハヤト君を救いにも行きません」

「えっ!?」

「おいおい!?」


 ノアとラウルは驚いているけど、フライヤさんの立場としてはこれば精いっぱいの譲歩だろう。


 「分かりました。ありがとうございます」


 俺はそう言ってフライヤさんに頭を下げる。

 俺はユーリの一件……いや、レッドシティからずっとフライヤさんには迷惑をかけっぱなしだな。

 それなのに俺は、恩を仇で返すように困らせるようなことばかり……いつか遠征隊にでも参加して借りを返さないとな。

 

「わ、私もハヤト君と一緒に行きます!」

「何言ってる!? ノアは魔法使いだから危険――」

「分かってます! でも……嫌なんです! ハヤト君が無事かどうか気にしながら待ってるだけってのがどんなに辛いか……だから私も行きます!」

「ノア……」

「じゃあ俺も行かないとな! ハヤトの事だ、無茶するだろうし、ハヤトに命を助けてもらった俺としても、もしノアちゃんに何かあって命の恩人が前みたいに塞ぎこまれたらたまんねぇしな。ノアちゃんは俺が護衛してやるよ」

「ラウル……」

「まぁ、ノアちゃんは本当はハヤトに守ってほしいだろうけどな? そこは勘弁してくれよ?」

「も、もう! ラウルさん!! 何言ってるんですかっ!!!!」


 二人とも……。


「でも――」

「ハヤト、ここは『ありがとう』だろ?」


 ラウルはそう言って親指を当ててニカッて笑う。

 だから、似合わないっての。

 でも……。


「……ありがとう、二人とも」

「へへ、良いって事よ」

「……でも、ラウルにかっこいい言葉は似合わないな」

「うるさい! ほっとけ!」


サラはノアとラウルの行動に信じられないと目を見開いている。俺も二人の行動には信じられない気持ちだ。俺の勝手な行動に同意してくれるなんて。俺は素直に言えないけどラウルとノアには感謝している。こんな俺の心配してくれたり俺の勝手な行動に付き合ってくれたり……。もっと早く出会っていたらこういう仲間達とギルドを組んだりしたら楽しかったかもしれないな。でも、今の俺にはそんな資格はない。


「と言う事で私も行きます、フライヤさん」


 俺とラウルのやりとりを見て笑っていたノアは、フライヤさんに向き直って真剣な顔で伝える。

 すると、その様子に慌てて続いてラウルも「そういう事だ。俺も行くぜ」とフライヤさんに告げる。


「そうですか……困った人たちだ。好きにしてください」


 口では冷たく言うフライヤさんだったけど、口元では笑みを浮かべていた。

 フライヤさん……迷惑かけます。


「よし、じゃあ行こう!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ