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次の街へ

「これより我々はレイクシティへ向け出発する!」


 レッドシティで行われた会議で俺達のチームは次の街……拠点を得る為、『聖なる夜明け』のメンバーを中心に遠征隊を組み次の街『レイクシティ』を目指す。

 レイクシティはレッドシティから北西へ二日程の距離で湖の傍にあり、景色が綺麗でバージョンアップ前から人気の街だった。

 会議では本当に相手チームのプレイヤーを全滅させる……つまり本当に人殺しをするのかも議論の焦点になったが、とりあえずは向こうのチームの思惑も分からないまま、ずっとここに留まっているのは危険との結論に至った。

 しかし、最終的な問題は先送りにされ、向こうがどう動いても良いように、こちらも体制を整え相手に対応できるようにするといった方針になった。


「私は名前はユーリ! よろしくね! ハヤト君!」

「あぁ、俺はハヤト。よろしく」


 あのバージョンアップの時間が早かった為か、俺みたいなWOFに入り浸っていたヘビーユーザーは多くなく、レベルもそこそこなプレイヤーが多い。

 今考えるとあのアップデートの時間にも何か意味があったのかもしれない。

 プレイヤーの多くが標準的なレベルの為、街の治安維持と遠征隊に分けると人手が足りない。

 しかし、レベルの高いプレイヤーでも少人数でモンスターハウスのような罠にひっかかり、モンスターに囲まれると死ぬ事もある。

 なので、この遠征隊にも数を考慮し、レベルが安全圏に達しているプレイヤー以外も遠征隊に加わっている。

 その為、今回は基本的にレベルの高いプレイヤーと低いプレイヤーで組んでいる。

 俺のペアはこのユーリって子だ。

 背は少し低めで髪はダークブラウンのストレート。

 年齢はおそらく同じくらいで、同じ戦士タイプのプレイヤーで使用している武器はショートダガーだ。

 ちなみに俺は両手剣を使用している。


 本来であれば人とあまり関わりたくないが、俺はレベルが高い事からフライヤさんに頼まれ、今回の遠征に加わった。

 断ろうかと思ったけど、また多くのプレイヤーが死ぬのは嫌だし、出来るなら誰にも死んでほしくない。

 あの魔物の大量発生した時もこれくらいのレベルのプレイヤーが多く死んだ。

 だから、あの悲劇を繰り返さない為にも俺の力があれば被害を少なく出来ると言われ、不本意ながらこの遠征隊に加わっている。


「魔法使い達は中央へ! その他の者は最初に言った通り二人一組でペアを組み魔法使い達を護衛するように!」


 このWOFは初期設定で、魔法使いタイプか戦士タイプを選ぶ事になっていて後で変更する事はできない。

 魔法使いタイプはHPや攻撃力、防御力が低い代わりに魔法が使え遠距離攻撃が出来る。

 戦士タイプはその逆でHPや攻撃力、防御力が高い代わりに魔法を使用する事が出来ない為、どうしても近接戦闘になる。

 その為、クエストを攻略する時などは戦士タイプと魔法使いタイプのプレイヤーとでバランス良くレイドを組むのがセオリーとなっている。


 俺はこのWOFで本当の戦闘を体験してみたくて戦士タイプを選んだ。

 ……でも、まさか本当の戦闘を経験する事になるとは夢にも思わなかったが。


「あ、あの……」


 呼びかけられる声がして後ろを見ると、そこには見覚えのある顔があった。


「君は……」

「あの時はありがとうございました!」


 そう言って頭を下げる女の子。

 そこにはいたのは、前に男に絡まれていた明るい茶髪のツインテールの女の子だった。

 でも、前と違いローブ姿ではなく、青を基調として黒いラインの入ったコート型の戦闘時に魔法使いが着る魔法服と呼ばれる物を着ている。

 前に見た時とだいぶ印象が違うな……。


「君も遠征隊に加わるか?」

「はい! 今回の遠征隊に加わっています。実は私こう見えて――」

「では、出発!!」


 遠征隊のリーダー、フライヤさんの掛け声でみんなが歩き出す。


「なんだって?」

「あっ、いえ、あっ! 私の名前はノアって言います! 今回の遠征よろしくお願いします!」


 そう言ってノアは走って魔法使いの集団へと戻って行った。

 ノアか……あの子を死なせない為にも気を引き締めて行かないとな。

 俺は前の出来事を思い出し、自分で自分の行動を悔いる事で気持ちを引き締めて歩き出した。



――――――



「ねぇねぇ! 出発前に声かけてきてた魔法使いってハヤト君の彼女!?」


 俺達はレイクシティへ向かうため、道中にある森林へと足を踏み入れる。

歩いている時なにやら俺の様子を窺っていたペアのユーリが、森林に足を踏み入れた瞬間につまらない事を言ってくる。

 彼女だ? ……俺は誰とも深く関わりたくないといのに。

 この世界で彼女なんて出来たっていつ死ぬか分からない。

 そんな世界で大切な人を作るなんてのはお互いにとって心配事、不安事を増やす意味でしかない。


「違うよ」

「本当!? じゃあ私が立候補しようかな~?」

「えっ?」

「冗談だよ! でもハヤト君はかっこいいし強いって聞くし本気になっちゃうかも!」

「……何言ってんだよ」


 何なんだ急に!?

 いきなりで不覚にもちょっと動揺してしまった自分に悔いる。


「あっ! 今ちょっと真に受けてニヤってしたでしょ!?」

「し、してないって!」

「焦ってる焦ってる♪」


 なんかこのユーリって子といるとペースが乱されるな。

 でもこうやって冗談なやり取りしたのっていつ以来だろう……。


「ふっ、ユーリには参るよ」

「あっ、やっと笑ったね? ハヤト君はそうやって笑った方が良いよ! その方がモテるぞ?」

「はいはいありがとうさん」

「あっ! もう慣れた!? ハヤト君適応力ありすぎぃ~~!!」

「そうりゃそうだ! この世界で生きていかないといけないんだからな! ……ユーリ気をつけろ」

「えっ?」


 俺は周囲を見渡す。

 ……どうやら俺達は囲まれたらしい。



「どこから湧いてきたの? このモンスター……」


 俺たちは狼型のモンスターに囲まれていた。

 狼の数はおよそ30体。

 それに対して俺達は戦士タイプのプレイヤーが30人、魔法使いタイプが12人と落ち着いて戦えば俺達の敵じゃない。


「みんな落ち着け! 我々がいつもの力を出して協力すれば問題ない! いつものように戦うぞ! まずは遠距離攻撃だ! 魔法の用意! 他のものはモンスターを近づけるな!!」


 フライヤさんが辺りを見渡しながらみんなに指示を出す。

 最初は動揺していたプレイヤー達だったが、フレイアさんの言葉に落ち着きを取り戻す。

 そして、魔法使い達の詠唱が始まった。

 詠唱の方へ視線を向けるとノアも詠唱をしている。

 どうやらこの前と違って落ち着いているようだな。


「いいかユーリ、無茶はするな。何かあったら退け」

「ハヤト君、心配してくれてるの? うれしい~!」

「バカ! これは遊びじゃないんだぞ!?」

「分かってるよ! よろしくね、ハヤト君?」


 その時だった。

 狼型のモンスターが咆哮を上げると一斉にこちらへと向かってくる。

 俺はいち早く前に出て剣を振るう。

 俺のレベルが高いせいもあって一撃で狼型のモンスターのHPゲージが無くなり、肉を絶つ感触とともに狼型モンスターが光の粒子となって消えていく。

 でも、まだだ!

 まだ、モンスターは多くいる。一刻も早くこいつらを倒さないと……。


「うぉぉぉおおおおお!!!」


 俺は一心不乱に剣を振るう。

 誰も……誰も死なせない!!


 モンスターを倒しながら周囲の様子を見ると、ユーリ達レベルの高くないプレイヤーも、一撃で倒すには至らないまでも危なげなく戦っている。

 このままなら……。

 俺は視線を前に戻し目の前のモンスターを倒していく。


「きゃあ!!」


 すると背後でユーリに悲鳴が聞こえた。

 振り返るとユーリのショートダガーが地面に落ちている。

 モンスターに弾かれたのか!?


「ユーリ!!」


 俺は叫んで駆け寄るがそれより先に狼型のモンスターがユーリに飛びかかる。

 ダメだ、間に合わない!!


「ーー……ファイヤーランス!!」


 どこからともなく炎の矢が現れ狼型のモンスターへと命中し、ユーリに襲い掛かろうとした狼型のモンスターは光の粒子となって消滅した。


「良かった……」


 俺は安堵し炎の矢が飛んできた方向へと視線を送る。

 すると、そこには胸に手を当て同じく安堵しているノアの姿があった。

 そして、次から次へと他のプレイヤーからも魔法が放たれ狼型のモンスターを倒していく。その中、俺はユーリに近づくもう一体の狼型のモンスターに向かい倒す。


「今だ!! 全員畳みかけろ!!」


 フライヤさんの言葉にユーリの安全を確認した俺も戦列へ復帰し狼型のモンスターの集団の中へ飛び込んでいく。

 後ろを見るとユーリもショートダガーを手に取り戦列へ復帰していた。


 この調子なら大丈夫そうだ。

 

 俺はモンスターの集団の中、ひたすら剣を振るいながら狼型のモンスターを倒していく。

 他のプレイヤーも緊張が取れたのか動きが良くなり、次々とモンスターを撃破していく。


 そしてその後、俺たちはうまく連携し一人の死者も出すことなく狼型のモンスターを全滅させ戦闘を終える事が出来た。


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