PKプレイヤーの襲撃
PKプレイヤー……? まさか!?
「どうした!? 何があった!?」
俺は走りながら助けを呼ぶプレイヤに声をかける。見るとそのプレイヤーのHPゲージは半分を切っていて戦闘の跡が見え俺の胸の中がざわつく。
「ギルドのメンバーでレベル上げに行こうとしたら街を出て森に入ったところでプレイヤーに襲われたんだ!! このままじゃ仲間が!!」
くそ! なんで同じプレイヤーを殺せるんだ!?
「おい! 仲間は何人いる!? ギルド名は!?」
「な、仲間は二十人だ! ギルド名は『太陽の導き』だ!」
太陽の導き? 聞いた事ないな?
「太陽の導きは中堅クラスのギルドです。最近、人数も増え始めプレイヤーのレベルの底上げもされフライヤさんも今後に期待していたギルドです!」
いつの間にか俺の後ろに立っていたノアが教えてくれる。
それにしてもノアが言う通りフライヤさんも期待しているという事は実力もそこそこあるのだろうギルドがPKプレイヤーの襲撃とはいえ二十人のメンバーを揃えていて言え助けを求めるぐらいやられているというのは……もしかして漆黒の執行者か? あの中にはクライドといった強者やそのクライドにリーダーと呼ばれる得体の知れない黒いローブの男がいる。
あいつらがいるとしたら中堅ギルドと言えど太刀打ちできないかもしれない。聞いた話だけでは漆黒の執行者かどうかは分からないけど、どちらにしてもこのままほっとく訳には行かない!
「どこの森で襲われた!?」
「仲間を助けてくれるのか!?」
「あぁ! だから場所を教えろ!!」
もしそのPKしている奴らが漆黒の執行者だとしたらあのクライドがいる。
懺悔の涙で何度も剣を交えた俺だから分かる。あいつは強い。
それこそこのWOFにいるトップレベルのプレイヤーだろう。
さらにあいつの持つ剣はきっとレア物だ。
そこらのプレイヤーが敵う相手ではない。
かくいう俺も懺悔の涙の時は勝つ事が出来なかったけど今の俺には愛剣であるエアリアルがある。
それでもまだ勝てるかはわからないけど、前よりも戦えるはずだ。
「早く!!」
「あ、あぁ! このフォルクラインを出た西側の森だ!」
「分かった!」
俺は男から襲われた場所を聞くとウインドウを開き、コマンドを操作する。
急がないと……一刻を争う!
「ハヤト君無茶です! 相手は何人いるか分からないんですよ!?」
俺が助けに行くと聞いてノアは俺を止めようとする。
「でも時間がない! ぐずぐずしてたら全滅するかもしれない! 今なら間に合うかもしれない!」
俺はそう言葉を口にしながら戦闘服である黒を基調に赤のラインの入ったロングコートと愛剣エアリアルを背に装備する。
「ハヤト君……じゃあ私も!」
「ダメだ!! 相手は何人いるか分からないし魔法使いのノアじゃ分が悪い!」
向こうは何人いるか分からないしその中にはクライドとあの黒いローブの男もいるかもしれない。もしそいつらがいて大勢のPKプレイヤーがいた場合、クライド達と戦いながらノアの事を守れる保証はない。
「でも――」
「大丈夫! だからノアはフライヤさんに言って応援を呼んできてくれ! 俺の戦いを知っているだろ? 誰にも触れられないさ」
ノア……君まで危険な目にあわす事はできない。
俺はノアを安心させるように微笑んで言葉を口にする。
「……分かりました。 でも絶対無茶しないでください! すぐに応援呼んで来ますから! もしハヤト君になにかあったら私――……」
「大丈夫。死にはしないさ。俺はまだ死ねないから」
そう。俺はまだ死ぬわけにはいかない。
俺はこのゲームを終わらせなければならないんだ。
だから、こんなところで死ぬわけにはいかない。
「じゃあ先に行く!」
俺はノアにそう声をかけると男が言った場所へ向かうべく走り出した。
――――
男の言った街の西側の森へ入り走っているとしばらくして剣がぶつかり合う音や悲鳴、魔法による爆発か 何かの音が聞こえてくる。
近い……。
俺は警戒しながらもスピードは落とさず音のする方へ向かう。
頼む……間に合ってくれ……。
すると、段々と音が大きくなってきて、戦場となっている場所が見えてきた。
そして、武器を手放し地面に尻をつけながら前から複数のプレイヤーに追い込まれ後ずさりしているプレイヤーの姿が目に飛び込んできた。
ヤバイ!! 俺は背に背負っているエアリアルの柄に手をかけながらスピードを加速させ男を助けるべく飛び込んだ!
「何をやってるんだ! やめろ!!」
俺は追いやられているプレイヤーの前に入って叫ぶ。
プレイヤー達は突如現れた俺に一瞬びっくりしたようだけど、すぐさま自分達の方が数が多く有利だと思ったらしく、また獲物が増えたと言わんばかりに下卑な微笑みを浮かべる。
「へへへ、そんな事言われて『はい、やめます』なんて言う奴いると思うか? そんなんだったら最初からしてねーっての!」
「そうだそうだ! だいたいおまえは何なんだ? わざわざやられに来たのか?」
「へへ、間違いねぇ! 飛んで火にいる夏の虫ってか?」
俺を囲むプライヤーはそう言って自分らが捕食者だと言わんばかりに高らかに声を上げる。
ちっ、やっぱり通じないか……。でもどうする? こいつらを殺すのか……?
PKプレイヤーとはいえ同じ人間だ。懺悔の涙の時は必死だったけど、人を殺すというのはやはり俺の中で躊躇う部分がある。
「おい! やっちまうぞ!!」
俺が心の中で悩んでいるとPKプレイヤーは仲間に声をかけ襲ってきた。
くそ! やるしかない!!
俺は剣を振り下ろしてくるプレイヤーの剣を掻い潜り、それと同時に剣を振るう。
そして俺の手に前に感じた嫌な感触が伝わる。
「そんなバカな……」
俺の攻撃を受けたプレイヤーは剣を落とし攻撃を食らったわき腹を支え座り込む。
しかし、幸いな事にHPゲージは消滅せず三分の一くらいを削ったところで止まっているけど、受けた攻撃の痛みと衝撃で動けないようだ。
これならほっといても大丈夫だろう。
本来ならとどめをさした方がいいのかもしれない。
でも俺はまだ人を殺す事に躊躇いがあった。
それに目の前のプレイヤーは決してレベルが高いとは言えないしせいぜい中の下くらいだ。誰かにそそのかされてPKプレイヤーになったのかもしれない。だからこれで目を覚ましてくれれば……。
俺がやっている事は甘いかもしれないし、いつかはそんな事を言っていられない日がくるかもしれない……でも今はまだ……。
「さぁ次はどいつだ?」
俺はあえて自分から攻撃する事無く挑発する。
今の俺の攻撃を見れば敵わないと分かるはずだ。そう感じて引いてくれるならこちらもありがたい。
それに特別強くないこいつらが首謀者じゃないだろう。
きっとどこかに今回の首謀者がいるはず……。
「さぁ、どうする?」
「ひ、ひぃ~! 化け物だ!」
そう言って残ったプレイヤーは逃げていく。
そしてそれを追うように俺の攻撃を受けた男がよたよたしながら歩いて去って行く。
さて、あいつらの後を追うか。
でも、それより先に……。
「大丈夫か?」
俺はPKプレイヤーに襲われていた男に声をかける。
そして、俺が声かけると男はハッとなって立ち上がる。
「あぁ、大丈夫だ」
そういう男に俺はウインドウを表示させ、コマンドを操作しポーションを具現化させ男に投げた。
男は一瞬驚いた顔をしたけど、俺の投げたポーションを受け取り「助かる」と言って飲んだ。
「他の仲間は?」
「……分からない。途中から入り乱れていたから……」
「そうか……なら俺が様子を見てくる。おまえは帰って援軍を呼んできてくれ。今フライヤさんが準備しているはずだ」
「いや待て! 一人でなんて危険だぞ!?」
「大丈夫、俺にはこれがある」
俺はそう言って神剣エアリアルを振るう。
そして、エアリアルは斬撃の後に黄緑色の軌跡を残す。
「それは――っ!? あんたまさか神速のハヤト!?」
「あぁ、だから心配しないでおまえは戻ってフライヤさん達を誘導してきてくれ」
「……分かった。でも気をつけろ。向こうには一人ずば抜けて強いプレイヤーがいる」
ずば抜けて強いプレイヤー? ……まさかクライドか?
「……あぁ、分かった。気を付けるよ。じゃあ俺は行く。おまえも気をつけろ」
俺は男が頷くのを確認するとPKプレイヤー達が去った方を向いて駆け出した。




