託された願い 背負う想い
「ここは……?」
意識が徐々に戻ってくる。
『また、ループしたのか?』
一瞬そんな考えが頭をよぎったが、それは違うと感じる。
いつものように悲鳴も聞こえないし、何より目を開けた先、俺の視界には木の天井が見える。
どうやら俺はどこか寝かせられているようだ。
「ハヤト君っ!? 良かった……」
俺が自分の置かれている状況を把握しようとしていると、聞きなれた声が耳に入ってくる。
この声は……。
「……ノア」
俺はゆっくりと上体を起こす。
身体は少し重く感じるがどこかに痛みがある訳でもなく、動かないといった事はない。俺は上体を起こし声のする方へ視線を動かすとそこには目に涙を溜めているノアの姿があった。
どうしたんだ? なんで泣いている……?
「良かった……本当に良かった……」
ノアは声を震わせながら目から涙を流している。
もしかして俺の心配をしててくれたのか?
「おっ! 目が覚めたか!!」
その時、部屋のドアが開き、またも聞いた事のある声がした。そして声の聞こえてきた方を向くと茶髪の短髪、俺より少し背が高くい男が茶色い袋を持って立っていた。
「ラウル……」
「やっとお目覚めだな!! 気分はどうだ?」
やっとお目覚め? あぁ、そうか。俺は懺悔の涙を使用して夢……かはどうかは分からないけど、あの時を繰り返している間にこっちでも時間が進んでいたのか。
「あぁ、大丈夫。……ラウル、俺はあの後どうなった?」
俺の記憶はあの懺悔の涙を使用してからない。ないというかあの時を繰り返している時の記憶しかないのだ。
「ん? あぁ、おまえがあの懺悔の涙を使用した後、意識を失って倒れたんだよ。今まで三日間寝込んでいたんだ。最初はアイテムトラップか何かかと思ったけど、状態異常やHPゲージは減ってなかった。だから、とりあえずお前を背負って街まで戻って来て様子を見てたって訳だ! 感謝しろよ?」
やっぱり俺は意識を失っていただけで身体はこっちの世界に残っていたのか。
という事はユーリのいう通り、夢か何かそれに近いものだったのかもしれないな。
でも三日間も寝込んでいたのか。……でもあの時を何度もやり直していたからそれくらいこっちで時間が経ってても不思議じゃないか。
それにしてもラウル、その笑顔は似合わないな。
でも、確かにここまで運んでくれたのは迷惑をかけたな。
「あぁ、感謝しているよ。ありがとう」
「げっ!? やけに素直じゃねぇか!? もしかして、懺悔の涙の効果か!?」
懺悔の涙の効果……そう言われると違うと思うけど、確かにあのアイテムで俺は ユーリの件に関して一区切り打てたと思う。だから、そう言われればそうかもしれないな。
「まぁそんなところかな」
「……そっか! まぁ何があったかは聞かねぇが良い顔するようになったし良しとするか! ……あっ、お嬢ちゃんにもちゃんと礼を言えよ? おまえの事を心配してずっと付き添ってたんだからよ!」
「ちょ、ちょっとラウルさん!?」
そっか。
ノアは俺の事を心配してくれていたのか。あれだけそっけなく接してたのに……。俺は誰にも関わらずにいたつもりだったけど、ユーリが言っていたみたいに俺の事を心配してくれている人がいたんだ……。
「ノア、ありがとう」
「あわわ!! そ、そんな感謝される程じゃ……だって誰かが倒れたら心配するでしょう!?」
「ははは! 照れるなってお嬢ちゃん! そうだ! ハヤト、おまえ今度ノアちゃんに何か奢ってやれよ!」
「ちょ、ちょっとラウルさん!!」
いや、だからラウルがウインクするのは似合わないだろう。
でも、確かにノアにはなんだかんだで迷惑かけたしな。俺がユーリの事で落ち込んでいる時にサンドイッチ差し入れしてくれたり、声かけてくれたり……時の神との戦いの時だって俺になんの躊躇もなくエリクサーをくれたし。それにユーリともちゃんと人と関わるって約束したしな。
「……そうだな。いろいろ世話になったし心配もかけたからな。今度奢るよ」
「えっ……? えぇ~~!?」
俺の返答が予想外だったのかノアは驚きあたふたして「ラウルさんっ!!」とか言ってラウルをポカポカと叩いている。
それにしても本当にノアは戦闘中と雰囲気が変わるよな。
「ん?」
俺は二人のやりとりを見ながら何気に懺悔の涙による影響がないか確認しようとウインドウを操作したところ『称号』の欄に『!』がついている。
何か俺は称号を手に入れたようだ。でも、何が……?
俺はウインドウを操作して称号を開く。
「これは……!?」
俺が見た称号の欄には、
『過去を乗り越えし者:過去を乗り越え未来へ踏み出した者の称号』
『称号による効果:HPゲージが0になっても一度だけHPゲージが1まで回復する』
と表記されていた。
過去を乗り越えし者……そしてこの効果……。
失敗して死んでも生き返りそれを乗り越えもう一度挑めって事か……ちょうどいい。このゲームを終わらせる……ユーリとの約束を守る為には打ってつけだ。
……それとも、もしかしたらこの効果はユーリが見守ってくれているおかげなのかもしれない……そう思う方がこの先、身が引き締まるな。
俺はそんな事を考えながらノアとラウルのやりとりを眺めていた。




