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見抜かれた行動

 あれから何度同じ場面を繰り返しただろう。

 ユーリが熊型のモンスターに吹き飛ばされる直前からレイクシティまでの時間を俺は何度も繰り返している。

 ユーリの飛ばされる方向、熊型のモンスターの動きを把握しPKプレイヤー達への対処……どれもが回を重ねる毎に早く上手くできるようになった。

 ただ、どうやってもこの時点での俺ではPKプレイヤーのクライドを倒すことはできず、PKギルド『漆黒の執行者』のリーダーである黒いローブの男の元へはたどり着けない。そしていつもあいつらを逃してしまう。

 遠征隊の犠牲者も0には出来ないが最初に比べたらだいぶ減ったと思う。

 そして毎回ユーリを助ける事は出来る。それでも俺はこのループから抜け出せない。

 そして、毎回レイクシティに辿り着いて眠るとまた最初から繰り返しだ。なぜだ? ユーリを助ける事も出来たし犠牲者を減らす事も出来た。それなのに……。

ユーリが死ぬ原因となったあの『漆黒の執行者』の奴らを倒さないといけないのか? それとも犠牲者を0にしないといけない? 何が足りない……いったい何が……。


 俺は今、レイクシティに辿り着きユーリの作ってくれる料理を食べ終わったところだ。そして、毎回のように黒のロンTにデニムといった恰好で過ごしているのに対してユーリもまたいつもと同じように髪を後ろでくくり、上は白に黒いボーダーの入った首元のゆったりとしたセーターにデニムといった服装でその上から白いエプロンをしている。そんな恰好で毎回「美味しかった?」と覗き込むような格好で聞かれる訳だけど、こればっかりは何度繰り返しても慣れる事はなく、首元から胸元が見えそうで毎回どこに視線を向けていいか分からず、今回も俺はそっと横を向きながら「美味しかった」と答えた。


「良かった!」


 そう言って笑顔になるユーリ。

 毎回この笑顔を見る度に安堵する自分と今回もまたこの後ループするのかと不安に思う自分がいる。今回もユーリを救う事が出来たし遠征隊の犠牲者も少なくなった。それでも今回もこのループから抜けられるか分からない……。どうやったらユーリとこのまま先へ進めるのか……。

 

「……ハヤト君」

「ん?」


 笑顔になったかと思うとユーリは真剣な表情になった。

 いつもの事だけど今回はなんかちょっと違うような……?


「あのね、私今日ハヤト君が助けに来てくれて嬉しかった。あの熊型のモンスターの攻撃を受けた時はもうダメかと思った……その時ハヤト君が助けに来てくれて嬉しかったよ。――でも、ハヤト君は何か隠し事してるよね?」

「――っ!?」


 なんだ!? いつもと展開が違う!?


「最初私がモンスターに飛ばされた時もそこに来るのが分かっていたみたいだし、ハヤト君はたまたまって言っていたけど、他にもPKプレイヤーの襲撃とかモンスターの動き、どこが危険ってのを予め分かっていたみたいに素早い行動をしていた。他の遠征隊のメンバーも不思議に思ったりハヤト君がPKプレイヤーと繋がっているのかと思う人もいたけど、それじゃあそこまで鬼気迫る感じで自分たちを助ける意味はないって……。私もハヤト君がPKプレイヤーと繋がっているなんて思わないし、ハヤト君が全力でみんなを助けようとしていたのを見ている。 ……ねぇハヤト君? ハヤト君は何を隠しているの? 何を背負っているの?」

「……」


 ……そんなの言える訳がない。


『俺は未来からやってきて同じ時間をループしている』

『ユーリは俺がいた未来では死んでいる』


 なんて言える訳がないし、言っても信じてもらえる訳がない。


「……私はハヤト君の言う事信じるよ? 例え私が殺されるって言われても」

「そんな!! そうさせない為に――っ!?」


 俺は自分が失言してしまったと気づいてあわてて視線を反らす。

 しまった……ついユーリの『殺される』って言葉に反応してしまった。


「……そっか。やっぱり私死ぬんだね」

「そ、そんな事ない!」

「……私聞いちゃったんだ。ハヤト君が私を抱きかかえながらノアちゃんの元へ運んでくれている時、ハヤト君が『ユーリが殺される事はなくなった。でも……』『今回こそ漆黒の執行者を倒さないと』『ユーリを救う以外に何が……』って言っているところ」

「――っ!?」


 俺は反らしていた視線をユーリの方へ戻す。

 俺そんな事言っていたのか!? ……いや、あり得る。何回も繰り返すうちに、ユーリを救うのはもう自然と身体がその動きを覚えていて行動していた。俺はその間にどうやってこのループを抜け出すのか、足りない何かを達成するために考えられる要素を考えていたから。そして一番の要素が『漆黒の執行者』というギルドだと思ったし、それ以外に何があるか考えていた。


「なんとなくだけど、それを聞いてからハヤト君の様子を見ていると、ハヤト君は何かを回避する為に行動している……そんな気がしていたんだ。ハヤト君は私がモンスターに飛ばされた時にすぐにポーションをくれた。だから、私のHPゲージは回復して動けないと言ってもそこに置いておいてくれても大丈夫のはずだった。……でも、そうはせずにノアちゃんのところまで連れて行ってくれた。それは私のいた場所にPKプレイヤーが現れるって知っていたからだよね?」

「……」


 俺は否定も肯定もせず無言を貫く。

 ダメだ……何の言葉も言えない……。


「やっぱり……。ハヤト君は何らかの方法で私たちに起きる出来事を知っている。そしてハヤト君はそのハヤト君が知っているような事にならないように動いていた。ハヤト君が阻止しようとしている事……それは私の事……そうなんでしょ?」


 ユーリは俺の無言を『イエス』と捉えてまっすぐ俺の目を見てくる。

 どうする? 今回も『漆黒の執行者』を取り逃したしめぼしい変化は出せなかった。このまま逃げ出して時間がたったらループするはずだから逃げてやり直すか……? でも今回もループするなんて保証はないし、もしループしなかった場合、ユーリはずっと俺の事気にして生きて行く事になる……どうする?


「ハヤト君? 私はどんな話でも……私がこれから死ぬって言われても……ハヤト君が言う事なら信じるし受け入れる。 ……でも、ハヤト君に嘘をつかれるくらいなら……私のせいで……私を助けてくれたハヤト君が苦しむなら……私は自分で死ぬ道を選ぶ」

「――っ!?」

「私はハヤト君に助けられた。 今の私があるのはハヤト君のおかげ。それなのに私のせいでハヤト君が何かを隠して辛い思いをしているなら……私は生きているのが辛い。それなら私が死ぬからハヤト君は何も抱えないで生きて」

「そんな!! 死ぬなんて簡単に言うな!! 俺はユーリが死んでから――っ!?」


 しまった!? ユーリの死ぬって言葉に反応してつい口が……。


「……ねぇ、何があったか教えて?」


 ユーリは真剣な眼差しで俺の目を見ている。

 その目は覚悟を決めた意思を感じる事ができ、何が何でも俺から話を聞くといった決意を感じさせる。

 ……ダメだ。もう誤魔化せない……。


「……ユーリ、俺が話すことを信じてくれるか?」

「うん、信じる」


 俺が話したとしてもループしたらユーリはまた何も知らない状態になる。

 だから、次に会う時はユーリは自分が死ぬ運命だったなんて知らないだろう。

 でも、本人を目の前にして『死ぬ運命だった』なんて言うのは気が引ける。出来るなら伝えたくないけど今のユーリは絶対納得しないだろう。それどころかもし本当に自ら命を絶った時にループから抜け出せばまた俺はユーリを助ける事が出来なくて終わってしまう。

 それなら、ここは正直に話して次のループがあるならやり直す、ループが終わるならすべてを知ったユーリにこれからも謝り続けて行くしかない。


 考えを一巡した俺は一度大きく空気を吸って吐いた。


「ユーリ、驚かないで聞いて欲しい。実は……」


 俺は真剣な目を向ける彼女に答えるように、ありのままを話し始めた。


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