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漆黒の執行者

 意識が覚醒し光が晴れたかと思うと、見た事ある光景が目に入ってきた。

 それは熊型のモンスターの後ろからバトルアックスの男が加勢するが、モンスターがユーリを狙っていたかと思ったら急に標的を変え、不意をついた一撃で男は吹き飛ばされると言った場面だ。

 これは……本当に時が戻ったのか?


 俺が思案している間に熊型のモンスターは右、左とユーリに向かって熊型モンスターは攻撃を繰り出すが、ユーリはショートダガー使いである利点のスピードを生かしてそれを躱してはショートダガーで切り付ける。


 やっぱりあの時に戻っている!?


 そう確信した俺は衝撃を受けていた身体に信号を送る。

 早く……早く動くんだ俺の身体っ!! 俺は絶対ユーリを助けると決めただろ!!


 俺は以前よりも早く痛む身体を無理矢理動かして立ち上がり、急ぎコマンドを操作しにポーションを具現化させ口にする。そして、熊型のモンスターの攻撃がユーリを捉える。


「きゃあ!!」

「ユーリィィィイイイイッ!!!」


 俺はポーションにより回復したのと絶対ユーリを助けるという思いで身体を活動させ、記憶を頼りにユーリが飛ばされる方へと先回りしてユーリを抱きとめる。

 

「大丈夫かユーリ!!」

「だ、だいじょう……ぶ。ちょ……っと油断し……ちゃった。」

「喋らなくていい!! 早くポーションを!!」


 俺はすぐさまコマンドを操作しアイテムBOXからポーションを取り出し「さあ早く飲んで」と言ってユーリの口に当て飲ます。


「よく……飛ばされる……方向……分かったね」


 まさか、未来からやってきたなんて言えず俺はあいまいな笑顔で「なんとなく」と答えた。

 確か次は……。


「グォォォオオオオオ!!」


 背後から熊型のモンスターの咆哮が聞こえる。

 そうだ。これによってユーリはダメージの衝撃と咆哮に一時的に身体を硬直させ完全に動けなくなってしまうんだ。

 でも、ポーションによってHPゲージは回復しているの見て安心して……。


「ユーリ! 我慢しろ!!」

「えっ!? ハヤト君っ!?」

 

 俺はユーリを抱きかかえ魔法使い達の元へ向かう。

 ユーリは顔を赤くしながら「大丈夫だから置いて行って」と言っているけど大丈夫じゃないと知っている俺は降ろさずにそのまま走る。


「ノア!!」

「えっ!? はい!?」


 俺に突如呼ばれたノアは戦いの最中で真剣だった表情が崩れいつか見たようなあたふたした表情になる。


「ユーリを頼む! それから熊型のモンスター以外にも警戒してくれ!!」

「えっ!? あっ、はい!!」


 一瞬混乱した様子だったノアだが、戦闘中は人が変わるのだろうか、すぐさま真剣な表情へと戻った。

 よし、大丈夫そうだ。ノアもきっと大丈夫だろう。

 少し過去と違う行動を取ったとはいえ、ノアは以前も生き残っているし何よりノアは実力者だ。きっと俺の言葉から周囲も警戒してくれるだろうしPKプレイヤーの動きも分かるはず。


 ユーリをノアに預けた俺は熊型のモンスターへと走る。

 武器は前の時に戻っているので愛剣であるエアリアルは手元にない。

 でも、この剣でもあの熊型のモンスターには通用したし大丈夫。

 ユーリの危機は一応今のところは回避した。

 次は一人でも多くのプレイヤーを助ける!!


 熊型のモンスターとの距離が近づくと俺を認識したのか赤く光る眼で俺を見据える。


「お前の相手は俺だぁぁぁあああああ!!」


 俺は以前と同じように声を出して熊型のモンスターへと駆け寄り肉薄する。

 そして、一撃に二撃と剣を振るう。

 速く……もっと速く!!


 相手はボス級とはいかないまでも普通のモンスターとは一線を画す強さを持っている為、一筋縄ではいかないが、俺もこの世界で経験を積んだ。

 ゲームとは違う生死を分ける戦闘を繰り返した事で感覚は以前より研ぎ澄まされている。

 レベルや武器は以前に戻ったが、それでも経験や気持ちの面では俺はもう以前の俺じゃない。


「うぉぉおおおお!!!!!」


 俺は相手の攻撃を見切り躱しながら剣を振るい、ダメージを与え続ける。


 「っ!?」


 相手の攻撃を躱したかと思った瞬間に、その軌道が変化し上から下へと俺の方へと向かってくる。

 俺は咄嗟に以前は剣を盾にしたところをバックステップで躱す。

 すると、俺が避けたことを忌々しく思ったのか、熊型のモンスターはこっちを見て目を光らせる。


 その時だった。


「今だ!! かかれ!!」


 聞きなれない声と共に多くのプレイヤーが姿を現す。

 それぞれが武器を構え魔法使いは詠唱を始める。

 来たっ!


「PKプレイヤーだ!!」

「なにっ!? マズイ!! 気をつけろ!!」


 俺が叫ぶのに反応して、遠征隊のリーダーであるフライヤさんもそれに気づきみんなに気を付けるように指示を出す。


「へへへっ!! くらえ!!」


 姿を見せたプレイヤー達は、遠征隊に向けてプレイヤーに向かって攻撃を仕掛けえてきた。

 しかし、以前より少し早く状況を把握した遠征隊のプレイヤーは一方的にやられる事なく応戦する。もちろん、熊型のモンスターもまだ生きているからそれにも警戒しながら戦っている。俺もすぐさま行動に移し、PKプレイヤーと剣を交えながらある人物を探す。

 周りを見ると、対応していても警戒していても無傷という訳でもなく、犠牲者が出ていない訳じゃない。ノアの方を見ると魔法を連発して応戦していた。魔法の連発……何かのスキルか? 前は見てなかったから気づかなかったけど、あれだけの連発は普通に詠唱していたら出来ないぞ?


「うわぁぁあああ!!!」


 俺の意識を戦場に戻すようにプレイヤーの断末魔が響く。

 くそっ!! この無意味な戦闘を早く終わらせないと……。


 俺はノアの能力に安心してPKプレイヤーをかき分けながら周囲に目を配る。

 ……いたっ!!

 

 戦場となっている場所から少し離れた場所で戦場を見ている人物。

 おそらくあいつがPKプレイヤー達のリーダーだろう。

 思えば前の時、PKプレイヤーが一斉に退却した。という事はこの集団には誰か指示を出すリーダーがいるはずだ。それがおそらくあいつだろう。

 見た目は俺と同じくらいの背で黒いローブを着てフードを被っている。魔法使いだろうか? PKしていているという事は自分もうま味を得る為、戦闘に参加しているはず。あの距離からすれば魔法使いと見て間違いないだろう。だとしたら……いける!!


「うぉぉぉおおおおお!!!!」

 

 こいつを追い込めば退却するはず!!

 俺は一気にその人物へ駆ける。


「おっと、リーダーはやらせねぇよ!」


 俺の進路を阻むように少し長めの髪で茶髪の黒い鎧を身にまとった男が立ちふさがる。


「どけぇぇぇぇぇええええええ!!」

「行かせねぇって言ってんだろっ!!」



 俺はそのままの勢いで男に切りかかったが、男は素早い動きで剣を出し俺の剣を受け止めた。

 こいつ……できる!!


 俺は一撃剣を交えただけでこの男の実力が分かった。

 構えていない状態から無駄のない動きで剣を出し俺の攻撃を受け止め、そのうえまだ余裕のある表情をしている。……明らかにこいつは他のPkプレイヤーとは違う!!


「なかなかの一撃だな! これは楽しみがいがあるぜ!!」

「何が楽しみがいがあるだ!」


 俺と黒い鎧の男はそこから何度も剣を交えるが、お互いに決定的な一撃は与えられないでいた。


「お前たちは何者なんだ!!」

「へっ! 俺達はリーダーの方針に惹かれて集まっただけだ! それよりもっと楽しもうぜ?」


 男はそういうと一段とギアを上げたのかスピード、威力共に上げてきた。

 くそ! こいつ本当に……強い!!


「どうしたどうした!!」

「くっ!」


 あいつが並みのプレイヤーでないのに加えてあの剣もきっとレアな剣だな。

 さっきから斬撃がぶれて見えて対応が難しい。

 俺にもエアリアルがあれば……。

 

「……クライド退くぞ」


 俺と男の戦いを見ていた黒いローブのリーダーと呼ばれている男が言葉を発する。

 その声は決して大きくはないが俺達の戦いの中でも響き通る。

 この声は男か……? でもなんだ……こいつは……?


「ちょっと待ってくれ! リーダーーー」

「……退くぞ」

「……分かりました」

 

 リーダーと呼ばれる男は小さいながらも威厳のある声でクライドと呼ぶ黒い男を止める。

 あれだけの実力がある奴が素直に聞くなんて……。


「ちっ、助かったな!」


 クライドはそう言ってリーダーと呼ぶ黒いローブの男の元へと下がる。

 俺はそれを見て追撃することが出来なかった。

 なぜなら俺の直感があいつを危険だと認識したからだ。

 悔しいが今のままではあの黒いローブの男はおろかクライドってやつにも勝てないかもしれない。


 そして、黒いローブの男はクライドと一緒にここから去ろうとする。


「お前達は何者だ!!」

「……我らは『漆黒の執行者』 ……いずれまたどこかで会うだろう」


 そう言い残して黒いローブの男とクライドは去って行った。


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