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「なんだ……これ……」

「身体が……動かない……です」

「ノア……ラウル……」


 時の神が懐中時計を操作したかと思うと、次の瞬間には俺たち三人は身動きが出来ないようになっていた。

 まさか動きを封じられるとは……あの懐中時計にそんな効果が……。


 身体が麻痺しているとかそういうのではなく、辛うじて言葉を口に出来る以外身体を動かす事が出来ない。まるで身体が石にでもなったようだ。……というより、時間を止められているかのようだ。


「くっ……」


 身動きが取れない俺たちを嘲笑うかのように、時の神は赤い目を光らせながらゆっくりと俺たちに近付いてくる。

 くそ……こんな効果反則だろ……。


 時の神は俺たちからまだ距離があるところで立ち止まるとゆっくりと杖を上に掲げる。


「きゃぁぁぁあああああ!!!」

「ぐぁぁあああああ!!!」

「ぐぅぅあああ!!」


 次の瞬間、上から雷が降り注ぎ俺たちに命中する。

 それと同時に俺たちのHPゲージが減って行く。

 そして、さらに時の神は動けない俺たちにゆっくりと歩みより杖を振り上げたかと思うと思いっきり振りかざした。


「グハッ!!」

「グォッ!!」

「うっ!!」


 俺たちは三人とも吹き飛ばされる。

 やばい……このままじゃ……。


「ラウル! ノア! 回復したら時の神から距離を取れ!! あとは俺がなんとかする!!」


 懐中時計の効果が切れたのか身体に痺れはあるものの多少身体が動くようになった俺はウインドウを操作してアイテムからエリクサーを選択し具現化させる。

 今はアイテムをケチってる時間が勿体無い。

 俺は具現化させた小瓶に入っているエリクサーを一気飲みすると多少衝撃で動きにくい身体を無理矢理動かしエアリアルを構え時の神に対峙し駆け出す。


「ハヤト君!!」

「ハヤトーーッ!! 無茶するなぁあああ!!」


 後方からノアとラウルの声が聞こえる。この様子だと二人ともアイテムを使用したか何かで状態異常は回復したみたいだな。

 もし俺が失敗しても二人は生き残ってくれ……。


「うぉぉぉおおおおおおお!!!」


 俺はリキャストタイムにより単調な攻撃しか出来ない時の神に詰め寄ると相手の攻撃を避けながら剣を振るう。

 もっと速く……もっと……もっと!!!


 俺は呼吸する間も惜しんで、ただひたすら剣を振るう。

 そして、時の神のHPゲージは少しずつ削られていく。

 ノアとラウルは全速で動く俺のスピードに攻撃で援護するタイミングを掴む事が出来ずに様子を見守っているようだ。

 そうだ、二人はそのまま安全な位置にいてくれ!!


「さっさとくたばれぇぇええええ!!!」


 俺はさらにスピードを上げ剣を振るう。

 そして、その斬撃の跡が無数の黄緑色の軌跡を残し、俺の攻撃によって時の神HPゲージが減ってレッドゾーンに入っていくがこのままでは……。


 そう思った時、時の神は胸にある懐中時計に手をやった。

 来るーーっ!?


 その瞬間、俺は一か八かの賭けに出る。


「ライトニング・ストリーム!!」


 俺はスキルを発動させる。

 俺が発動させたスキルは高速で繰り出す十三連撃のソードスキルだ。

 このWOFが現実と同じようになったとはいえゲーム上のスキルや決まりは残っている。例えば街の中では同じチーム同士ではPK出来ないとかだ。

 すべてが現実と一緒になったとすれば敵も味方も場所も関係ない。それが残っているという事はゲーム上のルールも残っているという事だ。

 ゲームでは戦闘中にスキルが発動させればその相手に攻撃や魔法を当ててもHPゲージが減るだけで行動自体は止める事が出来ないしスキルを発動し続ける。

 そのルールがそのまま残っているとしたら……


「うぉぉおおお!!!」


 俺はスキルを発動させた事により、自分の意思とは関係なく身体が動く。しかし、スキルを発動した後は硬直時間がある為、隙が出来てしまう。その為リスクが高いけどこの時の神が持つ懐中時計の効果に対抗するにはこれしかない!!


 俺スキルによって生み出される動きは時の神の懐中時計によって発揮される身体の硬直時間の影響を受けずに身体は動き続ける。

 そして、スキルによる動きからエアリアルが振るわれその斬撃が黄緑色の軌跡を残していく。


『グォォォォォオオオオオ!!!』


 俺のスキルによる攻撃は着実に時の神に命中しHPゲージを削っていく。

 あと少しっ!!


 俺のスキルによる攻撃があと一撃というところで時の神のHPゲージも残りわずか。

 これでいけるかっ!?


 俺のスキル『ライトニング・ストリーム』による最後の一撃が時の神へと当たる。

 どうだ……?


 時の神は身動きせずに俺を見据える。

 くそっ! 足りなかったか!?


『グォォォォォオオオ!!!!!』


 そう思った次の瞬間、時の神は大きな声を上げながら光の粒子となって消えた。

 ……やったのか?


「ハヤトーーっ!! おまえ本当すげぇな!! 最後のスキルなんだよ!? あんな連撃のスキル見た事ねぇぞ!?」

「ハヤト君っ!! 大丈夫ですか!?」


 スキルを発動した事によって硬直時間が発生し身動き出来ない俺にノアとラウルが走り寄ってくる。

 良かった……どうやら倒せたようだ。


「ノア、ラウル……」


 二人が駆け着く時には俺の硬直時間も解け、戦闘態勢を解いて迎える。

 そして、二人が俺の元へと着くと同時にそれぞれに経験値と守護神を倒して出たアイテムが表示された。

 それからそれとは別にウインドウが開かれる。


『クエスト達成報酬 懺悔の涙 一個 取得するプレイヤーはウインドウをタッチしてください』


 クエストの報酬……懺悔の涙……。

 俺はノアとラウルに向き直る。


「これが欲しかったんだろ? おまえが取れよハヤト」

「ハヤト君……あの……ううん、なんでもないです。ハヤト君が使ってください」

「ラウル、ノア……」


 ラウルはニカッと笑っていたけど、ノアはどこか寂しそうな表情をしていた。でも、すぐさま笑顔に戻って俺に勧めてくれる。


「……二人ともありがとう」


 俺は二人の許可を得ると懺悔の涙と表示されているウインドウに右手を触れる。

 するとウインドウは光の粒子となって消える代わりに水の雫のような結晶が現れた。


「これが懺悔の涙……」


 俺はそれを両手で受け止めるとノアとラウルを見た。

 これを手に入れるのは俺一人では出来なかっただろう。それどころか俺は死んでいたと思う。だから、二人には感謝しても仕切れない。


「ノア……ラウル……二人とも本当にありがとう。俺は……俺は必ずユーリを救ってくる!!」

 

 二人は無言で頷いてくれる。

 二人とも本当にありがとう。この借りはいずれ……。

 俺は自分の手の中にある懺悔の涙へと視線を落とすと、懺悔の涙に触れウインドウを表示させ『使用する』を選択した。

 すると、俺は急に眩い光に包まれ意識が遠のいていく感覚に見舞われる。

 これで俺は過去に戻れるのか……必ず……必ずユーリを助けてみせる!!


 そう俺は心に決意し意識を手放した。

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