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救援

「ーー……ファイヤーボールっ!!」


 どこからともなく声が聞こえ、次の瞬間に時の神の杖を持っている手に火の玉が当たり、腕が衝撃で飛ばされる。そして、その衝撃で時の神の意識が俺ではなく、魔法が飛んできた方へと向けられる。

 誰だ……? 誰がここに……?


「ハヤトーーっ!!」

「はぁ、はぁ……ハヤト君っ!!」


 時の神と同じく俺もそちらへと視線を向けると、ここにいるはずのない人物がいた。


「ノア……ラウル……?」


 そこには青い魔法服を身につけ杖を持ったたノアと、皮の鎧を身につけバトルアックスを片手に持つラウルの姿があった。

 なんで二人がここに……?


「てめぇの相手は俺だ!! このクソジジィ!!」


 ラウルは声を上げるとバトルアックスを手に時の神へと肉薄する。時の神もそれに応戦するかのように杖をラウルへと振るう。


「うぉぉおおお!!」

「グォォオオオ!!」


 そして、ラウルのバトルアックスと時の神の杖が交差する。

 次の瞬間、時の神の腕が跳ね除けられラウルのバトルアックスが時の神の胴体へと当たる。

 あくまで時の神は腕力メインのモンスターではないというのとラウルがレベルも高く、腕力を主体に戦う戦闘スタイルというのもありラウルに軍配が上がったようだ。


「グォォオオオ!!!!!」


 時の神はラウルの攻撃の衝撃によって少し警戒し後退する。

 ラウルは時の神と俺の間に入って立ち塞がる。


「ハヤト君!! これ!!」


 そして、その隙をついてノアが俺の元へと駆け寄って小さな小瓶を具現化させて俺の口元へと流し込む。

 これは……。


「ケホッ、ケホッ」

「ご、ごめんなさい!! 大丈夫ですか!?」


 そう言ってノアは俺の顔を覗き込む。


「あぁ……大丈夫、ありがとう。でも……いいのか?」


 ノアが俺に飲ませてくれたのはエリクサーだった。エリクサーはHPゲージと状態を回復してくれるアイテムであり、そのレア度は万能薬よりも高く、稀にモンスターがドロップするのと一部の店でしか販売していない。買うにしても高額であるアイテムなのだが……。


「はい! それより早くあいつを倒しましょう!」


 ノアはなんでもないと言わんばかりにニコッと笑って笑顔で返事すると時の神へと向き直る。そして、その表情はさっきの眩しい笑顔と打って変わって真剣な表情そのものだった。

 ノア……この借りはいずれ返すよ。


 俺はまだ衝撃が残る身体を起こしノアの前、そしてラウルの横に立つ。


「ラウル……なんでここに?」


 そして、俺は隣に立つラウルに問いかける。

 俺がここに向かった事はラウルもノアも知らないはずなのに……。


「そりゃおまえ、誰かさんが一人で無謀な事するからだろ?」

「……なんでここが分かった?」

「それは……」


 そう言ってラウルは後方にいるノアを一瞥して俺の方へと向き直る。

 ノアは何か分からずキョトンとしている。


「おまえがあのお嬢ちゃんの事頼むって言うからちょっと声かけたら、『ハヤト君を助けてください! なんか様子が変で……きっと無茶しようとしてるんです!! 居場所は私が見つけます!』って俺に言うと同時にチーム本部に言ってフライヤさんに聞きに言ったらビンゴだった……って訳! フライヤさんもフライヤさんでおまえの事頼むって言うしな! 仕方がないから来てやったぜ!」

 

 そう言ってラウルは見た目には似合わない爽やかな表情でニカッて笑う。


「すまない……助かった」

「礼はいいぜ! 困った時はお互い様だ! それに礼なら彼女に言えよ? 彼女はきっとーー」

「あぁぁあああ!! ラウルさんっ! そんな事言ってないで前見てください! 来ますよ!」


 ノアの言う通り、時の神は杖を掲げようとしている。

 あれは雷魔法か!? 今はゆっくり話してる場合じゃない! ノアには戦闘が終わったらちゃんと礼を言おう。


「二人とも!! 後ろへ跳べ!!」


 俺の声と同時にラウルは何かを察知して後方へと飛び時の神と距離を取る。

 さすがラウル、行動が早いな。よし、俺も……


「ーーっ!?」


 ラウルが後方へ跳んだのを確認した俺も距離を取ろうとすると、ノアはまだ安全な距離が取れていなかった。というのもノアは魔法使いだから身体的な能力は低い。俺とラウルと違い、一回で跳べる距離も短いのだ。


「ノア!! 我慢しろ!!」

「えっ? えぇーー!?」


 俺は後方へ跳ぶのではなく、走ってノアの元へと駆け寄り抱き抱えてから跳んだ。


「ゴォォォオオオ!!!」


 そしてその刹那、俺の後方で轟音が鳴り響き地響きが起こる。

 ……間一髪セーフだったか。俺は着地して振り返ると雷は俺の元へとは届いてなく、ギリギリ安全圏へと逃げる事が出来たようだった。


「……間に合ったか」

「ハ、ハ、ハヤト君!! 降ろしてください!! 私重いですから!!」

「……? いや、軽いけど?」

「い、いいから降ろしてください!!」


 まだ戦闘中だっていうのにノアのこの慌てよう……俺の認識が違ったか? 戦闘中は落ち着いてるキャラだ思ったけど。

 俺はバタバタとしているノアの言う通りにノアを降ろした。


「ははは! 見せつけてくれるぜ!」

「ラウルさんも!! いらない事言ってないで態勢整えてください!!」


 確かに。ノアのいう通り時の神は赤い目で俺たちを見据え、どうするか考えているようだ。

 時の神は今雷魔法を使ったばかりだ。まだリキャストタイムがあるはずだし攻めるのは今だ。


「うぉぉおおお!!」


 俺は時の神へと一気に詰め寄る。時の神も俺を排除しようと杖や手を振るうが、俺はエアリアルの効果もありスピードが上がっているため、それらを掻い潜りながら時の神へと斬撃を放つ。


「ハヤトばっかいい格好させるかよ!」

「ーーーー……ファイヤーランス!!」


 俺が攻撃している間を縫ってラウルがバトルアックスを振るったりノアが魔法を放つ。

 ノアの放つ魔法……あれは上級魔法だ。炎の槍が高速で時の神へと突き刺さりHPゲージを減らす。先ほどのファイヤーボールと違い、無数の炎の槍が形成され、飛んでいくスピードも速い。あれならスピードのあるモンスター相手でも避けられる事は滅多にないだろう。


 俺たちはその後、自然と役割分担しながら時の神のHPゲージを削っていく。

 俺が時の神の近くで攻撃しながら相手の意識を引きつけ、時の神の攻撃を避ける。そして、ラウルがその合間を縫ってバトルアックスで強力な一撃を振るいノアが遠距離から魔法を放つ。


 そうした連携で俺たちは時の神のHPゲージが残り一本を切るところまできた。


「後もう少しだぜ!」

 

 ラウルの言う通りここまでは順調にHPゲージを削る事が出来たけど……。

 でも、このまま倒せるとしたら少し手ごたえがない感じがする。確かにあの雷魔法は驚異だったけど、よくよく見れば対策も考えられる。まぁレベルが低ければ一撃喰らって麻痺したところに攻撃されたらやられる可能性はあるけど……。俺たちは幸いレベルが高かった。でも、いくら俺たちのレベルが高いとは言え、守護神があっさり倒せるというのは……あの入り口で参加できるプレイヤーが三人という時点でプレイヤーは警戒するだろうし、レベルの低いプレイヤーが挑むとは考えにくい。だから、ある程度のレベルのあるプレイヤーが対象のクエストなんだろうけど、それにしては守護神にしては少し手ごたえがないしあっさり倒せるというのは考えにくい。守護神はたいていなんらかの手強さがある。

 神剣エアリアルを手に入れた時の守護神だってそうだ。最初はそれほど手強くはなかったけどHPゲージが……もしかしてっ!?


「ーーっ!? 二人とも気をつけろ!!」


 俺が思案していると時の神が杖を持っている手ではない方で首にかかっている懐中時計のようなものに手をかけた。

 何だ……何をする……?


 俺の言葉にノアとラウルも警戒し時の神から距離を取るが、次の瞬間に時の神が懐中時計を操作すると予想もしなかった事が起きた。


 

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