霊峰ホーリーレスト
「これが霊峰ホーリレスト……」
俺の目の前には巨大な山がそびえ立つ。
緑の木々が生い茂り、山頂付近には雲がかかり、うっすらと雪が積もっている。
空気は澄み切っていて、俺の黒く染められた心を刺激する。
汚れた俺がこんなとこに来ていいような場所ではないかもしれない。でも、俺はユーリを助けなくてはいけない。
俺は一呼吸置くと歩き始めた。
ーーーーー
ホーリーレストは霊峰と言われるだけあって神聖な場所だからかモンスターも出て来ない。
だから、道中何事にもなく俺は小鳥達が空を飛んでいるのを見上げながら歩を進める。
そして、歩きながら俺はユーリの顔を思い浮かべる。
今でもユーリの顔は鮮明に思い出せる。
あの輝くような笑顔……まるで七色に輝く虹のような希望に満ちた笑顔に救われた気がした。
次は俺がユーリを救いあの笑顔を取り戻してみせる……。
「ユーリ、待っていてくれ……」
俺は、はやる気持ちに急かされるように走り出し目的の場所を目指した。
ーーーー
「自らの行いを悔いる者よ。その悔いを改める為、時の神に挑み、自らその願いを勝ち取れ。時の神を超える意思の強さのある者にそれは開かれる」
噂通り霊峰ホーリーレストの中腹にさしかかると、洞窟がありその前に仙人のような姿をしたNPCがいた。
そして、近づくと言葉をかけられ頭上にウインドが開き、
『クエスト 時の神を乗り越えし者 報酬 懺悔の涙 参加プレイヤー 0/三 挑みますか? Yes/No』
と表示される。
時の神……なるほど。
確かにあの仙人のようなNPCの言葉から読み取れる内容と報酬の懺悔の涙と合わせて考えると噂に流れているような過去に戻れるって考える事が出来る。
それが本当ならユーリを救える……。
俺は迷う事なく『Yes』のコマンドを押す。
「時の神に挑みし者よ。そなたの悔いが改められる事を願う」
仙人のようなNPCの言葉に合わせて参加プレイヤーが『一/三』と表示され、続いて『クエスト開始』のウインドが現れた。
そして、それを確認した俺は洞窟の奥を見据え足を洞窟へと進めた。
ーーーー
洞窟の中は壁が青白く発光した迷宮となっていた。
発光している原理とかは分からないけど、神聖な場所だと認識させるには十分な光景だった。
「うぉぉおおお!!」
俺の振るうエアリアルによってコウモリ型のモンスターが両断される。
ここは洞窟型の迷宮だからか外とは違い、霊峰と言えどモンスターが出てくる。コウモリ型のモンスターや蜘蛛型のモンスターが多いが参加できるプレイヤーが三人という事もあってそれほどの脅威はないし、元々少人数で挑むクエストになっているからかモンスター自体の難易度は高くはない。
そして、俺には神剣エアリアルがある。
エアリアルによってスピード系の能力補正を受けた俺には飛行タイプのコウモリ型モンスターで攻撃を当てにくいモンスターであってもスピードで上回り苦労する事なく補足し攻撃を当てる事が出来るし、蜘蛛型のモンスターにしても不意に吐かれる糸を素早く避ける事が出来る。
とは言え、モンスターが弱いと言っても守護神が弱いとは限らない。
俺はそれをよく知っている。
「ここが守護神の部屋……」
俺の目の前に、なんとも言えない模様の入った扉がそびえ立つ。
それは黒と白で出来た扉でなんとも来るものを拒むようななんとも言えない迫力を放つ。
俺はこの迷宮を一人で突き進んで守護神の部屋へとたどり着いた。一人で守護神の部屋までたどり着いけけたのは、元々三人で挑むクエストという事もありモンスターが弱い事という事もあっただろうけど、神剣エアリアルの効果が大きいと思う。
スピード補正を受けた俺は、素早く動くモンスターや不意をついた攻撃がネックのモンスター達相手でも対応する事ができ、俺一人でも守護神の部屋までたどり着く事が出来た。そして、ここまでに受けたダメージは四分の一ほどで苦戦らしい苦戦はない。
あとはこの先の守護神を倒せば……。
俺は覚悟を決め扉を押す。
扉は『ギィィィ』という音を立て開くと中にあるろうそくのようなものに一気に青白い炎が灯り部屋の中が明るくなった。
そして、青白い炎に照らされ守護神の姿が俺の正面に徐々に映し出される。
巨大な身体に白く長い髪に同じように白い長い髭、そして服装は白い布を巻いて纏い首には懐中時計みたいなものをかけている。
これが時の神……本当の神みたいな感じだな。……でも、俺はユーリを救えるなら神だって敵に回す!!
「うぉぉおおお!!!」
俺は守護神『時の神』を確認すると危険を顧みずに駆け出した。
そして、時の神に近づく間にHPゲージが表示される。HPゲージは四本。決して多いHPゲージではない。いや、ボス級にしては少ないくらいだ。
「はぁぁあああ!!!」
俺は時の神に近づくと足の部分にエアリアルを振るう。エアリアルの青白い刀身が黄緑色の斬撃の軌道を残して時の神の足を捉える。そして、エアリアルによってスピードを底上げされた俺はここまで時の神の攻撃に補足されていない。……いや、どちらかというと時の神はまだ動いておらず俺が先制攻撃をしかけた形になるだろう。
俺の剣は見事に時の神を捉える。それとともに『ぐぉぉおおお!』という叫び共に時の神の目が赤くなる。
ここからが本番だ。
俺は斬りつけ通り抜けたと同時に振り返り、バックステップで距離を取り次に備え態勢を整えた。




