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懺悔の涙

「……話ってなんですか? 遠征隊には加わりませんよ」


 ユーリの死から一ヶ月、ちょくちょくノアやラウルと言葉を交わす事はあっても、まともにちゃんと言葉を交わす事はなく、ひたすら単独行動をとっていたが、今日はギルド『聖なる夜明け』のリーダーであり、俺たちのチームのまとめ役であるフライヤさんに呼ばれ俺はレッドシティにあるチームの本部へと向かった。


 俺はあれから誰とも組まずに黙々と強さを求め一人フィールドを彷徨った。

 そのおかげでレベルも上がり愛剣である神剣エアリアルも手に入れ他にもレア度の高いアイテムも手に入れた。

 だが、俺は満足出来なかった。

 まだ足りない……こんなんじゃ俺は誰も守れない……守れないのに誰かと行動は出来ない……。


「ハヤト君、君はまだユーリ君の事を気にしてるのかな?」

「……」

「何度も言ったと思うが、あれは君のせいじゃない。あれはーー」

「俺がもっと強く! もっと速く動けていれば! 俺がもっと周囲を警戒していれば! そして奴らが現れた時、疑っていれば! ……奴らに……ユーリは死ななかったんだ!」


 そうだ。

 あの時俺がもっと警戒していれば……俺は前にもそうやって油断して……くっ!

 何度も思い出しても後悔しかない。

 あの光景……ユーリが消える瞬間……。

 俺は誰とも関わってはいけない……いけないんだ。


「ハヤト君……」

「……フライヤさん、すいませんが俺は力になれそうもありません。……失礼します」


 俺はそう言ってフライヤさんに背を向け入ってきたドアへと足を向ける。

 もうここにも来ない方がいいかもしれないな。俺には来る資格がない。


「待ってくれハヤト君! 今日君を呼んだのはある情報が入ったからなんだ!」

「……情報?」


 俺はフライヤさんの言葉に足を止める。

 

「あぁ、うちのチームのプレイヤー間で噂になっている眉唾な情報なんだが……正直今の君を見てていたたまれなくてね」

「……それで情報ってなんですか?」

「良かった。話を聞く気になってくれたね。この前拠点にしたフォルクラインの街の北に霊峰ホーリーレストっていうところがある。山頂へは今のところ解放されていないのかそれとも行けないエリアなのかは分からないが立ち入る事は出来きない。しかし、実はホーリーレストの山中にとあるレアアイテムが報酬にあるというクエストが見つかったんだ」


 そう言えば俺が一ヶ月一人でフィールドを彷徨っている間にチームの遠征隊は三つの街を拠点にしたと言っていたのを聞いたな。

 三つと言ってもまだ向こうのチームとの境界まではかなりの距離があるけど。

 


 それでも一ヶ月で三つは早いペースだと思う。

 この世界のマップは以前と比べて移動距離が長くなっているところがあるのと、レイクシティへ向かう時のように変更されているところがあり慎重を期しているらしい。

 これは遠征隊に入っているノアから時々声をかけられて話の中で聞いたっけな。

 俺は何度か遠征隊に誘われたけど断った。

 ノアは悲しそうな顔をしていたけど、俺は誰かと行動する資格はない。

 ユーリを守れなかった俺が一緒にいたらケチがつく。それにノアとも仲良くなると良くない事が起きるこもしれない。

 それなら、最初から仲良くならない方がいい。俺は誰とも親密にならない方がいいに決まっている……。


 それにしてもレアアイテムか……。

 希少なアイテムには特別な効果や能力が高い物が多い。

 俺はまだ強くなりたい、強くならなければならない。

 だから、そう言ったアイテムは持っている方がいい。

 でも、どんなアイテムだろうか?


「レアアイテム? ……どんな?」


 伝説級の武器? それとも特殊効果のある武器だろうか? それとも防具? それとも転移結晶とか?


「……実は時間を巻き戻せるアイテムらしいんだ」

「ーーっ!? それは本当ですか!?」


 俺はフライヤさんの言葉を聞いて一気に胸の鼓動が早くなる。

 時を戻せるアイテムだって!?

 それがあれば……それがあればやり直せる! ユーリを助ける事が出来る!


「落ち着いて! 落ち着いてハヤト君!!」


 俺はフライヤさんの言葉に我に戻る。

 俺は興奮してフライヤに詰め寄り胸ぐらを掴んでいた。

 我に戻った俺はその手を離し数歩後退して距離を取る。


「……すいません、フライヤさん」

「いいよ、大丈夫。君の気持ちは分かるから……でもこの件は迷宮の入り口にいるNPCによる言葉によって分かっている部分のみ。そして、アイテムについて分かっているのは名前だけ。さらに、このクエストは一度に三人しか参加出来ないって事だ」


 三人……普通、クエストは複数のパーティーやプレイヤーでレイドを組んで臨むのが基本だ。それが三人……それほど貴重なアイテムだからという事か? ……おもしろい。俺はユーリを助けられるならやる!


「それでアイテムの名は?」

「……懺悔の涙。アイテムについて分かるのはそれだけ。噂になっているのは懺悔の涙という名前から後悔した時からやり直せるのではないかというのとNPCの言葉から過去に戻れるのでないかという事だ。ただ、参加出来るプレイヤーが三人までという事でまだ挑んだプレイヤーはいない」



 懺悔の涙……。

 今の俺はまさしくその通りだ。

 俺はあの時の行動に悔いてる。そして、あんな目にあったユーリに謝りたい。

 参加出来るプレイヤーが三人? ……そんなの関係ない! 俺は……俺一人で攻略してやる!


「情報ありがとうございます。霊峰ホーリーレストの山中にNPCがいるんですよね?」

「あぁ……だから君が臨むなら僕も都合をつけてあと一人ーー」

「大丈夫です。あとは俺一人で何とかします」

「お、おいハヤト君!!」


 そう言葉を残すと俺は振り返り今度こそ俺は部屋を出る。俺を呼び止めるフライヤさんの声が聞こえたが、これは俺の問題だ。それにフライヤさんはチームのまとめ役だ。俺の個人的な問題に付き合わす訳にはいかない。


「待ってろユーリ。必ず助ける」


 俺はユーリの最期の姿を思い浮かべ決意を固め、チームの本部である建物を出る。

 そして、建物を出た瞬間にある人物の姿が目に入ってきた。


「あっ、ハヤト君……どっか行くんですか?」


 ノア……。

 君にも世話になったな。

 ユーリが死んだ後、俺に気を使ってくれて……感謝しているよ。


「ちょっと……な。ノア……いや、なんでもない。ちょっと行ってくる」

「えっ、ハヤト君! どうしたんですか!? ハヤト君!!」


 呼び止めるノアを置いて俺は歩き出す。

 もし俺が死んだとしても君は生きててくれ……。


「おいおいハヤト! どうしたんだ? 可愛い女の子が呼んでるぞ?」


 次はラウルか。

 あれから時々出会う事はあったけど……でも、こうも次から次へと見知ったプレイヤーに会うとは……まるで死ぬ前の走馬燈のようだな。

 まぁ死んだとしてもあの世でユーリに会う事が出来る。俺はもう一度ユーリに会わなければいけない。そして、謝らなければいけいない……。


「ちょっと急いでるんでな。……ラウル……あの子の事頼んだ」

「ちょ、ちょっとどういう事だ!? おいハヤト!! ハヤトーーッ!!」


 急にラウルに頼むのは不味かったかな? でも、俺が関わっているプレイヤーは少ない。ラウルなら仲間を亡くした経験があるし助けた恩もあるから俺が帰って来ないとしたら俺の最期の言葉を守ってくれるだろう。

 ……ふっ、こういう時だけ人を頼る俺は最悪だな。

 でも、俺はやらなければならない……やらなければならないんだ。


 俺はラウルの声を振り切るように走り出し街を去った。

 

 

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