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蒼の迷宮

「ガイル――っ!!」

「ラウルさん――」


 俺のギルドメンバーが一人、また一人と光の粒子となって消え最後に残っていたガイルも死についには俺一人になっちまった。

 俺のギルド『草原の狼』に在籍していたプレイヤーは十五人と少人数のギルドではあったが、あの悪夢の日より以前から組んでいたギルドでレアアイテムなどの報酬を見つけてはそれに挑んでいたギルドだ。本来はもっとメンバーが多いギルドだったがあの悪夢の日にログインしていたメンバーは十五人だった。

 でも、俺達のギルドは競ってクエストや迷宮に挑んでいた為、メンバーのレベルは平均よりも高かった。

 それなのに――。


「なんなんだよコイツは!!」


 俺たちはあの悪夢の日にレッドシティに着いてすぐに街を出た。

 正直チームと言ってもあの混乱した状況の中では誰も信じられないし、それなりレベルの高かった俺達は自分たちだけで行動する道を選んだ。

 もし敵のチームに優秀なプレイヤーが多く先に攻め込まれた場合、集団でいたら先手を取られた時に身動きも出来ないまま死ぬ可能性もある。

 それならと俺達は集団行動をやめ俺達だけで動き、レベル上げやレアアイテムを集め強くなる道を選んだ。

 例えレッドシティが攻め込まれても俺達は死なない。

 これからの戦況がどうなるかは分からないが、とりあえず生き残る為に行動する事にした。

 いざという時に頼りになるのは……信頼できるのは自分の力だ。


「くそ! 全然攻撃が当たらないっ!」


 俺たちはレイクシティの北東にある隠しダンジョン『蒼の迷宮』へとやってきた。

 この場所はあの悪夢の日以前に発見され攻略されていた隠しダンジョンだ。

 ここはレイクシティという観光名所と言えるような場所から近い為、こんなところに隠しダンジョンなんてある訳がないという先入観から街に近いにも関わらず発見されるのが遅かった。

 そしてこの迷宮は発見されると同時に二人のプレイヤーによって攻略されたという事で踏み入れたプレイヤーも少ない。

 というのも、ここは出てくるモンスターはレベルがそれなりにあれば苦戦する事無く、レベル上げに来るにしてはあまり意味がないし、ここの攻略によって得られる武器は一度攻略されると二度と手に入らない。

 だから、見つかって早々に攻略されてからは訪れるプレイヤーは少なかった。

 でも、今回のあの悪夢の日以降はアイテムが初期化されたのを機に俺達『草原の狼』はこの迷宮の攻略の報酬を狙ってやってきた。


「さっさと死にやがれ!!」


 俺はバトルアックスを振るうが空を切り、モンスターを捉えることができない。

 くそ! やっかいな奴だ!!


 俺が相手しているモンスターはこの蒼の迷宮の守護神。

 黒いマントを纏い青白い顔に切れ長の赤い目、口から見える牙が印象的な吸血鬼型のモンスター。

 戦い始めて最初は順調にダメージを与えたが、HPゲージが五本あったのが二本になった途端に動きが変わった。

 それまでは俺達に対して単調な動きで噛み付きにきたりするというものだったので俺達は余裕をもって戦っていた。

 ……それで、油断していたのかもしれない。

 二人のプレイヤーによって攻略された事、出てくるモンスターが弱かった事、俺達はここが隠しダンジョンという事を忘れていた。


「――っ!?」


 背中に衝撃が走るとともに俺のHPゲージが減っていく。

 くそ! オレンジゾーンか……どうする? 隙をついてポーションを飲んでいる暇なんて……。


 吸血鬼型のモンスターはHPゲージが二本になると、今までの単調な動きから一転、赤い目を皿に発光させ見えないほどのスピードで動き回り俺達を襲うようになった。

 それから俺達は攻撃を当てる事が出来ず、一歩的にやられ一人、また一人と消えていった。


「グハッ!!」


 吸血鬼型のモンスターの攻撃が俺の鳩尾を捉える。

 俺は衝撃に耐えられず、バトルアックスを手から放してしまった。

 ヤバイ……HPゲージもレッドゾーンに入ろうとしている。このまま俺もここで死ぬのか?

 

 その時だった。


「ぼっとしてないで体勢を整えろ!!」


 俺の目の前に一人の黒髪のプレイヤーが現れた。


――――――――



「この先に…………懐かしいな」


 俺は一人レイクシティを出ると隠しダンジョンである『蒼の迷宮』へと向かった。

 ここはかつて俺がレンと二人で攻略したところだ。

 街の近くにあるという事もあり、誰にも発見される事なく残っていたこの『蒼の迷宮』を見つけた時はレンと二人で見つけた時は二人して喜んだものだ。

そして、二人で迷宮の様子を見るだけと入ったが、出てくるモンスターが弱く、これなら二人でも攻略できるんじゃないかと思って挑んだんだっけ。

 まぁ実際二人で攻略できたけど。

 でも、あの守護神はレンのアドバイスがなかったらやばかったな。さすが、隠しダンジョンだけはある。確かに攻略法が分からないとあのスピードには対応できないだろう。



 過去にも入った通り、今でもこの蒼の迷宮に出てくるモンスターは弱く、変更されていない為、今の俺のレベルだと一人でも苦にならないで、余裕を持って最深部に来れられた。

 そして、この先には俺が愛用していた武器がある。


『神剣 エアリアル』


 その剣は攻撃力もさながら手にしたプレイヤーのスピード系のステータスを上昇させる。

 俊敏性や反応速度が上がる為、俺の戦闘スタイル・武器にマッチしたのでこの武器を愛用していた。

 あの時……守護神を倒した時にレンが俺に使えと言ってから。


『それはハヤトが使えよ。ハヤトはスピードバカだからな。攻略法が分かってもあのスピードに一撃も貰わずに倒すなんて……。だからそれはハヤトが持つのに相応しいよ。なんかあったら助けてくれ』


 俺は強くなる為……神剣エアリアルを手に入れる為にここへやってきた。

 あとはここの守護神を倒すだけだ。

 でもこの守護神が少々厄介だが……まあ俺はその攻略方法を知っているから大丈夫だろう。


「レン……今回も俺が使わせてもらうぜ」


 俺はそうやって呟くと目の前に見える守護神のいる部屋へと足を進める。


 今回は俺一人で倒してみせる。

 俺はもっと強くならなければいけないから――。



―――――


「おいハヤト、そんなむやみに攻撃しててもなかなか当たらないぞ?」

「そんな事言ったってどうすんだよこれ!?」


 俺とレンの周りを吸血鬼型のモンスターが動き回っている。


「これほど速いスピードだからな。それに追いつこうなんて無茶だよ。……ってそれでも追いついて少しダメージを与えるハヤトのスピードには参るけど」


 そう言ってレンは笑みを浮かべる。

 こいつは……。


「そんな余裕こいてる場合じゃないだろ!?」

「ゴメンゴメン! じゃあハヤト、少し俺の横に来て止まっててくれないか?」

「はあ?」

「いいから早く!」


 早くって……だいたい止まってたら的になるだけじゃないか?

 でもレンが意味もなく言う訳ないし……。

 俺は渋々レンの言う事をききレンの隣に立った。


「んで、どうするんだ?」

「まぁ見てなって!!」


 

―――――――――


 俺が昔を思い出しながら守護神の部屋へ入ると中には、プレイヤーがいた。

 一瞬、先を越されたかと思ったがよくよく見るとプレイヤーは一人しかいなくて武器であるバトルアックスを手から落としHPゲージもレッドゾーンへ入っていた。

 なんだ……? なんで一人なんだ……? 俺と同じで一人で攻略……?

 いや、違う! あの守護神のHPゲージ、あれは行動パターンが変わったんだ!


 俺はこの『蒼の迷宮』が俺とレンで攻略した事によって守護神の詳細を他のプレイヤーが知らない事を思い出す。

 ……いや、正確には俺とレンは詳細を話した事もあるが、『二人で攻略』『出てくるモンスターは弱い』という印象が他のプレイヤーに残った。

 守護神は一度しか出ないしその詳細よりもその迷宮が自分たちにうま味がるかどうかというのと二人で攻略したという噂の方が広まった。

 噂が広まったと言っても俺とレンは自分たちが攻略したという事は最初にごく一部にしか話していないし、名前が広まっているのは聞いたことが無い。それに見た目も変わった以上、分かるプレイヤーがいるかどうかは分からない。

 だから、この『蒼の迷宮』の守護神の手ごわさを知るプレイヤーは俺とレンを除いていない。


 俺の頭の中にユーリの最後の姿が浮かぶ。

 ……もう目の前でプレイヤーを死なせない!!


 相手がだれか確認する間もなく俺は動き出してプレイヤーの前に立った。


「ぼっとしてないで体勢を整えろ!!」


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