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「おい、大丈夫か!?」
ヤーサが血だらけでエルを背負いながら学園につくころにはすっかり他の生徒も帰ってきている頃であった。
ヤーサは何も言わず、ここに来るまでに目を覚まさなかったエルとSランクの魔物を討伐した証を教師に渡し、クラスの方へと向かう。
そしてエルとよく一緒にいるメンバーを問い詰めた。
「なんでエルちゃんと一緒のパーティーを組まなかったの?」
怒りをこらえて怒鳴らないようにしてはいるものの無意識に魔力が声にのり周囲を威圧する。
「……その……」
「何?」
「いやっ、そのっ……」
怯えてしまってなかなか話にならない。
イライラを抑えて次の言葉を待つ。
「……彼女がヤーサ君が話しかけてきてくれてるってのに無視するから」
「は?」
突然出てきた自分の名前に一瞬ぽかんとしてしまう。
メンバーの中にサンの告白を断った後に告白してきた娘がいることに気付く。
それを見てやっと何を言ってるのかが飲み込め始めてくる。
「ふ、ふざけっ――――」
耐え切れずに怒鳴りそうになったがヤーサは小さいころを思い出した。
初等部の頃ヤーサを無視したことにより孤立が進んだことを。
あの時からヤーサは自分が持つ影響力と言うものを全然理解していなかった。
「なんだよ、結局懲りてないのは僕のほうで全部全部俺が悪いんじゃないか……」
自分を責めずにはいられない。
「最悪だ、俺は」
ヤーサは女子生徒に背を向け一人消えていった。
「ヤーサ、本当にいいのかい?」
「はい」
「無くした記憶ってのは戻せるものじゃないんだぞ? ましてや学園全体から成績以外の自分に関する記憶を消すなんて相当な規模の術式だぞ?」
ヤーサはすべてを消し去りたくなって師匠の下を訪ねた。
「はい」
「何があったか知らねぇが考え直してみないか?」
「いえ、お願いします」
自分なんかはいない方がエルちゃんは幸せになれる、そう信じてヤーサはリセットの魔法を使う。
「……わぁったよ、これ以上は何言っても無駄だ。この紙に術式が書いてある。お前なら五分もあれば使えるようになるだろ。ちなみに俺には効かねぇからよく覚えとけ」
「はい、ありがとうございます」
こうしてヤーサは学園から消え去った。