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君の隣  作者: 二階堂暦
9/37

08



「……ッ……」

「ユア姉、笑うんやったらちゃんと笑ってくれへん?

堪えられると余計傷付くわ」

「いや、だって…

小さいだろうとは思ってたけど…!!」



堪えきれず、優亜が吹き出した。

彼女の目の前には、丈の全く合っていないジャージを着た健斗。

女性のフリーサイズでも、彼にはやはり小さかったようだ。



「ま、急に泊まる事になったから、今日はそれで我慢してよ」

「(男物がなかっただけ良かったけど…)」

「さて、お風呂も入ったし、健斗君の服も確保出来た。

後は寝る場所だけかー…」



それが今日一番の問題である。

急な転勤のため、客用の布団などは勿論ない。

あるのは、僅かな予備の掛け布団だけだ。



「仕方ないか。

健斗君、そこのベッド使って。

私リビングで寝るから」

「えっ!?いやいや!!

ユア姉の部屋やねんからユア姉が使いや!!

俺リビング行くし!!」



首を思い切り振る健斗に、ビシッと優亜が指を突き付ける。



「健斗君は部活もあるし、リビングで寝て風邪でも引いたら、私が怒られるの。

一応お客様なんだから、家主の意見には従いなさい」



大人としての自分の役割だ。



「…分かった」

「よし」



満足気に笑った。



「――――……」



深夜2時を過ぎ、優亜のベッドに横になっていた健斗は静かに起き上がった。



「(ユア姉もやっと寝たみたいやな…)」



先程まであったPCの起動音は今は聞こえない。

ドアを開けると、健斗の予想通り、そこにはpcに突っ伏して寝息をたてる優亜の姿。



「本間…ユア姉が風邪引くっちゅーねん…」



呆れたように笑う。

優亜を抱えてそのまま寝室のベッドへ寝かせた。



身長は抜かした。

力だって負けない。

けれど、年齢の差だけは、どんなに頑張っても縮まらない。

チラリと見えたテーブルの上の書類は、高校生の健斗にはただの文字の連なりにしか見えなかった。



「(早く…大人になりたい…)」



この人の傍にいてもおかしくないような。

この人が遠慮しなくても良いような。



この人が、好きになってくれるような。



優亜の額に唇を落とす。

まだ、気付かれませんように。

どうか、俺のこの想いだけは。




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