07
「駄目ったら駄目」
「どうしても?」
「どうしても」
押し問答が続いて数分。
きっかけは健斗君の一言だった。
「もう遅いし、今日はユア姉の家泊まるわ」
にっこりと笑顔。
その笑顔につられて一瞬頷きかけたけど、何とか押し留まった。
「な、何言ってるのかな健斗君。
家そんなに広くないし、健斗君の寝るスペースもないから」
「別に俺リビングの床でえぇで」
「私明日朝早くから仕事だし」
「え、さっき昼からって聞いたけど」
「…実は私持病の発作が…」
「初耳やし余計誰かおった方がえぇやん」
「…………」
「…………」
「とにかく泊まりは駄目!!」
「酷い!!
こんな暗い中久しぶりに会った幼馴染みを追い出すんか!!」
「おじさんに来てもらいなよ!!」
「親父今日も仕事!!」
ぜえはあと荒い息を整える
大体間違ってる。
25歳の社会人が17歳の高校生を家に連れ込むなんて、下手すれば犯罪だ。
良くてお巡りさんからの注意、悪くて援交疑惑からの逮捕。
刑務所という最悪の想像が頭をよぎった。
「…せやかて、」
ぽつり。
健斗君が呟く。
「せっかく会えたんに…
このまま帰ったら、またユア姉どっか行ってしまうんちゃうかって…」
そう言えば、7年前もこんな顔をさせてしまっていた気がする。
結局、約束を守らなかった私が悪いのだ。
「…明日は2人共昼から仕事と部活だから、朝はちゃんと早く起きる事」
「…え、」
「家狭いから寝苦しくても我慢してね」
「ユア姉、」
「言っとくけど、おばさんが良いって言ったらだからね」
寂しそうだった顔に笑顔が戻った。