七
生暖かい風が両者の行く手を阻むかのように砂埃を巻き上げながら吹く。
それを突っ切り互いに殴打の連撃をを繰り広げる。
けれどやはり力は及ばすすぐに弾き飛ばされる。
神護は二対二という条件こそ同じものの、力の差が埋まるわけでもなく形成的には不利な状況だ。
頭をフルに回転させ策を考えようとはするが何も浮かんでは来ない。
(くそっ! ……何かないのか。他に試してないことが―― ……あ、あった)
神護一つ試していないことがあったことを思い出した。
神と魔王から与えられた最強の属性。『宇宙』の力を――
神護はタイミングよく飛ばされてきた剣魔に近づき話しかける。
「おい剣魔。 勝てる方法があるかもしれないぞ」
「本当か! 早く教えろ!」
「落ち着け! ……いいか。アダムスたちが言っていたんだが、俺たちしか使えない最強の属性、『宇宙』が宿っているらしい。まだ力不足の俺たちは『宇宙』の中でさらに別れている『太陽』と『月』のどちらか片方ずつしか使えないみたいだけど。
とりあえず俺は『太陽』をつかうからお前は『月』をつかえ。そうすればいいところまではいける……はずだ……」
「……いいところまでなのか?」
「ああ。いいところまでだ。」
そう神護たちと相手との力の差は歴然としている。だからいくら神護達が『宇宙』という最強の力を使ってもいいとこ互角までだろう。
あと一歩。あと一歩オメテルたちに勝てるまでは足りない。
「くそっ!」
剣魔は苛立ちが隠せず地面を削る
「落ち着け剣魔。まだ話は終わっていない。」
剣魔はしかめっ面のまま睨むような目線だけを向け話を聞く体制に戻った。
「バトル物の御都合主義は分かるか?」
「? そりゃ急にパワーアップしたり、新必殺技が生まれたりすることだろ?」
「そうだ。 だから俺たちもパワーアップすればいいんだよ」
その理屈はいかがなものか。剣魔は怪訝な表情をし——
「あほだろお前。あれは漫画とかだからできるんだよ。実際に俺達が出来るわけないだろ」
神護を馬鹿にするように、いや馬鹿にした。
「そんなのやってみなくちゃわからないだろ?」
「いやいや……」
頑なにそのことを良しとしようとしない剣魔に神護は、はぁ~とため息をつく。
「とにかくだっ! 俺たちに秘められた力をなんだ……そのこう、なんか内側に閉じ込められていた力を解放するみたいな? まあ同時にそれが俺たちのパワーアップにも繋がるんじゃないかと言うのが俺の考えだ。どうだ?」
「そんな簡単にできたら最初から苦労しないって」
剣魔は呆れながら言葉を返すが神護は聞いておらず目を瞑り集中していた。
神護一息つくとは属性を宇宙に変更する。
オメテルは神力の変化を悟ったのか驚嘆の表情をしていた。
神護は深く息を吐きを体の中心に龍力を集める。
すると自然と自分のなかでのイメージが浮かんでき、それを完成させると目を開き、絵にペンキをぶちまけるように一気に龍力を解放する。
神護が放った龍力がよほど強大だったのか、解放された龍力によってあたり一帯は瓦礫も残らないほどに何もかも吹き飛ばされまっさらな更地と化した。そこに残っていたのは神護達とオメテルたちだけだった。
「「「なっ!!!」」」
神護以外の三人はその姿と神力の激変ぶりに驚愕した。けれど神護は自身の変化には妙に冷静だった。
髪は金色に染まり逆立ち、頬や手の甲には金色の鱗のようなものが浮かび上がっており、眉が吊り上がり目が鋭くなっていた。
(試してみるものだな。自分でもわかるぞ。この力の上がり方は尋常じゃないな)
神護は剣魔にも視線でやってみろと促した。
剣魔は神護がやったように目を閉じ体の中心に龍力を溜めそれを一気に解放した。すると神護とは少し異なり、髪は銀色に染まり逆立ち、頬や手の甲には銀の鱗のようなものが浮かび上がり、
目も鋭くなっていた。
剣魔の方は神護という見本がいたため時間的には一瞬だった。
その変化を見ていたテスカトは静かに分析するように神護達を見つめ、隣にいるオメテルは怪訝な顔で質問してくる。
「……ねえ、いったいどういう手品だ?
どうして君たちは僕らの知らない属性を持っているのかな?」
再び口調の戻ったオメテルの問いかけにはさっきまでのような余裕は感じ取れなかった。
激しく動揺しているようだ。
「説明してやろう。この属性は宇宙といってアダムスたちが俺たちにくれたものだ。お前たちが知らないのも無理はない。
そしてこの姿は……まあ龍の力の完全開放状態。そうだな『Dモード』とでも名付けておこう。」
神護は誇らしげな顔を向け目で相手を挑発する。すると案の定それに乗っかるようにオメテルたちは怒りを露わに怒声を上げる。
「……調子に乗るなよガキが! いい気になってるんじゃねえ。行くぞテスカト!」
再び口調の変わったオメテルの掛け声とともに二人は神護達に向かい突っ込んできた。が神護たちはこちらに来る前に迎えに行くように二人の前に移動し――
「「遅い!」」
神護たちは顔面を殴りつけ地面に二人を叩き付けた。