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真龍幻夢譚  作者: 魔音金
第一章  龍騎士学園
22/23

二十二

大変遅れてしまい申し訳ございません

最新話です

しばらくして目的の部屋の前まで来るとノックをし、入室の許可を諮る。


「入ってええよ~」

中から軽い返事が帰ってくると神護は取っ手に手をかけ扉を開ける。


「えらい遅かったやないの? なんかあったん?」

ネハング心配するようなそぶりを一切見せずに愉快そうに笑っていた。その様子に苛立ちも覚えながらも、自身が悪いことを自覚している神護はそっぽを向くだけで何も言わなかった。


「まあ疲れも溜まってたやろうし大方、寝坊でもしたんやろう? まあしゃあない許したる」

ネハングはそういうと貸し一つと言わんばかりに神護に笑顔を向けている。神護は殴りたくなる衝動を抑えつつネハングに謝罪をする。

「すみませんでした。遅刻をしてしまい」


思いのほか丁寧な謝罪にネハングは一瞬目を見開くが、大丈夫と手を振る。


「まあじゃあ早速やけど試験はじめよか? 別室に問題用意してるからそっち行ってそこにいる試験管の指示に従って。終わったらそのあと実技やさかい、そん時にまた迎えに行くわ」

神護は教室の場所を聞きネハングのいる部屋を後にする。




——数刻後。テストを受け終わった神護はグラウンド、というよりスタジアムと言った方がしっくりくる程大きな広場の脇に立っていた。


神護の目の前にはネハングともう一人、年齢は神護とさほど変わらない程で、肩まで伸ばした赤髪をなびかせ長身の剣を携えた青年が隣に立っていた。

青年は優しく笑みを浮かべ神護を値踏みするように凝視していた。

あまりに見られるので少し居心地が悪くなり身じろぐ。

それを見かねてかネハングが声をかける。

「テストの手ごたえはどんな感じやった?」


「あ~まあ大丈夫じゃないか? 少なくとも落ちることはないと思う」


「さよか。なら安心や」

言葉とは別にもともと心配などしていなかったようで笑顔で肯いていた。

ある程度試験の手応えを聞いた後、一呼吸おいてから実技の内容の説明を始めた。


「実技試験ゆうてもなんも難しいことせんよ? ただ隣にいるこの子と僕に実力を見せてくれたらええだけよ」


「はぁ……。っでこの人は?」

神護は生返事をしつつ先ほどからネハングの隣に立っている青年について尋ねる。


「ああ、この子は『ロイド』ゆうてこの学校の学生会長やってくれてんねん」


「生徒会長……」

神護はその響きに興味を持ったようで反覆する。

ロイドは紹介されると一歩前に出、神護に向かって手を出す。


「ロイドです。一応この学園の会長をやらしてもらっているよ。」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」

神護はその手を握り返し、握手を交わす。


(この学園の生徒会長の実力見せてもらおうか……)


「ところで君は武器の方は使わないのかい?」


「武器?」

言われてみるとロイドの腰には両刃のロングソードが帯剣されており、鞘には何やら不思議な紋様が描かれていた。そしてその中心には獅子絵が彫られており、要所要所に宝石のような煌びやかな石がはめこまれていた。見るからに高級さが覗えるものだ。

それはさて置き、もちろんこの世界に来たばかりの神護は自前の武器など持っているわけもなく丸腰で今ここにいる。

それに事前に武器を用意する必要がいるなんてことは聞いていない。だが、聞いていたからと言って神護には武器を用意する当てなんてない。

結局、武器なんて用意はできない。


「この試験は武器を使うんですか?」


「え~と、まあ君が希望するなら素手での勝負でもいいけど……。一応実技項目として武器を用いた実演というものもあるからね。う~ん、どうしようか?」

ロイドは少困ったように笑みを浮かべネハングを見る。神護は前提としての試験内容を伝えていなかったことに憤りを覚え、呆れながらもその男を睨む。

視線を感じたネハングは肩をすくめる。


「どうせ言うても用意なんてできひんねんやから意味あらへんやん」


「いやいや、そうだけども、知ってる知らないで心構えなんかもかわるじゃないか!」


「はいはい……すみませんでした。 武器ならこっちで用意しとるさけ、何でも好きなもん選んでくれたらいいわ」


このままだと長くなると判断したネハングは悪びれもせずに謝罪の言葉だけ口にする。そして用意していた武器を神護の前まで持ってきた。そこには大小様々、剣や斧、槍や手甲などの近接に加えて銃や弓などの遠距離武器など数多のものが揃っていた。どの武器にしようかと見繕っているとそういえばとネハングが聞いてきた。


「武具とか使えるん?」


「ああ、一通りは使えるぞ?」


「へぇ……それはすごいな。誰かに教えてもらっとったん?」


「え?」


「え?」


「あ、うん。そうだな。教えてもらっ——」

ふと、言われて気づく。

『誰に教えてもらったんだっけ?』

記憶を探るもだれに指南してもらっていたか、いつどのようにして身に着けたかを一切思いだすことができなかった。ただ使えるという事実が頭にあるだけ。


「どうしたん?」

急に黙り考え込んでいる神護を不思議に思った。


「いや、なんでもない」


「そうか? ならいいねんけどね」

今は気にしても仕方ないと思い、神護はネハングが用意してくれている武器を物色する。

思いのほか上物がそろっており、感心する。

そして、ふと今更ながらの疑問をぶつける。


「なんで学校の試験に武器を使った実技があるんだ?」


その質問に二人はきょとんとする。

質問の意図が分かっていないのではない。なぜそんな質問をしてくるのかがわからないのである。

ここにいるということはすべてを承諾して挑んでいるという認識をしていたからだ。

そこでハッと思いだしたとネハングが手をたたく。


「あ、言うん忘れてたわ!」


「校長……」

ネハングは少しばかりばつが悪そうに苦笑いを浮かべる。

その様子を見てロイドは溜息を吐き、その男の代わりに神護に説明を始めた。


「この学園は騎士、または軍人を育てるための学校でね、基本的に将来それらのいずれかに就く人のための学園だからその人の力を見る必要があるんだ。もちろん入ったから絶対にそれらに就かないといけないわけではないし、就学中にやりたいことができて別の職業に就く人だってもちろんいる。それでも基本的な方針は騎士ないし軍人を育てるためのところだからね――」


言われて納得する。それならこういった試験があるのも肯ける。そういった趣向の基行っているならば下手に手を抜くことはあまりよろしくないのかもしれない。むしろ一生懸命に自分をアピールする方が将来的には有利になる。

けれども神護にはそういった職に就きたいという希望や、想いは薄かった。どちらかというと目立つということをしたくないというのが今の神護の願いだ。

それでもあまりに手を抜いて下手に目を付けられるのも困る。逡巡するもとりあえずと思い数々の武具の中から『刀』を選んだ。


「それでええんか?」


「ああ、()の俺だとこれが一番しっくりくるからな」

神護は手に取った得物で素振りをしながら答える。やはり日本で生活していた神護にとって一番なじみがある物にしたようだ。


「それじゃあ準備はいいかい?」


「はい。よろしくお願いします」

言うと神護とロイドは互いに距離をあけ、ネハングは観客席の方に移動する。


「それでは実技試験を開始する! 双方の健闘を祈る。始め!!」

 ネハングの合図ともにお互いは一気に距離をとる。

 お互いに近接武器なだけあって、距離をとるのはあまり得策とは言えないがここは異世界であり龍力という不思議な力まで存在する。

つまり距離なんてあってないようなものだ。そのことを理解している神護は何の情報もない相手に突っ込んでいくようおなことはしない。また無理やり力押しするようなこともしない。とりあえずは剣術の方がここまで及んでくることはないという判断で距離をあける。

ロイドの方もなんの情報もない相手に無策では突っ込まない。ましてや校長が推薦してきた人物だ。様子見をするために距離をとった。

互いに相手の出方を見ている状態だ。——静寂がその場を包み込む。

それはほんの数分の出来事だったか二人にはもっと長く感じたであろう。そしてその静寂を先に破ったのはロイドであった。

ロイドは剣を握り直し来に神護に向かって一直線に詰め寄った。しっかりと構えていたはずの神護はロイドの想定外の速さに反応が遅れた。

ロイドは勢いを殺さないままロングソードを振り下ろしてきた。

神護はかろうじてそれを受け止めるが反応が遅れてせいで勢いに負け片膝をつく。


「どうしたんだい? まだ全力ではないよ!」


「わかってますよっ!!」

神護は攻撃を押し返し再び距離をとる。

今度は立ち止まるわけでもなく距離を保ちながら、円を描くようにロイドの周辺を走り回る。

自分の予想を上回っていた速さに警戒心を高めるとともに、気を引き締める。

キュベレに勝ったことにより心のどこかに驕りがあったのだろう。だが今はそれを捨て去りどうすれば勝てるかを思考している。


(さっきは咄嗟で後手に回ってしまったが付いていけないわけでも見失うほどの速度じゃないな……。今度はこっちから仕掛けるか)


神護は刀をしっかりと握り直し、ロイドの背後に回ると思い切り地面を蹴り駆け寄った。

そしてそのまま間合いまで入ると一気に切り下す。

ロイドもそれに反応し、体を反転させ受け止める。


「いい速さだね。じゃあもう一つギアを挙げようか!」


「ッ!!」


言うとロイドの剣に炎をが纏い、神護を押し返す。

神護はそのまま勢いを利用し距離をとる。見ると刀が少し溶けかけてもいた。


「さあ、様子見は終わりだよ。試験を本格的に始めようか?」


先ほどよりも剣により大きな炎をまとわせ、その斬撃を飛ばしてきた。

それを受け止めるも勢いに押し込まれる。

何とかして斬撃をはじくもその反動で刀が中腹から先が折れた。


「くそっ!」


「あらら、武器が壊れてしまったね。どうする終わりにするかい?」


「まさか! このままでも十分ですよ」


「そうかい? なら遠慮なくっ!」


ロイドは一気に距離を詰め、炎の剣戟を神護に浴びせる。

何とか折れた刀で受け続けるも、自分からもはたから押されているのは明らかだ。

そして攻撃を受け止めるたびに神護の刀は少しずつ溶けていっている。

何とか受け流しそれを最小限にとどめているも押し返すため決定打に欠けるためなんともならない。

 そしてついに神護の刀が根元から完全に折られた。

ロイドは最後の一撃と言わんばかりに剣を振り下ろす。しかし神護は未だ諦めておらず、残った柄を相手の顔面に向かって放り投げる。


「なっ!」

咄嗟にそれを避けるも攻撃は中断してしまい、そのすきに神護に再び距離をとられる。

しかし距離をとったからと言って何ができるのだろうか。柄をも捨ててしまった今完全に武器を神護は失ってしまった。


(仕方ない——)


神護は目をつぶり頭の中でイメージを固定するために集中する。

ロイドはそれを諦めたのだと思い剣を握りなおして神護に向かって再び詰め寄る。

そして間合いに入り剣を振りかぶった——。


GENERATE(ジェネレート)


神護はロイドの剣戟を受け止めていた。

手には半透明の刀が握られておりそれを見たロイドの顔は驚愕に染まる。

その刀で数回切り結んだ後お互いの距離が空いた。


「さあ、勝負はまだ終わっていないですよ!」


ロイド深呼吸をするとともにしっかりと気を引き締めなおした。


次話も作成中でございます

なるべく早く投稿します

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