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真龍幻夢譚  作者: 魔音金
襲来者
13/23

十三

神護は驚きの感情で表情が固まったままになったがそれも一瞬のこと。すぐに平常を取り戻す。


「ちょっと待て、学校ってこっちのか? 

こっちに来たばかりで何も知らないのにいきなりそんなこと言われても――」


「まあこっちのことはまたあとで説明しますんで、とりあえず家にきてくれへん?」


ネハングは笑顔でそう言ってきた。

まあちゃんと説明してもらうならそれはそれでいいか。

どうせこっちで暮らしていかないとだし、いちいち云々言っていても仕方ない。そう思い首を縦に振り歩き出すネハングについていこうとする。

だがそれが気に食わなかったのか、キュベレは異を唱えてきた。


「ちょっと待ってください! ()にもエリート校の私たちの学園にこんな弱そうな男を入れるなんて納得できません!」


仮にという言葉が少し引っかかったが今は気にしないでおこう。

ていうか見た目だけで弱そうとか失礼だなこいつ。


「いやいやキュベレ嬢。神護はんの実力は一応私も認めていますねん。だから大丈夫でっせ」


「そこまで言うなら私に確認させてください。此の方が学園に見合う男かどうか!」


「……仕方ない。ほなら私のうちの闘技場でってことで。」


「わかりました。行きましょう!」


神護は話に介入する隙などなく勝手に話を進められ決められた。

まあ正直どうでもいいんだけどな~


* * *

ネハングの家の前に着いた神護は目を丸くしていた。彼の家はよくおとぎ話やアニメなどに出てくる城のように大きく立派な建物で、外からでもわかるほど大きな庭やその他諸々の施設が備わっている。


「……おい。あんたいったい何者だよ?」


「あとで説明したあげますって。とりあえずキュベレ嬢に神護はんの実力を見せたあげてくださいな」


「でも龍戦士ドラゴニアであることはばれないようにって……」


「神護はんなら別に本気ださんでも勝てますやろ?」

ネハングは何の問題もないでしょという笑顔で言ってきた。


ていうか買いかぶりすぎだろ俺のこと。

しかも相手は一応『光』の属性持ってるわけだし……



闘技場に着くとキュベレが準備運動を始めた。

まあ体をほぐすのは大事、大事。


運動が終わるとキュベレは神護を指さしながら——


「シンゴあなたの実力見せてもらうわ」


「まあ一応お手柔らかにお願いします」

言うと神護は一応形だけでもと腰を下ろし構える。

何にでも対応できる、神護が今までで習った中で一番万能な構えで。


(へえ~…… 隙のない構えね。それなり経験はあるらしいわね)

キュベレは感心していた。

全くの初心者だったら試合の前から勝負は決していたと彼女は自身の中で思っていたのだろう。

けれど神護の構えを見てその考えは変わる。気を抜いたら足元を抄われるかもと——


「ではキュベレ嬢対神護はんの模擬戦をはじめます。 試合開始!」

ネハングの掛け声と同時にキュベレは一気に神護に向かって駆け出してきた。


「一瞬で決めさせてもらうわよ」

キュベレはそのまま勢いを殺さずに龍力を込めた拳を振るってきた。

神護はそれを難なく躱したが、

(速いな……)

思っていたよりキュベレの動きは速かった。

龍力で身体を強化しているのだろうか? だが基本はそれを酷使できる肉体が出来上がっていないと意味がない。

しかし今の攻撃を見る限り彼女はかなり鍛えこんでいるのだろう。

そのまま彼女は何度か拳を振るい、蹴りをかましたりしてきたが神護はしっかりと動きを見、余裕で避ける。


(常人よりは鍛えているようだが俺に攻撃を当てるのはまだまだ無理だな。)


「はあはあ…… 私の攻撃を避けるなんてなかなかやるわね。じゃあこれならどう! 〈フォトンレーザー〉」

疲れているのか息を切らしながらキュベレは神護に向かって手を銃の形にし、指先に龍力をため、それをレーザーのように放ってきた。

「はあ……」


神護はため息が出てしまった。

自身の実力を見るといったのでどれほど彼女は実力を持っているのかと思ったら、まあ彼女が本気ではないとは思うがそれでもこれほどとは思ってもいなかった。

武道を極めている人は初撃で相手の実力が分かるというが自身はそこまで極めているわけではないので初撃ではわからなかったがしばらく見ていて彼女の実力は測れた。

ただの雑魚だ……。

神護は向かってくるレーザーを右手で受け止め握りつぶした。


「なっ!!」 「ほう」

キュベレの驚きの声とネハングの関心の声は同時に漏れた。


「めんどくさいからもう終わらせるな」

神護は頭を掻きながらそう告げると瞬時にキュベレに詰め寄り首筋に手刀を立てた。


(え?いつのまに――)

キュベレは何が起きたのかが分からずそのまま唖然と立ち尽くす。

ネハングはフッと微笑むと

「勝者 神護はん!」

とコールをした。

神護はそれに合わせ手刀をすっと引いた。


「これが俺の実力ってことでいいか?」

キュベレはいまだ驚きから覚めないようで首をただ縦に振るだけだった。


彼女はそのまま放心状態でギルベルに連れられ家に帰って行った。


神護は模擬戦後に掻いた汗を流すためにネハングの家にある浴場を借りた。

(しっかし、でっかいな~)

流石に家の見た目だけあって予想はしていたものの浴場はかなりの大きさのものだった。

パッと見で演算してみると約50平方メートルくらいはあろう大きさであった。

しかも素材に大理石を使っており、見事に磨かれたそれは覗き込みと自身の顔が映るほどである。

ただの校長職だけでこんなにも立派なものに住めるものなのかという疑問がわいてきた。

神護は桶を使い湯船の中のお湯で体を軽く流してから浸かった。

湯船の中は神護にとって適温で疲れが一気に吹き飛んだ。


しばらくして、浴場から出るとネハングが容易してくれた服を着、ネハングが待っているリビングへと向かった。

リビングへ入ると長方形の机を囲むように並べられた椅子にネハングは座ってワインを飲んでいた。

ネハングの後ろの壁に人の顔くらいある宝石のようなものが置いてあったが神護は然して興味がないのかまったく気にしなかった。

神護に気付いたネハングは座るように手招きをし施した。施しの通りに座ったがどうにも落ち着かずに辺りをキョロキョロと見回してしまった。

浴場よりはだいぶ狭かったがリビングも相当広かった。

普通の家庭で育った神護にとっては広すぎて違和感を覚えてしまう。


「まあそんなに緊張ぜんでいいて」

ネハングは神護の挙動不審な態度を見て声を掛けてくれた。


「いやでもここは広すぎて落ち着かないんだよ」


「でもここが神護はんのこれからこれから住んでもらう屋敷になるさかいに慣れてもらわんとこまるで。」


「どういうことだ?」


「アダムスさんからなんも聞いとらんの?」

ネハングはあれれ?という風な顔で首を傾げた。


「俺は何の説明もせずに俺をこっちに寄越しやがったんだから!

やばい思い出したらちょっと殺意が……」


「私に全部説明させる気やったんやろ…… 今度会ったらしばく!!」

ネハングは持っていたグラスを割り一瞬すごい顔になったがそれはスルーしておこう。

でも完全に丸投げされてかわいそうだなこいつ……

ネハングは一度咳払いをし元のにこやかな表情にもどると——

「一先ずこれだけは言っときますわ。……ようこそ私たちの世界へ!」

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