十二
しばらく馬車の中で揺れていると……酔った――
じゃなくてETCのゲートバーのようなものが見えてきた。
え?これって通るのにカードとかいるの?
と思いきやバーに着くなりギルベルはバーに設置されているパネルに手を付き何やら龍力を送り込んでいるように見えた。
そしてその機械から上空へと龍力が糸のように伸びており、その先には巨大な大砲が浮かんでいる。
「なあ、あれ何?」
「ん? ああ、『サテライトキャノン』のこと?」
「え? さ、サテライトキャノン?!」
何、そのマイクロ〇ーブ受信して発射するどこかのXさんが装備していそうな武器は……。
「あれはこの街じゃあ珍しいものじゃないけど、他のところにほいほいとあるようなものじゃあないから知らないのも無理はないわね。
目の前装置はね外に出る時と中に入るときに必ず通らなければならなくて、街の人が出入りするときはあれに龍力を登録して入退街の許可証代わりにするの」
「じゃあこの街以外の人が入るときは?」
「まあ、滞在期間によるけど、その時は役所の人が来て精密な検査をした後入街許可証をもらうと入街できるわ。
まあもしも無断で入ろうとしたら、今は見えないけど上空に浮かんでいるあれで打ち抜かれるわ」
上空に受けんでいるということはサテライトキャノンとはその名の通り衛星砲だろう。
セキュリティにしては少々荒いような気がしないでもないがそれだけ用心深くしているということにもなる。
一通り装置の説明を受け終わると一人の紺色の制服を着、帽子を深々と被った女性が神護のもとへとやって来た。
「失礼します! 役所のものです。ギルベルさんから報告を受けましたのでシンマ シンゴさんの身体検査を行いたいと思います。一先ず馬車から降りてください」
言われて神護は一度馬車から降りた。
最初はなんで自分だけ?と思ったがそれは当たり前のことだった。なぜならキュベレはこの街の住民だから装置に龍力が登録されているからだ。
神護は体の隅々まで弄られた。女性に触られたせいで少々体が反応してしまった。具体的に――いうのは控えておこう。
神護は検査が済んで馬車に戻ると冷たい目をしたキュベレに迎えらえた。
「な、なんだよ?」
「変態……」
「……」
その言葉に神護は一言も返せなかった。少々感じてしまった事実は否めないためである。
「そういえばシンゴ。あんたどこまで行くの?」
聞かれて神護はハッとする。
「そういえば俺ってどこに向かえばいいんだろう?」
「あんたねえ……」
神護が頭を抱えて俯いていると上から呆れ呆れた声が降って来た。
「とにかく先ずは役所に向かいましょう。あそこならいい目印になるし。
ギルベル!役所に向かってちょうだい。」
「畏まりました。」
元々はキュベレの屋敷に向かっていたのだろうかギルベルは手綱を引き方向転換をし再び馬車を進めた。
役所に着くまでに神護は街の景色を見ようと窓の外に目を向けると驚くべきものが見えた。
地面にレールが敷かれその上を大きな箱がガタン、ゴトンと走っているのだ。
「……な、なあキュベレ。あれは何だ?」
「何って電車に決まっているでしょう。 あなたの所にはなかったの?」
窓の外にはレールが敷かれておりその上を走っているのは紛いもなく神護の知る電車に類似したものだった。
でもこの世界に電車があるのにはかなり驚いた。電車があるということは文明が高度に発達しているということだ。
ならばと神護は尋ねてみた。
「あったけど……じゃあ自動車はないのか?」
「自動車って何?」
電車があるのに自動車が先ほどから一度も見てないことに疑問を持った神護は尋ねてみたものの逆に質問で返されてしまう。
まああったら馬車なんて使ってないだろう。
ていうか電車が作れてなんで自動車が作れないんだろうと思ったが多分何らかの理由があるのだろうと心の奥にしまった。
* * *
役所に着くころには少し日が傾いていた。
たぶんあのゲートからここまで約2,3時間かかっただろ。
長かった……てか広すぎじゃないか?
「送ってくれてありがとう。まああとのことは何とかするよ。」
礼を言って降りると何故か一緒にキュベレが降りてきた。
「しばらく一緒に待ったあげるわ。誰かここに来るんでしょ?」
「なんでだよ! ていうかここに来るかわからないし」
「そうなの? まあいいわ聞きたいこともあったし。」
言うとキュベレは俺を真剣な眼差しで見据えてきた。
「あんた本当に――……っ!」
何を言おうとしたのかわからないが急に話を切り、神護の後ろを驚くような目でジッと見ていた。
神護は何があるのかと振り返ると一人の男が立っていた。
男は神護に近づき、
「どうもー。あんさんが神魔 神護はんでっか?」
と陽気に似非関西弁でしゃべりかけてきた。
「え、あ、はい。そうですけど。」
関西弁は母親で慣れていたがここまで陽気な性格の人物にあったことがなかったので少し気圧されてしまった。
「私が頼まれてやって来たあんさんのまあこれからしばらく保護者になる
ネハングと言います。よろしゅう。」
「はあ? 保護者?! 一体どういう――」
「いったいどういうことよ?!」
今まで唖然としていたキュベレが急に大声で神護の質問を断ち切って割り込んできた。
「ちょっとシンゴの保護者ってどういうこと?」
「いやいやそれを俺が今から聞こうとしてたんじゃないの?」
ググッと詰め寄ってくたキュベレに少し怯みながらも神護はネハングに視線を向けた。
「詳しくはあとで言いますが神護はんは田舎から出てくるからこっちで暮らすのを手伝ってほしいって知り合いから頼まれたんです。だから私が保護者代わりになって面倒見るっとことです。
わかりましたかキュベレ嬢?」
知り合いというとまあアダムスのことだろう。それ以外に神護とこの人に共通する知り合い、以前に神護に知り合いはいない。
でもなんでこの人に?
「でもなんであなたなんですか? ネハング校長。」
「え?校長ってどういう――……まさか!」
神護のハッとした顔に気が付いたのか。ネハングは——
「そうそう神護はんは冬休み明けから私の学校に通ってもらいます!」
「はあああああああ?」
神護の声は天高くにまで響いた。
と同時にそんなベタなという叫びが心の中で木霊する。