時雨とエヴィル「Roman 1」
随所にサウンドホライズンオマージュが入っております。というかタイトルからしてすでに
●レッズ・エララ詩小説、中世時代「時雨とエヴィル」シリーズ「Roman 1」
もう何ヶ月も、詩作から遠ざかっていた/もう何ヶ月も、詩を<読んだこと>すらなかった。/まったくなんという生活だ?詩のひとつ/読む暇もないほど忙しい生活を、人が送るなんて?1…レイモンド・カーヴァー「いきさつ」より。
いつかこの旅路は消えるのかしら。刀と共に歩いた路。果たしてこの道程は潰えるのかしら。<黒衣の彼>を傍らに歩いた未知。2
ふと空には、鳶が滑り駆けていって。私はふと足を止めてしまって。両手を黒衣に入れて歩く彼の背を見つめて。足が止まってしまって…。3
「どーした時雨君?」気遣わし気な口振りが彼には似合わなくて。神の彫像たる彼。匂いたつように虹色の魔力が漂うのが見えた。4
「何でもないよ」と私は言うんだ。何でもない。風が乾いたように感じるのも気のせい。5
「そーか」エヴィル君はそう言って、8秒後「うそつけ」6
時「わかっちゃうか」エ「相棒を誰だと思うとる」時「大丈夫だよ」エ「そーか?」時「言語化できないだけなんだ」7
あるいは物語<ロマン>が本当に終わる時も、そうやって終わるのかもしれない。終は将来にくるとは決まっていない。予感の時点で最大の--。8
最大の……終わり。そして私は平凡の市民という輝かしいまどろみを手に入れる。9
時「言語化できないんだ」エ「そこまで言うならそうなんだろうな」流石の天才も、私が旅の終まで思っていると、どうしてわかるだろう?10
それがわかってどうなるだろう?終を受け入れられるというのだろう?――いずれ終わるのはわかっていて、この神の足が亀になり石になり、きっと誰よりも刀で切れなくなり、今の己が遠い日の陽炎になって……11
そうして全ての物語(Roman)は幕を引く。己が引ければいい。傍の彼が引いてくれてもいい。だが誰かの刃で引かれたり、世の断頭で引かれたり…12
一番嫌なのは、そうだね、<日々>に塗りつぶされてしまうことで――借金、愛せぬ子、呑んだくれ、ツキアイ、家の手入れ、日々を留めるだけの生――15
そうして物語は死んでいく……のをよく見てきて。それが女の喜びだと、誰か言ったか、LoveRomance。16
遠く、夜を駆けた日々を思い出す。今、遠くの処を目指しているのを思い。足は今を歩き、剣士に似ずのスカァトの長いをたなびかせ、闘士に非ずの黒髪の長いをたなびかせて。17
少なくとも、彼は隣にいてくれる喜びを思いなgら。物語の終を決めるのは私だと思いながら。命をかけるだけの意味はありと思いながら――それが私のRoman(戦い……生きる物語)なのだから。18
●時雨とエヴィル「Roman 1」おしまい