あとがき
猟闇師・零シリーズ第二弾。
久々に、私としても『産みの苦しみ』を味わった作品となりました。
今回の舞台は幽霊船なわけですが、『そもそもこの時代、幽霊船なんぞを誰が怖がるんだ?』という分厚い壁が立ちはだかりました。
スケジュールの関係で執筆ペースがグダグダになったこともありますが、こちらの方が大きな壁だった気がします。前作と比べても、とにかく人を惹き付けられる素材ではないと。それだけに、作品の方向性に関しては早期から行き詰まることの連続でした。
また、今回は敵も随分とサッパリしています。従来の猟闇師シリーズとも大きく異なり、とにかく敵に感情はない。目的はあっても、それさえもが醜く歪められ、本来とは違った形になってしまっている。
意思疎通のできない単純な恐怖の対象。亡者船に登場するモンスターの多くは、そういった存在以上のものではありません。
ラスボスは今までになく喋りますが、逆に道中で出会う怪物達は何も語らない。その反動と言いますか、本作では宗助君が異様にヘタレになっております。そうすることで、彼の葛藤を中心に物語を進めようとしたのですが……これがとにかく難しい。
望まぬ力を得てしまった一般人という立ち位置で書きましたので、ヒーロー性は皆無です。この辺が、犬崎紅を始めとした猟闇師シリーズの高校生を書き慣れた自分にとっては壁でした。仲間を護りたいという自分の想いと、自分の心を護りたいという本音。その狭間で葛藤する青年を描こうとして……まあ、見事に玉砕したわけですわw
ただ、私にとっても今回のことは、色々と勉強になった部分もありました。また、これはあくまで繋ぎの話でしかなく、真のエンドは全く別に考えております。
シリーズを通してお読みいただけた方は、既に前作から気づかれていたかもしれませんが……宗助君の名前、本家の猟闇師シリーズで、既に一度だけ登場しております。
彼が何時、どこでその名を見せたのか。本作のエピローグを読んで、それに気づいて頂ければ幸いです。
2013年 1月16日 雷紋寺 音弥




