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父親の墓の前で、心を決めるというほどのことはないけれど。

作者: 福田光一

 父が死んでちょうど十年。

 享年六十七歳は割と早い方なのかも知れないが、さっさと隠居して薄ぼんやりと年金ぐらしをしていたから、まあいい時分なんじゃなかったかなと思う。一応、孫の顔も見せてやれたし。

 墓は霊園とかなんとか、要するにお寺ではなく、宗教とか宗派とか関係なしにお骨を預かってくれる所で、金銭も生前のしがらみもそこそこのところで何とかなったから助かった。

 何より近所であるから助かる。父の先祖の墓は都内某所、しかもどういうわけかあっちの寺からこっちの寺へと、なにがしかの繋がりの人の骨がしまってあったので、墓参りに行くとなると一日がかりだった。服装も整えなければならなかったし、知らない所で相応の金が動いていたのだろうから、これは大変だ。あの改まった雰囲気というのも今にして思えばなかなか楽しいものではあったが、分相応という言葉もある。

 暇な時に散歩がてら掃除に行くということもできるのだから、相応であろう。

 そんなものだから、墓石もそれほど大きくはない。霊園で紹介されたもののなかで最も安価なものだったと思う。並んでいる墓石はどれもこれも似たりよったりで、生前の父を思うとおかしいが、時分もいずれこうなるだけだと思えば、少し肩の力も抜ける。

 父さん、あんたの孫もずいぶん大きくなったよ。どうも父さんよりもズレた父親になってしまいそうだけど、なんとかやっていくよ。

 まだ元気に存命中の、父の伴侶が悲鳴を上げる。孫たちがなにかやらかしたらしい。私は立ち上がり、息子から父親にならねばならない。

 

 

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