表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第24章
98/117

審判 -1-



   旧き時代に 幕を。



         ++++++



 『右腕』奥の扉を開けるなり、パーンッとクラッカーが鳴り響いた。

「新団長就任!! おめでとう、セイジくん!!」

「げっ……! な、なんで!?」

 どうせ名前は流れなかったんだし――などと油断していたセイジは、完全にうろたえてしまった。相変わらずにやけ顔のヨシタカは、クラッカーの紙テープをわさわさともてあそんだ。

「ホームページでも大騒ぎだよ☆ 還らずの『死者の間』から生還した勇者! そんな君が、もしかしてひょっとして『新団長』なのではないか!? ってね~☆」

「お兄ちゃん、新しい団長さんになったの? おめでとう!」

 ヨシタカのとなりにはなぜかエリがいて、驚いたように手をたたいていた。

「エリはこんなとこで何やってんだ? ……そうだ、ビッグは? どうしてる?」

「セイジくん! 現実逃避はいけないな!」

「い、いや、むしろ現実的な優先順位っていうか!」

「……おじちゃん……」

 急にエリがしゅんとなった。セイジは慌ててエリの前に膝をついた。

『エリちゃん、どうしたの? 何かあった?』

 アンティークに聞いてもらうと、エリは寂しそうに目を伏せた。

「ビッグのおじちゃん、どこかに行っちゃったの。『やることがある』って……」

「あのアオイの呼び出しか?」

『じゃあ、ビッグさんは今、「巨人の間」にいないのね』

「うん。エリ、おじちゃんにもっと遊んでもらいたかったな。やっと笑ってくれて、嬉しかったのにな……」

 ――札の呪いが解けた影響か。

 セイジはそんな目をカナに向けた。扉の影でカナがうなずく。ヨシタカへの苦手意識がどうしても拭えないようで、まだ部屋の中まで入ってこない。

「お前なぁ……」

「セイジ、あんまりのんびりしてないで」

「……わかってるよ」

 セイジはもう一度ヨシタカに目をやった。――つもりが、元の場所にヨシタカはおらず、いつの間にかセイジの横で一緒にしゃがみ込んでいた。

「どわぁっ!?」

「ヒヒッ……アンティークちゃん、久しぶり☆ セイジくんに頼まれた新しいドレスができてるよッ☆」

 下の方からのぞき込まれて、アンティークの体が冷たくなった。

『え……えーと……』

「こらヨシタカ! あんま見るな! ……まさかと思うがこの破けたドレス、ほしいとか言いださねーだろうな!?」

「いやだなセイジくん。オレはお人形ちゃんの洋服に興味は……なくはないけど」

「おい」

「だけど本当に興味があるのは!! 洋服を着たお人形ちゃんだ――――ッ!!」

 ぐっとこぶしを握って絶叫したヨシタカを、エリが目を丸くして見ている。教育上よろしくないと直感し、セイジはヨシタカの頭にげんこつを入れた。ヨシタカは首をすくめて頭をさすった。

「痛いな~何するんだい?」

「お前の存在自体、子供には刺激が強いんだよ!」

 そこでセイジは言葉を切り、深呼吸をした。

 一転、真顔になってヨシタカを見る。

「ところでさ。悪いけど例のドレス、早く出してくれないか。…長居できないんだ」

「ん? そうかい? 仕方ないなぁ」

 ヨシタカはいそいそと作業台に戻り、ひらりと、真新しいドレスを取り出した。

 レースをたっぷりと縫い込んだ、真っ白なドレスだった。

『わ……キレイ!』

「気合い入ってんな……!」

「さっそく着てみてくれよ☆ なんだったら手伝うけど? ウヒヒッ☆」

「お前は絶っっ対に触るな!!」

 セイジが怒鳴りつけ、ヨシタカはまたけらけらと笑った。



         ++++++



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ