人格 -4-
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●ビッグのこと
さっき、義手の大男が歩いてるの見かけたんだけど……
あれってビッグじゃなかったか!? しかも女の子連れ!
他に見た奴挙手!!!
●セイレーンが歩いてた
水槽の間から出てこないはずなのに、『左脚』にいたとかって
>Re:セイレーンが歩いてた
いたいた。
ていうかオレ、握手してもらったし!^^
●控え室の爆発
控え室のとなりに謎の隠し部屋があって、
大爆発を起こしたんですよね?
そこからピエロの幽霊が出て行ったって噂もありますが……(怖
●とんでもないものを見た気がする
あの『セイジ』が、『死者の間』から出てきた!
慌てて走ってったけど、人形抱いてたし、間違いない!
●「新団長」!?
朝の館内放送、聞いた?
新しい団長って誰のこと~??(笑)
>Re:「新団長」!?
あくまで、僕の予想です。
今までにこんなことなかったんだから、新団長って
1番最後に入団してきた『セイジ』なのでは……?
●「R」の助言~その4~
私達は行きますが
セイジさん達は絶対に、『6つ目の間』には近づかないでください。
すべてが終わるまで、どうかご無事で……
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『一体、何が起こっているんだ……!?』
サーカス館中からそんな声が聞こえるようだった。
アカネは満足げに微笑み、パソコンを切った。
「――失礼しますよ、アカネ」
間近で突然聞こえた声にも動揺を見せることなく、アカネはつとふり返る。
「あら。ピエロの……サトル、だったかしら。何かご用?」
「あなたに聞きたいことがあるんです」
サトルは長身を折り、目の高さをアカネに合わせた。無断で奥の部屋まで入ってきた詫びも、前置きさえなく、単刀直入に切り出す。
「ユエの団長室――別名『運命の間』。そこへ行くための道を教えてください」
アカネは笑って、首を傾けた。
「なぜ、私が知っていると思うの?」
「あなたが『ホームページ管理人』なのでしょう。ヨシタカ達の仲間だとすれば、彼らと同等か、それ以上の情報を持っているはずと思いまして。……セイジ達はまだ気づいていないようですが」
「さすが。年の功というところかしら」
アカネもこの上隠す気はないようだった。サトルの視線からするりと逃れて移動し、顔だけ見返る。
「でも、バレないように細心の注意は払っていたつもりよ? ……やっぱりビデオを直接渡してしまったのがいけなかった?」
「確信を持ったのはあの時でしたね。ですが前々から、あなたには何かあるのではないかと思っていましたので」
「どうして?」
「目――ですよ」
「目?」
「18年前……ここへ入団したばかりの頃から、あなたは常に、何かに食らいつくような目をしていました。今でもそれは変わりません。それなのに早々に舞台を降りて、相談役などというおとなしい立場に収まっている。……違和感があったんですよ」
ふっと苦笑して、アカネは椅子に腰かけた。
「ずいぶんと買ってくださっていたのね。嬉しいわ」
「私がユエの周辺を調べようとすると、いつでも誰かに先を越されたような感覚がありました。あれもあなたの仕業ですね」
「ええ。それくらいしかできることがなかったの。彼女に手を出して、万が一にも私がピエロゲームのリストに載るようなことになれば、『計画』は即座に完成してしまったでしょうから……」
アカネが椅子を勧め、サトルは手を上げてそれを断った。
「あまりセイジ達を待たせられません」
「それは残念だわ。じゃあ……教えてあげましょうか」
手招かれて、サトルはアカネに歩み寄る。アカネは立ち上がり、背伸びをして、サトルの耳元に囁いた。
聞き終えて――サトルは、うなずいた。
「なるほど。そういう仕掛けですか」
「あとはセイジくんと、あなたの覚悟次第……というところかしら」
「怖い方だ」
「私は私の望みが叶うのなら、何でもするわ」
アカネは挑発的な表情で言い切った。サトルは再度うなずいた。
「ありがとうございます。助かりました。お礼といってはなんですが……」
「何?」
「『獣調練場』へどうぞ。あなたを紹介すると約束してきたんです」
アカネは大きく目を見開いた。それは初めて見せる素の表情のようだった。
サトルは貴賓を導くように、片腕を大きく開いて扉を示した。
「1度くらい、会ってあげてはどうでしょうか」
「そこまで……知ってらしたのね……」
「負けた」という風に苦笑して、アカネは首を振った。
「今さら会えないわ。捨てたのはあの男だけれど、私も同罪。自分のステージのことばかりで……あの子がいなくなったことさえ、すぐには気づかなかった」
気がついて、探し出した時にはもう遅い。
我が子は他人のものになり、手を伸ばしても、届かなかった――
「しかしそれでは、私が困ってしまいます。『約束』ですから。なんとしても会っていただきませんと」
肩をすくめたサトルの口から、えらくいたずらっぽい言葉が飛び出した。つかの間言葉を失ったアカネは、サトルの手に背中を押された。
「あなたの『最も辛いと思うこと』は、彼がユエの手に落ちること――ですね?それほどに想ってきたのですから、見栄を張らずに行けばいいんです。どうせ彼は覚えていないでしょうが……それでも、あなたのその18年、少しは報われるのではないですか」
「……!」
「急いでください、彼が待っています」
サトルが開いた扉の前で、アカネは立ち止まる。
「私、あなた達を利用してきたのだけど?」
「老人のおせっかいとでも思っていただければ結構ですよ」
「……。ありがとう、と……言っておくわ」
アカネは1歩を踏み出した。
獣調練場では、コウが檻にもたれ、腕組みをしていた。アカネが近づくとふり返り、一瞬、不思議そうな顔をした。
「『象使い』のアカネさんデスカ。ピエロから話聞いてマス?」
「……私は何をすればいいのかしら?」
同じ赤い色の瞳が見合った。アカネは薄く微笑んで、想いを奥底へ封じ込めた。




