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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第23章
97/117

人格 -4-



=======================================


 ●ビッグのこと


 さっき、義手の大男が歩いてるの見かけたんだけど……

 あれってビッグじゃなかったか!? しかも女の子連れ!

 他に見た奴挙手!!!



 ●セイレーンが歩いてた


 水槽の間から出てこないはずなのに、『左脚』にいたとかって



 >Re:セイレーンが歩いてた


  いたいた。

  ていうかオレ、握手してもらったし!^^



 ●控え室の爆発


 控え室のとなりに謎の隠し部屋があって、

 大爆発を起こしたんですよね?

 そこからピエロの幽霊が出て行ったって噂もありますが……(怖



 ●とんでもないものを見た気がする


 あの『セイジ』が、『死者の間』から出てきた!

 慌てて走ってったけど、人形抱いてたし、間違いない!



 ●「新団長」!?


 朝の館内放送、聞いた?

 新しい団長って誰のこと~??(笑)



 >Re:「新団長」!?


 あくまで、僕の予想です。

 今までにこんなことなかったんだから、新団長って

 1番最後に入団してきた『セイジ』なのでは……?



 ●「R」の助言~その4~


  私達は行きますが

  セイジさん達は絶対に、『6つ目の間』には近づかないでください。

  すべてが終わるまで、どうかご無事で……


=======================================



 『一体、何が起こっているんだ……!?』


 サーカス館中からそんな声が聞こえるようだった。

 アカネは満足げに微笑み、パソコンを切った。

「――失礼しますよ、アカネ」

 間近で突然聞こえた声にも動揺を見せることなく、アカネはつとふり返る。

「あら。ピエロの……サトル、だったかしら。何かご用?」

「あなたに聞きたいことがあるんです」

 サトルは長身を折り、目の高さをアカネに合わせた。無断で奥の部屋まで入ってきた詫びも、前置きさえなく、単刀直入に切り出す。

「ユエの団長室――別名『運命の間』。そこへ行くための道を教えてください」

 アカネは笑って、首を傾けた。

「なぜ、私が知っていると思うの?」

「あなたが『ホームページ管理人』なのでしょう。ヨシタカ達の仲間だとすれば、彼らと同等か、それ以上の情報を持っているはずと思いまして。……セイジ達はまだ気づいていないようですが」

「さすが。年の功というところかしら」

 アカネもこの上隠す気はないようだった。サトルの視線からするりと逃れて移動し、顔だけ見返る。

「でも、バレないように細心の注意は払っていたつもりよ? ……やっぱりビデオを直接渡してしまったのがいけなかった?」

「確信を持ったのはあの時でしたね。ですが前々から、あなたには何かあるのではないかと思っていましたので」

「どうして?」

「目――ですよ」

「目?」

「18年前……ここへ入団したばかりの頃から、あなたは常に、何かに食らいつくような目をしていました。今でもそれは変わりません。それなのに早々に舞台を降りて、相談役などというおとなしい立場に収まっている。……違和感があったんですよ」

 ふっと苦笑して、アカネは椅子に腰かけた。

「ずいぶんと買ってくださっていたのね。嬉しいわ」

「私がユエの周辺を調べようとすると、いつでも誰かに先を越されたような感覚がありました。あれもあなたの仕業ですね」

「ええ。それくらいしかできることがなかったの。彼女に手を出して、万が一にも私がピエロゲームのリストに載るようなことになれば、『計画』は即座に完成してしまったでしょうから……」

 アカネが椅子を勧め、サトルは手を上げてそれを断った。

「あまりセイジ達を待たせられません」

「それは残念だわ。じゃあ……教えてあげましょうか」

 手招かれて、サトルはアカネに歩み寄る。アカネは立ち上がり、背伸びをして、サトルの耳元に囁いた。

 聞き終えて――サトルは、うなずいた。

「なるほど。そういう仕掛けですか」

「あとはセイジくんと、あなたの覚悟次第……というところかしら」

「怖い方だ」

「私は私の望みが叶うのなら、何でもするわ」

 アカネは挑発的な表情で言い切った。サトルは再度うなずいた。

「ありがとうございます。助かりました。お礼といってはなんですが……」

「何?」

「『獣調練場』へどうぞ。あなたを紹介すると約束してきたんです」

 アカネは大きく目を見開いた。それは初めて見せる素の表情のようだった。

 サトルは貴賓を導くように、片腕を大きく開いて扉を示した。

「1度くらい、会ってあげてはどうでしょうか」

「そこまで……知ってらしたのね……」

 「負けた」という風に苦笑して、アカネは首を振った。

「今さら会えないわ。捨てたのはあの男だけれど、私も同罪。自分のステージのことばかりで……あの子がいなくなったことさえ、すぐには気づかなかった」


  気がついて、探し出した時にはもう遅い。

  我が子は他人のものになり、手を伸ばしても、届かなかった――


「しかしそれでは、私が困ってしまいます。『約束』ですから。なんとしても会っていただきませんと」

 肩をすくめたサトルの口から、えらくいたずらっぽい言葉が飛び出した。つかの間言葉を失ったアカネは、サトルの手に背中を押された。

「あなたの『最も辛いと思うこと』は、彼がユエの手に落ちること――ですね?それほどに想ってきたのですから、見栄を張らずに行けばいいんです。どうせ彼は覚えていないでしょうが……それでも、あなたのその18年、少しは報われるのではないですか」

「……!」

「急いでください、彼が待っています」

 サトルが開いた扉の前で、アカネは立ち止まる。

「私、あなた達を利用してきたのだけど?」

「老人のおせっかいとでも思っていただければ結構ですよ」

「……。ありがとう、と……言っておくわ」

 アカネは1歩を踏み出した。

 獣調練場では、コウが檻にもたれ、腕組みをしていた。アカネが近づくとふり返り、一瞬、不思議そうな顔をした。

「『象使い』のアカネさんデスカ。ピエロから話聞いてマス?」

「……私は何をすればいいのかしら?」

 同じ赤い色の瞳が見合った。アカネは薄く微笑んで、想いを奥底へ封じ込めた。



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