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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第23章
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人格 -1-



   ほしかったのは、たった一言だったのに。



         ++++++



 モニター室に呼び出されたアオイは、もう長いこと、じっと椅子に座っていた。

 膝にはユエが頭を預けて、離れない。

「ねぇ、アオイ……あなた以外の4人との絆が壊れちゃった……どうしよう……」

 ユエは子供がぐずるように繰り返している。アオイは耐えた。アオイの方からユエに触れることは、禁じられている。

「みんなのこと愛してあげてたのに……永遠に一緒になれるはずだったのに! あたしの計画……始めから上手くいくはずなかったなんて……!」

「……」

「ねぇ……! あたしは今まで一体何をしてきたの? 何のためにあたしは……!!」

「『アオイ』は――まだ、ユエのものだ」

 叱られるのを覚悟で口にする。ユエの仮面が見上げてきた。

「あなただけ……『人格』の札だけあっても仕方ないのよ……!! 特に『記憶』……! カナちゃんの首があるうちに、もう1度用意するだなんて!!」

「ユエが望むなら、『アオイ』はなんでもする」

 そろりと、アオイは手を伸ばした。

「アオイ……?」

「『アオイ』はユエの為に何をすればいい? 『アオイ』が必要だと思ってもらうには、次は何をすれば……」

 ――その時だった。


            ――新しい団長が 決定しました

              サーカス団のみなさんは

             新しい団長に 従って下さい――


 鐘の音と共に、ユエの指示ではない放送が流れた。

 ユエがアオイから離れ、ふらりと立ち上がった。

「あ……ああ……っ!」

「ユエ……?」

「……セイジくんが、団長室を見つけちゃった……」

 アオイには意味が分からなかったが、ユエは仮面をかきむしりながら身をよじる。

「ああああああああぁ!! もう駄目!! もう何もかも終わりだわ……!!」

 ユエの手の上に札が現れた。アオイは思わず立ち上がる。

「次の団長、セイジくんに取られちゃった――もう『団長』を作る理由が、ない……!」

「! ユエ、やめて」

「こんなもの……っ!もう意味がない……!!」

 札に炎が灯った。

 あっという間に燃え上がり、端から消滅していく。アオイは呆然とそれを見守ることしかできなかった。

「『人格』も……もう要らないわ……」

「……!」

「あたしはやっぱり、永遠に独りで生きていくのよ! そう、永遠に孤独なんだわ! あはははははははははははは!!」

 札が燃え尽きた。動けずにいるアオイを置いて、ユエはふらふらと歩いていく。

 そして部屋を出る間際に、細く、つぶやいた。

「……お願い、誰か……そばにいて……」



         ++++++



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