砂時計 -5-
セイジは――夢を見た。
夢と認識して見る夢だった。それが以前の続きであることも分かっていた。
目の前に鮮烈な赤が散っている。
その中に沈む“それ”は見えない。見ることを頭が拒否している。
大事な人だったのに。
彼女を失った今、自分は。
1人――
『じいちゃん……』
夢と分かっていても、セイジは暗くつぶやいた。
甘すぎる誘惑に抗えない。
『あんたにできることなら、俺にもできるよな?
アンティークを助けたみたいに……カナも……――!』
++++++
「――セイジ……セイジ大丈夫?」
ぱちりと目を開けたセイジは、かなり近くにカナの顔があったので、少しだけ驚いた。
「ん、ああ……なんとか……」
「あんまりうなされてないでよ。……気になるでしょ」
「起こしたか? 悪かったな」
「別に。もう朝になるみたいだし」
見ればサトルも目を開けていた。前回ほどには寝過ごさなかったようで、セイジはほっとして、首やひたいの汗を拭った。
『また悪い夢?』
「まあな……ついでに、知りたくなかったことを知ってしまったような――」
――ただ、失いたくなくて――
「は? なにそれ」
「いろんなことの“理由”って……案外単純なものなのかな……」
『……?』
セイジは横に手を振り、「大丈夫」とアピールした。
「なんでもない。さてと……ユエを捜す前に、まずヨシタカのとこ行くぞ、カナ?」
「えっ」
ぴきっと固まったカナを横目に、セイジは明るい表情を作って立ち上がる。
「アンティークの新しいドレスを頼んでたからな。行く道でこれからの対策、考えようぜ」
「分かりました」
『――あ! セイジ、ちょっと待って!』
突然アンティークが声を上げ、セイジは踏み出しかけた足を止める。
「どうした?」
『昨日は気がつかなかった……かすかだけど、何か“力”の気配がするよ! ……そこの砂時計だ!』
セイジは視線を移し、まじまじと、白砂の砂時計を見た。――特に変わった点は見当たらない。
「カナもこれ、見てたよな。何か気づかなかったか?」
「別に何も……」
「しかし、時を止めた砂時計とは。まるで60年間立ち止まったままの、このサーカス団のようですね」
「なに詩人ぶってんだ。……まあもったいないよな、これ。こんなに綺麗なのに……」
セイジは何気なく手を伸ばした。
触れて、軽くつかむ。しかし砂時計は固定されているようで、びくとも動かなかった。
が――代わりに。
「あれ? なんか……光ってないかこれ?」
慌てて手を離すが、輝きは徐々に増していく。光っているのは中の砂のようだ。
「え、えーと、まずいことしたかな……!?」
『あ……砂が』
前触れなく、白い砂はさらさらと落ち始めた。
と、同時に――
『!?』
「えっ、なんだ……鐘の音!?」
――新しい団長が 決定しました
サーカス団のみなさんは
新しい団長に 従って下さい――
高く高く、教会の鐘のような音が、サーカス館中に鳴り響いた。
淡々と流れ落ちる砂時計を前に、セイジ達は呆気にとられて立ちつくした。




