砂時計 -2-
「なんて奴だよ、コウ……! ユエに先を越されてどうしようかと思ったけど……!」
カナがユエと一緒にいるのを見つけた時は、相当焦ったのだ。それを迷わず「行きまショウ」と促したのもコウだった。
セイジとサトルは舞台中央へ駆け寄った。座り込んだまま見上げてきたカナも、なんとか正気を保っているようだ。
「コウ……ありがとな。お前のおかげで最悪の状況が回避できた」
「別に、セイジさんに礼を言われるようなことはしてませんヨ」
もういつものとぼけた調子で、コウは遠い目をする。
「実は僕、ユエさんあんまり好きじゃないんデス」
「いや、それは見ててよく分かった……」
「それよりセイジさん、ユエさんの持ってるアオイの札も壊しに行くんデショ? 多分ユエさん怒り狂ってると思うので、探すなら気を付けてくださいネ?」
コウは持っていたクロウナイフをセイジに投げてよこし、くるりときびすを返した。
「……それじゃ、ご武運を」
「おい、どこ行くんだ?」
「どこって……獣調練場デスヨ? 僕はユエさんみたいに一瞬で消えることはできないので、歩いて帰るんデス」
「そ、そうか」
『なんか、やっぱりつかめない人だね……』
「さて。そろそろあいつらが腹空かせてるかなー」
機嫌が良さそうな調子でつぶやくと、コウはふり向きもせずに行ってしまった。
セイジは膝を折り、カナの顔を見た。カナはばつが悪そうにうつむいた。
「ゴメン……取り乱して」
「お前も謝ったりとかできるんだな」
「あんた何……? 私を怒らせたいの?」
「いや。本当に……無事で良かった。あんな心臓つかまれる思いはもう勘弁してくれ……」
ため息混じりにカナの頭を抱き寄せた。カナはとりあえず、おとなしくしている。
熱が伝わる。――まだ、生きている。
それをしっかりと確認して、セイジは目を上げた。
「これで、残る札は……1枚……!」
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