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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第22章
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砂時計 -2-


「なんて奴だよ、コウ……! ユエに先を越されてどうしようかと思ったけど……!」

 カナがユエと一緒にいるのを見つけた時は、相当焦ったのだ。それを迷わず「行きまショウ」と促したのもコウだった。

 セイジとサトルは舞台中央へ駆け寄った。座り込んだまま見上げてきたカナも、なんとか正気を保っているようだ。

「コウ……ありがとな。お前のおかげで最悪の状況が回避できた」

「別に、セイジさんに礼を言われるようなことはしてませんヨ」

 もういつものとぼけた調子で、コウは遠い目をする。

「実は僕、ユエさんあんまり好きじゃないんデス」

「いや、それは見ててよく分かった……」

「それよりセイジさん、ユエさんの持ってるアオイの札も壊しに行くんデショ? 多分ユエさん怒り狂ってると思うので、探すなら気を付けてくださいネ?」

 コウは持っていたクロウナイフをセイジに投げてよこし、くるりときびすを返した。

「……それじゃ、ご武運を」

「おい、どこ行くんだ?」

「どこって……獣調練場デスヨ? 僕はユエさんみたいに一瞬で消えることはできないので、歩いて帰るんデス」

「そ、そうか」

『なんか、やっぱりつかめない人だね……』

「さて。そろそろあいつらが腹空かせてるかなー」

 機嫌が良さそうな調子でつぶやくと、コウはふり向きもせずに行ってしまった。

 セイジは膝を折り、カナの顔を見た。カナはばつが悪そうにうつむいた。

「ゴメン……取り乱して」

「お前も謝ったりとかできるんだな」

「あんた何……? 私を怒らせたいの?」

「いや。本当に……無事で良かった。あんな心臓つかまれる思いはもう勘弁してくれ……」

 ため息混じりにカナの頭を抱き寄せた。カナはとりあえず、おとなしくしている。

 熱が伝わる。――まだ、生きている。

 それをしっかりと確認して、セイジは目を上げた。


「これで、残る札は……1枚……!」



         ++++++



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