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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第2章
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首の少女 -3-


 職人風は大時計の修理中だった。青服の方は、すぐに2人(と1体)に気づき、歩み寄ってきた。

「なあ君、今そっちから来た?」

「……ああ。それが?」

 襲ってくる雰囲気ではない。どうもセイジがお尋ね者だとは思っていないようだった。

「さっきアオイがステージの方へ行ったんだよ。舞台でも『死神役』だけど、ほんとにあの人、怖いよ……」

「死神役?」

「あれ、知らない? 君ひょっとして新人? ど素人?」

 とたんに馬鹿にした表情になって、団員は得意げに語りだした。

「舞台では、死神に扮したアオイが鎌を振り下ろすと、団員はその演戯をわざと失敗することになってんの。演出のひとつだよ。でもアオイは、普段から鎌を持ち歩いてる。それもいつも血のりがベッタリついてる……」

「普段からって……」

 セイジは思わずカナを見た。カナはぷいと横を向いた。

「あーあ、今ステージに近づきたくないなぁ。誰かアオイがまだいるか見てきてくれないかな?」

 団員はにこにこ笑いながら、ぽんと、セイジの肩をたたいた。

「と、いうわけでさ。もう一度舞台に行って見てきてよ。代わりにいいものあげるから。……ほら、これ」

 渡されたのは紙切れだった。書いてあるのはどこかのURLらしい。

「だから頼むよ。えーと……君名前は?」

「……セイジ」

「そうかそうか、じゃあセイジくん、よろしくね……って!」

 さあっと団員の顔色が変わった。

「『セイジ』って、ピエロゲーム対象者の――ぶっ!」

「バカ」

 一撃で団員を殴り倒したのはカナだった。くるりとクラブを回し、ため息混じりにセイジを睨みつける。

「自分から襲ってくれって言ってるようなもんじゃない」

「お、お前、意外と強いな……?」

『うん。今のはセイジが悪いよ。別に反応を試してみる必要なんてなかったでしょ』

 アンティークにまで責められてたじたじになっていたセイジは、後ろから聞こえてきた忍び笑いに顔だけを向けた。

「なんだよ、笑うなよ」

「いや、悪い。しかし楽しそうだな」

「楽しそうに見えんのかこれ!?」

 一言文句した後、セイジは真顔になった。

「あんた……“団員”じゃなさそうだな」

 控え室にいたもう1人、職人風のあごひげの男は、金槌を上げてにかっと笑った。

「おう、オレは道具専門さ!大道具から小道具までなんでも任せてくれ! ……ついでにピエロゲームには不参加だから、よろしくな!」

「助かるよ」

「……その時計、いつもあんたが修理してんの?」

 カナが口をはさんだ。非難めいた調子に、道具係は頭をかいた。

「何かのついでにちょいちょいな。でもいくら直してもすぐに止まるんだよな。おっかしいよな~。なんか詰まってんのかな?」

「ふうん?」

「親方のゲンさんにも、今度見てくれるよう頼んでおくよ。あんたらも1回会っとくといいんじゃないか。大抵『左脚』にいるから」

 「じゃあなー」と言い残して道具係は出ていった。

 3人の目は自然と大時計に向けられた。人間が入れそうなくらい大きな、振り子式の古時計だ。確かに針は止まっている。

「ピエロゲームが終わるまでこの時計の中に隠れるってのはどうだろ」

 セイジが思いついたまま口にすると、カナが冷たい一瞥をくれた。

「やれば?」

「……いや、冗談だ。無理だろ」

「じゃあ言うな。馬鹿じゃない?」

「……もうちょい優しく言えよ」

『ねぇ、でもこの時計変だ。長針と短針が有り得ない位置で止まってるよ』

「ん?」

 セイジは時計を確認し直した。――長針が真上を指し、短針が、9と10のちょうど中間。本来、9時半になってから指す位置だ。

 アンティークの言うとおり、少しおかしい。

『誰かが動かしたのかな? もしかして本当にここに隠れてた人が今までにいたとか…』

「ほらみろカナ! 時計の中で過ごした奴がいたかもしれないってよ!」

「あんたがやんなよ。私は知らない」

「お前なぁ」

『ねえ、セイジ……時計の奥に扉がある……』

 え、と2人同時に目を見開く。そうして同時にガラスの中、振り子の奥をのぞき込んだ。

「どこだ?」

『左端、よく見て。取っ手みたいのがついてる』

「…あ」

 カナも認めた。少し悔しげに顔をしかめるので、セイジは小さく鼻を鳴らした。

「どうだ」

「……ムカつく……」

『まあまあ2人とも。……ここ、人間でも入れそうだよ』

「入ってみるか。いかにも隠し部屋っぽいしな」

「……わかった」

 周囲に人がいないことを確認し。

 セイジがガラス戸を開いて、取っ手に手をかけた。



         ++++++



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