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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第19章
77/117

虚ろの死神 -1-


 

  舞台で演じている間だけ 僕は、僕でいられる



         ++++++



   くらい、くらい、やみのなか

   五感をぜんぶ、うばわれて

   ただ、おもうのはあなたのこと


   こんなところにとじこめなくても

   ぼくはあなたをうらぎらなかったのに

   ひとのこころをとらなくても

   ぼくのこころはあなたのものだったのに


   くるおしいほどいとしいあなたが

   じごくのそこへおちるなら

   よろこんでおちよう

   ぼくもじごくに――



         ++++++



 『死者の間』の最奥で、アンティークはじっとセイジを待っていた。横のアオイも、アンティークを椅子に座らせたきり、ぴくりとも動かずたたずんでいる。

 はたしてどちらが、より“人形”だろうか。

『……ねぇ、死神さん。あなたは何故ユエの言いなりなの? あんな風に、行動全部、ユエに指示されて……あなたの意思はどこにあるの?』

 彼のことは前から気になっていたので、アンティークは思い切って訪ねてみた。アオイは微動だにしないまま、口だけを開いた。

「『アオイ』はユエが人格を得るために連れてきた。だから『アオイ』に人格はない」

『! あなたが、「人格」……!?』

「『アオイ』はそういう運命の下に生まれてきたとユエが言っていた」

『ユエ……ひどいことを……』

「――もうすぐリストNo,44『セイジ』が来る」

 アオイが、動いた。

 鎌の切っ先をアンティークののど元に運ぶ。

「バラバラになる覚悟はできたか?」

『……覚悟なんてしない。セイジは……きっと助けてくれるもの』

 少しだけ声が震えた。それでもアンティークは続けた。

『カナちゃんだって、サトルだって。みんなで助けてくれる。信じてるもの……』

「……」

 アオイは答えなかった。また人形のように動きが止まっている。

 首に鎌を突きつけられたまま、アンティークは祈った。


 ――セイジ……早く、来て……



         ++++++



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