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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第17章
71/117

身体 -2-


「クマ?」

「ハンドルネーム『くま』って! BBSにユエのこととか、ユエの計画について書き込んできた奴――」

 突然、サトルの手がセイジの口を塞いだ。目の前で首を振られてセイジもはたと我にかえる。

「わ、悪い」

「約束の時間が早まったようですね。そちらへ向かってみますか?」

「……そうするか」

 セイジがふり返ると、カナがなんともいえず酸っぱい顔をしていた。セイジはその肩をぽんぽんとたたいた。

「たのむ、我慢してくれ。あの男の話は聞いておかなきゃだろ。……あ、あとリアラ、悪いんだけどあと2つだけ、たのみごとしてもいいかな」

「あ……」

 セイジが目を向けると、リアラが怯えたように肩を震わせた。

 きょとんとしたセイジの前に、カナが回り込んできた。と思うや、両頬をつままれ左右に引っぱられる。

「い、いででででっ!」

「変な顔」

「っておい、何すんだよ!!」

 セイジは乱暴にカナの手を払った。リアラがびくりと身を縮めた。

 カナは――じっとセイジを見上げてきた。

「ピリピリしすぎ。サトル、あんたも。……セイジのこと襲ってくる団員みたいな目になってるよ。鏡、見てみれば」

「……あ……」

 セイジははっとした。自覚のないまま全身に入っていた力が、不意に抜けたようだった。

 カナが1歩後ろに下がった。

「人形のこと、心配なのは分かるけど……」

 セイジは祖父がしばしば言っていたことを思い出し、大きく息を吐いた。

「『頭に血が昇っていては、正しい判断はできない』か。そりゃそうだよな……」

「ちょっとは頭冷えた?」

「いや。でも……テンパってる自覚はしたよ。ありがとなカナ」

 セイジは頭をかき、改めてリアラを見た。

「えーと。ごめんな?」

「い、いえ、私こそ……あの、それで『たのみ』って……?」

「ああ。パソコン少しだけ使わせてもらっていいかな。サーカス団のホームページを調べたくてさ」

「もちろん、どうぞ」

 リアラはほっとした様子で椅子を譲ってくれた。セイジは拝む形に手を上げて、ホームページを立ち上げた。



=======================================


 ●(No title) HN:セイジ


 「呪われた5つの札」というものについて、

 なにか知ってる人がいたら教えて下さい。

 それから…

 この掲示板では対象者も非対象者も

 関係なく情報交換できるのでは?

 「R」さんを批判するのはやめて下さい。



  >Re:(No title) HN:匿名希望


   ゲームが始まってもう数日。

   たくさんいる団員に狙われながら、誰も殺さず

   いまだ生き続ける姿に感動しました。

   こうなったらもう最後まで逃げ切ってください!

   ところで札のことですが、

   それらしいのを1度だけ見たことがあります。

   団長が大事そうに持ってたけど……

   でもたしか、1枚だけでしたよ?


=======================================



「お。味方が増えた!」

「……ユエが、札を1枚だけ持ってる……」

「残りの4枚はどこかに隠してあるということでしょうか。だとするとどこに……」

 セイジ達は一斉にリアラを見た。しかしリアラは、申し訳なさそうにかぶりを振った。

「知らないの。ごめんなさい……」

「……。まあそんな、すぐ見つかるようなとこには隠してないだろうな」

 セイジは腰を上げた。1回息を吸って、吐いて。

「じゃあせっかく連絡もらったし、ちょっと話を聞きに行ってみるか。――てわけでリアラ、今から会いに行く奴にたのまれててさ。となりの部屋の人形……1つだけ、もらってっていいか?」

 リアラももう、怯えている様子はなかった。

「はい、いいですよ。お好きなものをどうぞ」

「助かる。いろいろとありがとうな。もうあんまり迷惑かけないようにするからさ」

「迷惑なんかじゃないです。たよってもらえるのは……すごく、嬉しいから。またいつでも来てね」

 言葉を切ったリアラは、ちょっとだけサトルを見た。

「いつでも、待ってるから――」



         ++++++



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