罰 -5-
『左腕』の通路に戻ったセイジ達は、もう一度、仕掛け扉を進み始めた。
途中セイジは、ちらりとサトルを見上げた。
「普通の……女の子だったな」
サトルは前を向いたまま、うなずいた。
「正直、私もなぜ彼女が『5つの間』に選ばれたのか疑問でした。特に秀でた能力があるわけでもない、本当に普通の少女でしたから」
「それはそれでえげつない感じがするな。……リアラは何を奪われたんだ?」
「『胴体』――ですね。練習中、アオイの手で……空中ブランコの飛び台から突き落とされたんです。事故という形で処理されましたが、何人もの団員が目撃しています」
「またあいつか……!」
教えられた順番通り、4つ目の扉を開いた。
そこはコンクリート造りのそっけない空間だった。正面には、これもそっけない鉄の扉がある。
「……ん? 待てよ、『胴体』取られたんなら……リアラの身体、今どうなって……?」
「彼女の身体はブリキでできています。私が作って、彼女に与えました」
こともなげにそう言ったサトルを、セイジは、今度はまじまじと見た。
「そんなこともできんのか、お前」
「それが限界でした。団長のようにはできなかった……だから彼女の身体は不自由なままです。それで代わりに、ララを側に置きました」
「あれも相当よくできたロボットだよな。最初は本物の子供だと思ってた、し……」
ふと、脳裏で閃いたものがあった。
――私が最初に殺した子供を、改造してロボットにしたと聞く……――
セイジの心中を知って知らずか、サトルは続ける。
「ララはリアラの、空中ブランコのパートナーでした。息のあったペアでしたよ。……ララが、殺されてしまうまでは……」
「!あの子が、ビッグの言ってた……!」
セイジは頭を振って強引に思考を止めた。あまり長く、立ち止まっていられない。
「ねえ……開けるよ、セイジ」
カナがもう取っ手に手をかけて待っている。セイジはうなずいた。
ゆっくりとカナが扉を引き。
開けた視界の先は、小さな書庫のようだった。
薄暗く、少し黴のにおいもするが、静謐な空気が流れている。扉の外とは一線を画して、別世界に入り込んだような印象だった。
「休むくらいでしたら、充分使えそうですね」
「ああ。あと……ビデオ鑑賞にも向いてそうだな」
セイジはさっそく、ビデオカメラの電源を入れてみた。操作の方も――なんとかなりそうだ。
「本体にも画面が映るタイプだ。ちょっと小さいけど、見えるか?」
絨毯の上にあぐらをかいたセイジの左右に、カナとサトルが身を寄せた。
セイジは両側を確認すると、多少緊張しながら、再生ボタンを押した。




