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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第15章
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罰 -5-


 『左腕』の通路に戻ったセイジ達は、もう一度、仕掛け扉を進み始めた。

 途中セイジは、ちらりとサトルを見上げた。

「普通の……女の子だったな」

 サトルは前を向いたまま、うなずいた。

「正直、私もなぜ彼女が『5つの間』に選ばれたのか疑問でした。特に秀でた能力があるわけでもない、本当に普通の少女でしたから」

「それはそれでえげつない感じがするな。……リアラは何を奪われたんだ?」

「『胴体』――ですね。練習中、アオイの手で……空中ブランコの飛び台から突き落とされたんです。事故という形で処理されましたが、何人もの団員が目撃しています」

「またあいつか……!」

 教えられた順番通り、4つ目の扉を開いた。

 そこはコンクリート造りのそっけない空間だった。正面には、これもそっけない鉄の扉がある。

「……ん? 待てよ、『胴体』取られたんなら……リアラの身体、今どうなって……?」

「彼女の身体はブリキでできています。私が作って、彼女に与えました」

 こともなげにそう言ったサトルを、セイジは、今度はまじまじと見た。

「そんなこともできんのか、お前」

「それが限界でした。団長のようにはできなかった……だから彼女の身体は不自由なままです。それで代わりに、ララを側に置きました」

「あれも相当よくできたロボットだよな。最初は本物の子供だと思ってた、し……」

 ふと、脳裏で閃いたものがあった。


  ――私が最初に殺した子供を、改造してロボットにしたと聞く……――


 セイジの心中を知って知らずか、サトルは続ける。

「ララはリアラの、空中ブランコのパートナーでした。息のあったペアでしたよ。……ララが、殺されてしまうまでは……」

「!あの子が、ビッグの言ってた……!」

 セイジは頭を振って強引に思考を止めた。あまり長く、立ち止まっていられない。

「ねえ……開けるよ、セイジ」

 カナがもう取っ手に手をかけて待っている。セイジはうなずいた。

 ゆっくりとカナが扉を引き。

 開けた視界の先は、小さな書庫のようだった。

 薄暗く、少し黴のにおいもするが、静謐な空気が流れている。扉の外とは一線を画して、別世界に入り込んだような印象だった。

「休むくらいでしたら、充分使えそうですね」

「ああ。あと……ビデオ鑑賞にも向いてそうだな」

 セイジはさっそく、ビデオカメラの電源を入れてみた。操作の方も――なんとかなりそうだ。

「本体にも画面が映るタイプだ。ちょっと小さいけど、見えるか?」

 絨毯の上にあぐらをかいたセイジの左右に、カナとサトルが身を寄せた。

 セイジは両側を確認すると、多少緊張しながら、再生ボタンを押した。



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